民事法情報研究会だよりNo.46(令和2年8月)

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 新型コロナウィルスの影響で、ようやく最小規模で実施した会員総会以外、予定した前期の行事は中止となりましたが、会員の皆様には、いかがお過ごしでしょうか。
 さて、大先輩の川上先生から、少なからず感動を覚える内容のご寄稿をいただきました。川上先生ご夫妻のご多幸を心よりお祈りいたします。(NN)

今 日 こ の 頃

   このページには、会員の近況を伝える投稿記事等を掲載します。

  鳩寿を迎えて(川上富次)  

1 令和2年は、新型コロナ対策の方針に則って完全隠居生活を余儀なくされました。 
 私は専ら庭の片隅の家庭菜園での野菜作りを楽しみました。
 或る日、一羽の雉鳩がやって来て、作業中の私の周りをうろゝゝ、そのうちに飛び去っていくという日が何日か続き日課のようになりましたがいつしか来なくなりました。
 あの雉鳩は今どうしているだろうと考えているうちに題が“鳩寿を迎えて”となった次第です。

2 閑話休題、私は毎朝、十畳の床の間の「和歌清寂」(掛軸)とその隣室の向い床に掲げた「日新日々新」(縦額)を眺めます。
 いずれも不帰の客となられた香川保一先生に揮毫をお願いしたものであります。
 「書はその人を表す」と申しますが、字の奥底から滲み出てくる温もりや厳しさが感じられ、ふと目を上げると掛物の先生と目が合ったと思えることがあります。
 あの和顔で「奥さん、絵描いとられるか」「奥さん大事にして豊かな人生を満喫しろよ」との声が聞こえてくるのです。
 ご生前、先生は、筆を執る時は朝気持を落着け心身共に集中して机に向かう、とおっしゃっておられました。
 「日新日々新」の額は公証役場に掲げていて持ち帰ったものですが、あの「原爆の図」を描いた画家の丸木位里・俊夫妻が来庁の際、じっと見入って「この字は自分の字ですね」つぶやいておられたことが思い出されます。
 先に、十畳の床の間云々と申し上げましたが、拙宅は築62年の陋屋です。
 50歳の時、もう少し伸び伸びとした心で万事に広い視野が持てればと念じて増築した2階の和室ですが、さて、成果の程はどうでしょう。

3 荊妻の話が出たところで“糟糠の妻”について少々触れたいと思います。
 平成20年5月、二人の結婚50年を記念して、いわゆる金婚式を内々の親族で催しました。
 私は妻に贈る詩として次の様に披露しました。
  ― 金婚を記念して贈る詩 ―
 「長い間、仕送りをありがとう。あんたのことは忘れんからね。」
 と妻に感謝の言葉を残して百一歳の母は逝った。
  私の妻は律儀な人です。
 「この絵は私を元気にしてくれます。」
 とガンを患う婦人が妻の絵を求めて帰った。
  私の妻は芸術の人です。
 「私は声は出ませんが涙は出ます。」
 と老人施設の人が妻達のコーラスを聴いてつぶやいた。
  私の妻は情熱の人です。
 「三人の子を産んで育てたのは、あんたの手柄じゃ!」と妻の母が言っていた。
  私の妻は愚痴をこぼさない人です。

 その後、平成30年5月、87歳の時、今度は結婚60年、いわゆるダイヤモンド婚記念の日となりました。
 私は「ダイヤは高価で未だにプレゼントしたことはありません。今日は、ダイヤに優るものをプレゼントします。」と言って、
『恋女房、60年経っても恋女房』と蛮声を張り上げ、娘や孫達の失笑と朗笑をかいました。

4 私は、令和3年1月15日で満90歳を迎えます。
 「90才。何がめでたい」(佐藤愛子)という書籍がベストセラーとなったことがありましたが、私は、“めでたい”というより生かされていることの尊さ有難さに深く思いをいたすばかりです。特に昭和一桁半ば生まれは生涯、あの戦争で、祖国のため、家族のために散華された方々の「きけわだつみのこえ」「英霊の言乃葉」から離れることはできません。
 残されたこれからの人生、瓦はいくら磨いても鏡にはなりませんが、最後までせっせと磨き続ければ静かに終わりを全うすることができるのでは、と思っています。

 

  三つの顔(永井行雄)  

桜の季節が終わるころ、福岡市を車で出発し、九州自動車道に乗って南に向けて走る。目的地まで約300キロ、先は長い、ゆっくり行こう。途中、以前住んだ久留米や熊本を通過するとき、その当時のことが懐かしく思い出される。出発しておよそ200キロ、長いトンネルを抜けると雄大な霧島連山の山並みが目に映る。そこから宮崎自動車道へと進路を変更する。標高300メートルの山間を抜ける高速道路で車の数は少ない。しばらく走ると、右手に広大な盆地が現れた。その町のインターを下りて国道を南下していると、途中、大きな川のゆったりとした流れと、緑一色に彩った河川敷をランニングしている人の姿が目に入る。そして、インターから15分ほど走っただろうか、右手に都城公証人役場という建物が見えた。ここがこれから仕事をする場所である。緊張感と同時に、土地も人も知らない、大丈夫だろうかという一抹の不安にかられる。

 これは私が今から7年前にこちらに来たときの印象や心境である。この地は酪農が盛んで、宮崎牛は全国ブランドになっている。焼酎の生産量は全国一で、霧島連山からの豊富な湧水が町全体を潤し、米や野菜も美味しい。そして、何よりも土地の人は情に厚い。とても住みよいところである。
 ただ、この地での任務もたいぶ終わりに近づいてきた。そこで、これまで試行錯誤を繰り返しながらであるが、自分なりにイメージする公証人像について思うところを少し紹介させていただくこととしたい。

 公証人には、次の三つの顔が必要だと思っている。

1 法律専門職としての顔

 公証人の主な仕事は公正証書の作成である。公正証書は、証拠力・執行力を有し、国民生活の中で大きな役割を果たしている。したがって、公証人には、高度な法律的知識が求められることは言うまでもない。しかし、日頃の勉強不足がたたって、公証人になった当初は戸惑うことが多かった。どこを紐解けばよいのかが分からない。ところが、仕事は入ってくる。もたつく、焦る。あちこちの先輩公証人に電話を掛けまくって、教えていただいた。参考書もいろいろ買ったが本には相性がある。読みにくい本は途中で読むのを止めて、他の本を買ったりもした。ただ、弁護士や司法書士などの法律のプロから持ち込まれる案件で不明なところは、しっかり調べるようにした。頼りない公証人と思われると後々の仕事に差し支えると思ったからである。
 新米の頃は、失敗もあった。債務承認弁済契約で債権者(甲)と債務者(乙)の署名が逆になって、後で気がついて追いかけたこと。また、出張遺言で遺言者に遺言書正本と謄本を渡さなければならないのに、渡すのを失念して役場に持ち帰ってしまったこともある。法的なことでは、私が作成した遺贈の公正証書の記載内容について、包括遺贈か特定遺贈かの解釈を巡って税務署と見解が対立したこと。もう一つは公証人には押収拒否権があるので、警察が令状をもってきても無条件に応じることはできないことなどである。いずれも先輩公証人の適切な助言を得て対処することができた。
 今、新しい制度がどんどん入ってきている。頭で理解することは重要であるが、実務に使えるような独自の工夫が大事だと思う。私は、新制度が入ってきたときは①まず読み込む→②実務の観点から要旨骨子を引き抜きシンプル化する→③自分用の執務資料(ビジュアル化)を作成する、といった方法を採っている。参考書や日公連からの資料に付箋をつけても、いざというときになかなかそこを見つけ出せない。もっとも、最近は横着になって、後輩公証人に「こういった資料があったらいいだろうなぁー」と暗に作成を示唆して、いいとこ取りをする技が身についてきた。被害に遭った方には、紙面をお借りしてお詫びする。
 ちなみに、保証意思宣明公正証書については、依頼者や金融機関への案内ペーパー(両面印刷1枚)を作成した。また、4月中旬には書記と相談しながら、テレビ電話による電子定款認証マニュアルをビジュアル的に作成した。これを近隣の公証人にも提供して、互いにリハーサルをやってみた。

2 地域人としての顔

公証人は地域に定着して仕事をする。正に地域の一員である。私は、縁あって、都城市が高齢者・障がい者の権利擁護のために発足させた都城市成年後見ネットワーク会議の委員として6年半、そのうち会長を三期5年務めた。委員は弁護士会、司法書士会、公証人役場、保健所、警察署、消費生活センター、地域包括支援センター、社会福祉協議会、社会福祉士会、精神保健福祉士会など12の機関の専門家で構成されている。しかし、専門家集団の組織運営はなかなか難しい。皆プロである。当初はかなり苦労した。指示命令では絶対に動かない。思い出すのが、初めての行事として成年後見シンポジウムの開催について総会に諮ったところ、医療系の委員の猛反対にあってしまった。その委員は実務経験が豊富で皆が一目置く人物である。「しまった。事前に意見を聞いておけばよかった・・・。」と思った。ただ、賛成する委員も何人かいたので、とりあえず試行的にやってみようということで何とか収まった。そこから続きがある。その猛反対した委員に頭を下げてパネリストをお願いし、無理矢理引き受けてもらった。すると、その委員は大活躍してくれたのである。本当に立派な方である。この組織を運営する上で気をつけたことは、情報の共有化・全員参加型の運営と、市民の目に見える活動・達成感の共有である。そのため皆の意見を聞きながら運営するように努めた。素晴らしい見識を持った人たちである。こういった人たちとの人的ネットワークができたのは何よりの財産である。

 主な活動としては、委員合同による市民相談会、講演会、成年後見シンポジウム(3回)、記録誌の発行、各地域に委員が出向いて地元の方々との意見交換会、委員全員の執筆による「高齢者・障がい者支援のためのハンドブック」の発行や、全国に先駆けて「都城市成年後見制度利用促進基本計画」を策定し、逐条解説を加えた冊子を発行したこと、宮崎家庭裁判所や関係機関との情報交換会などである。こういった機会を通じて任意後見制度をしっかりアピールした。そのかいあってか、任意後見契約の件数が近年伸びた。ちなみに、昨年は150件処理した。移行型の任意後見契約は市内の金融機関にもかなり浸透し、中にはお客さんにこの制度の利用を勧めてくれる銀行もある。

3 経営者としての顔

 公証人は、法務大臣から委嘱された公務員である一方、依頼者からの手数料収入で役場を運営する個人事業主である。つまり経営者なのである。経営者には経営理念が必要である。
 そう言う私に初めから経営理念があったわけでない。
 あるとき、いつも利用している銀行に行ったときのことである。顔見知りの窓口担当者が私のところに来て「支店長が替わったので、支店長にあいさ つをさせます。」と言って、私のところに支店長を案内してきた。すると、支店長はカウンター越しでなく、わざわざ待合室に出て、名刺を差し出し、あいさつをされた。なるほど、こういったやり方をするのだなと思った。私はカウンター越しにやっていた。この日を境にやり方を変え、同時にこれを応用した。どう応用したかというと、依頼者が公正証書の作成を済ませて帰るときには、私がカウンターの外に出て、「ありがとうございます。」とお礼の言葉を述べ、書記も立って見送るようにした。また100歳くらいの人が来てくれたときには、車のところまで行って、手を振って見送る。すると笑顔で手を振ってくれる。気持ちがいい。
 公証人は依頼者から貴重なお金をいただいている。「ありがとうございます。」は当たり前である。しかし、それができていなかった。「お疲れ様でした。」という言葉は出ても、「ありがとうございます。」という言葉が出なかったのである。新しい世界の人から学ぶことは多い。
 それと、もう一つは、こちらで受けた人間ドックをきっかけに、信頼できるドクターに巡り会った。そのドクターのお陰で25年来の肝機能障害が改善できた。それでも念のため2か月におきに定期検診を受けている。そのドクターは診察が終わると、次の診察日の予約を入れましょうと言って、自らパソコンに日にちを入力するのである。普通の医者は「また2月くらい先に来てください。」だと思う。しかし、これだと症状が改善しないなど何かなければ、受診に行かない。また先でいいや、ということになる。だけど人間は不思議なもので、予定が決まるとそれを守ろうとするのである。医者にとって患者は客である。都城は特に病院が多い。これが客を逃がさない一つの方法だと思った。
 そこで、私もこの方法を採り入れることにした。遺言の相談を受けると、作成日を決める。その日から逆算して書類を持って来てもらう日を決める。以前は「書類がそろったら持って来て下さい。」というやり方であった。これでは先の見通しが立たないし、依頼者もつい先延ばしにして、中には遺言書作成に至らないケースもある。依頼者は遺言書を作るために相談に来るのである。あなたの依頼はきちんとお請けしましたという意思表示が必要である。そのためにはスケジュールを示すことが大事であるといえる。この方法は依頼者に安心感を与えると同時に、客を逃がさない一つの方法にもなる。
 そして、遺言の依頼があった場合、話の内容によっては任意後見制度を案内している。依頼者にとって何がベストかということを念頭に置くよう努めている。ひいてはサービス向上につながり、公証人役場に好印象をもってもらうと口コミでお客が増える。そうすると役場の経営の安定につながるのである。
 したがって、経営理念は、お客様に感謝すること、お客様の立場に立つこと、そして、笑顔である。
 お客様、地域の人たち、そして、日々の業務を支えてくれる優秀な書記、こうした方々に心から感謝するとともに、一日も早く新型コロナウイルスの感染が収束し、平穏な日々が戻ってくることを願って、筆をとった夏の日である。

  広報活動重点地域に指定されて(関谷政俊)  

1 平成31年4月、日公連から当舞鶴公証役場が平成31年度広報活動重点地域に指定されました。ご存じの方も多いと思いますが、この事業の目的は「嘱託事件が少ない地域で、広報活動の強化により嘱託事件の増加が見込まれる地域、その他特に公証人の公益的な姿勢を国民に広く理解してもらい、嘱託事件の掘り起こしを図ること」と定められています。広報活動の内容として、①講演会の開催、②公証相談員の派遣、③ポスター及びチラシの配布などが示されています。

2 舞鶴公証役場がある舞鶴市は、京都府北部日本海側に位置し、人口8万人弱の地方都市です。舞鶴市は、宮津市、綾部市と隣接し、また福知山公証役場がある福知山市と隣接しています。舞鶴市は、戦後、引き揚げ港に指定され、ソ連、満州、朝鮮などからの帰還邦人を受け入れたこと、海上自衛隊舞鶴基地(総監部)、海上保安学校があることから、地方都市ですが知名度は割合と高い方である思っていますが、基幹産業に乏しく高齢化が進み、人口減少が進んでいます。 舞鶴市は、この事業の目的にある「嘱託事件が少ない地域」には該当しますが、「広報活動の強化により嘱託事件の増加が見込まれる地域」に該当するかはなかなか難しいところがあります。
 舞鶴市は、この事業の目的にある「嘱託事件が少ない地域」には該当しますが、「広報活動の強化により嘱託事件の増加が見込まれる地域」に該当するかはなかなか難しいところがあります。

3 当役場では、以前から広報活動として、京都府北部の舞鶴市、宮津市、京丹後市において自治体の協力を得て、公証相談会(平成30年度20回)、市民講座における講演会等(平成30年度3回)を実施していましたが、今回、広報活動重点地域に指定されたことから、従来の広報活動に加えた活動を検討することとしました。

4 広報活動重点地域に指定される約2か月前、平成31年1月28日付け日本公証人連合会理事長通知「隣県等における公証相談について」が発出されました。この隣県等における公証相談は、「公証人が職務執行区域外の隣県等に赴いて公正証書の作成等を行うことはできないが、地域によっては、住民が居住する県等の公証役場ではなく、隣県等の公証役場に赴く方が、近くて交通の便も良く、利用しやすい場合もあるので、利用者の便宜の観点から隣県等において公証相談を行うことができる。」とするもので、実施に際しての条件として、隣県等の単位公証人会との間で十分なコンセンサスが得られること、所属法務局及び隣県等の地方法務局に対し事前に通知することなどが示されました。

5 舞鶴市に隣接する、福井県高浜町(人口約1万人)は、同町役場から舞鶴公証役場まで一般道を利用して乗用車で約35分(約23㎞)で来ることができますが、同町役場から県内最寄りの公証役場である敦賀公証役場まで一般道を利用すると約1時間30分(約65㎞)を要します。また、以前から同町民から少ない件数ですが公正証書等の作成嘱託を受けていました。

6 広報活動重点地域に指定されたことに伴う新たな広報活動として、隣接する福井県高浜町において講演及び公証相談会を実施することとしました。
 敦賀公証役場小野公証人に内諾を得た上、公証週間がある令和元年10月に開催する予定とし、開催場所等の詳細を検討している最中に、高浜町において原発関連不祥事について報道されたため、その影響を考慮して令和2年3月に開催することとしました。

7 多くの町民の方に公証制度を理解していただくために、公証相談会のほかに、ミニ終活講座として遺言に関する講演会を実施することし、令和元年11月、面識のある高浜町商工会職員から開催場所等についての情報を収集し、駐車スペースが十分確保でき、無料で会場を借りることができる高浜町公民館を会場とすることとし、令和元年11月29日、高浜町公民館と打ち合わせし、会場の予約・申し込み(令和2年3月4日開催)を行いました。また、町民の皆さまへの広報として、同じく小野公証人から紹介された高浜町広報担当者と令和元年12月に広報誌への掲載について打ち合わせを行い、令和2年1月15日、高浜町長に対し、広報誌への広報依頼文書を発出しました。その結果、令和2年3月号(2月28日発行)に掲載されました。さらに、高浜町商工会職員に広報への協力をお願いし、令和2年1月15日、高浜町商工会に広報用チラシ(会員数約300人分)を持参し、会員宛の広報冊子に同封していただくことになりました。その他、令和2年2月7日、日公連事務局に対して日公連ホームページへの登載を依頼し、令和2年2月19日、高浜町公民館に広報依頼(窓口にチラシ50枚を備え付け)も行いました。
 なお、福井公証人会、京都地方法務局及び福井地方法務局に対する事前説明等については、京都公証人会において行っていただきました。

8 原発関連不祥事により開催時期を変更した以外は、福井公証人会の御理解、京都公証人会、高浜町、高浜町公民館、高浜町商工会の御協力、小野公証人ほか関係者の御尽力のおかげで隣県での広報活動の実施について順調に準備することができました。
 ところが、本年2月20日、厚生労働省から「イベントの開催に関する国民の皆様へのメッセージ」が発表され、24日には専門家会議において「この1~2週間の動向が感染拡大の瀬戸際である」とされたため、高浜町においては各種イベント等の開催が中止される状況となりました。2月27日(木)高浜町から当役場に対し、2月29日(土)高浜町公民館から講演会等の実施予定について照会がありました。高浜町公民館からは会議室の使用を禁止はしないとのことであったので、総合的な見地から判断し、急遽3月2日、講演会については中止することとし相談会のみを実施することにしました。高浜町及び日公連のホームページにおいてその旨を広報していただきました。
 相談会開催当日の3月4日は、感染拡大防止のため外出を控える傾向が強まっている中、雨も降り、相談に来られる方がいないのではないかと心配しましたが、2組の相談者が訪れ、相談担当として京都合同公証役場から来ていただいた天野公証人及び会場設営兼受付担当の書記の方と胸をなで下ろしました。

9 今回、新たな広報活動として、隣県での講演会等を企画しましたが、新型コロナウィルスの影響により、その対応を即断する必要が生じ、講演会及び公証相談会を当初予定の内容のとおり開催することもできず、十分な成果を上げることはできませんでした。しかし、町広報誌への掲載及び商工会会員宛冊子へのチラシ同封などによる公証制度の周知という点では一定程度の成果はあったと思っています。
 また、日公連から示された、隣県等における公証相談のスキームに従って、企画・立案し、各所との打ち合わせ、調整など公証人以前の仕事での経験を活かすことができ、公証業務を行うこととは違う意味で充実した日を過ごすこともできました。講演会は実施できませんでしたが、講演会周知用チラシの作成は、新鮮な感覚で行うことができました。

10 広報活動重点地域に指定された昨年度は、公証相談会(21回)、市民講座における講演会等(5回)、隣県での相談会を実施できました。 
 この事業の目的である、広報活動の強化はある程度図ることができたと思いますので、今後は、嘱託事件の掘り起こしを図って行きたいと思います。当然のことですが、隣接公証役場の嘱託事件を減少されることなく、総数の拡大を目指すものであることを申し添えます。

  9ヶ月が過ぎて(醍醐邦治)  

 厚木公証役場(神奈川県厚木市)の公証人に任命されて、早くも9ヶ月が過ぎました。就任前の見通しとは大きく異なり、依然として仕事に追われる日々が続いています(ここ数ヶ月は新型コロナウィルスの影響で遺言の作成、外国文認証を中心に業務量全体が大きく減少していますが、4月から施行された「保証意思宣明公正証書」の作成は予想に反して多くの依頼があります。)。改めて、公証事務の範囲の広さ・深さを実感するとともに、自分自身の知識・勉強不足を痛感することが多く、一方で疑問等に親身になって応えてくださる諸先輩先生方の存在は大変心強く、深く感謝しているところです。

 ところで、公証役場がある神奈川県は、今まで法務局での勤務がないばかりか、自宅のある千葉県とは東京湾を挟んで反対側に位置していますが、これまで、同じ関東の他県と比べると、意外とプライベートでも訪れる機会が少なかったように思います。  神奈川県は、東京都に隣接し、横浜市・川崎市(この二つの市で人口500万人を超え、神奈川県全体の半数以上を占めています。また、横浜は中華街をはじめ異国情緒溢れる港町で屈指の観光スポットです。)といった大都市を擁する一方で、鎌倉幕府誕生の地で歴史情緒あふれる鎌倉(シンボルともいえる大仏やあじさい寺で有名な明月院などがあります。)、日本有数の温泉地である箱根・湯河原、景勝地の江ノ島、マリンスポーツのメッカとして、また、風光明媚な地として四季を通じて賑わいのある湘南海岸など、豊かな自然と歴史・文化に恵まれた地域が多く、まさに見所満載です。縁があってこの地で生活することになりましたので、この機会に近くて意外と遠い存在であった神奈川県の各地を、ゆっくり楽しみたいと思っています。

 ここで、公証役場の所在地であり、私の生活の拠点でもある厚木市について、若干触れますと、同市は神奈川県の中央に位置し、6市2町1村に接しています。都心から約40㎞(電車で約1時間)、横浜から約30㎞(電車で約30分)の圏内にあり、小田急線のほか東名高速道路や新東名高速道路、圏央道、小田原厚木道路のインターチェンジがあるため、東京・名古屋方面はもとより長野県や群馬県などからもアクセスが容易で、地理的条件に恵まれています。ちなみに「厚木」と聞くと「厚木基地」のイメージを抱く方もいらっしゃるかもしれませんが、「厚木基地」は隣接する大和市、綾瀬市及び海老名市の3市にまたがって立地しており、厚木市にはありません。厚木にはないのになぜ「厚木基地」というかは諸説ありますが、どれも確証がなくハッキリしていないようです。

 都心から比較的近い距離にある厚木市ですが、丹沢山系の東端に位置しているため、郊外に出れば深い緑の自然が広がっています。市内から車で15分ほど走ると、本格的な温泉(飯山温泉郷、七沢温泉郷)があり、素朴な一軒宿から老舗旅館まで個性ある温泉宿が点在し、いずれの温泉も強アルカリの泉質で肌をつるつるに整えることから「美人の湯」として有名です。週末には、食事を兼ねて日帰り温泉に行くことが楽しみの一つになっています。
 ちなみに、役場へは、市内にマンションを借りて通っていますが、マンションの西側には丹沢国定公園の一角をなす大山(「おおやま」と読みます。古くから庶民の山岳信仰の対象として親しまれていたようです。)を眺めることができ、四季を通して様々な表情を見せてくれています。毎朝、一日の無事をお願いして出勤しています。

 忙しい中でも、そんなことを思いながら厚木での生活を送っていましたが、今般の新型コロナウィルスの感染拡大によって、状況は大きく変わりました。
 まずは、役場の事業者として報道機関や日公連等からの情報をもとに、3人の書記さんと役場の勤務体制や事務処理方法などについて話し合い、ハード面、ソフト面にわたって出来る限りの感染防止策を採ってきました。当初は、マスクや除菌・消毒剤等が極めて入手困難な状況が続きましたが、そんな中で、ドラッグストアの前に長時間並んでマスクを購入し、また、自宅で入手したフェイスシールドを持って来てくれた書記さん達には、本当に感謝しています。これをきっかけに、書記さん達との一体感もさらに醸成されたような気がします。

 5月25日には緊急事態宣言が全国で解除され、また、6月19日には県をまたぐ移動の自粛要請も全面解除されました。これを待ち望んでいたように、街には以前の賑わいが急速に戻って来ています。厚木市内には、大学4校、短大1校、専門学校7校があり、同市の昼夜間人口比率(常住人口100人当たりの昼間人口の割合)が115%と非常に高いことなどからも、この傾向が顕著に現れている気がします。併せて、小さな「夜の街」も動き出しています。

 「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ではありませんが、依然として大都市を中心に全国各地で感染者が報告されている状況からすると、第2波、第3波の襲来が心配です。現在、世界中で新型コロナウィルスの治療薬やワクチンの研究開発が進んでいますが、少なくとも有効な治療薬等が開発されるまでは、直ちにこれまでの日常に戻ることはできません。それまでの間は、適度な緊張感を持ちつつ、これまで実施してきた新型コロナウィルスの感染防止策や「新たな生活様式」の実践例を意識し、油断することなく粛々と生活の中に取り入れて行動することを、日々心掛けています。当初、煩わしく感じていたことも、慣れてくると余り苦にならなくなっているように思います。
 いずれにしても、しばらくは一定の我慢が求められますが、その中でもストレスを溜めないように工夫し、趣味や旅行など、今できること・やりたいことを一つ一つやって行こうと思っています。

実 務 の 広 場

   このページは、公証人等に参考になると思われる事例を紹介するものであり、意見にわたる個所は筆者の個人的見解です。

  No.80 テレビ電話による電子定款認証手続について  

1 はじめに
 現在,テレビ電話による電子定款認証制度が導入されていますが,全国的に取扱事件数が伸び悩んでいた状況に鑑み,法務省民事局においてテレビ電話の利用を更に促進する観点から,令和2年5月11日に関係省令の一部を改正する省令が施行されました。このような折も折,新型コロナウイルスの影響が世界全体を席巻し,日本でも緊急事態宣言を経て新しい生活様式が公表されるなど,感染防止対策上,このテレビ電話による活用の意義が高まることになってきました。
 そこで,決してパソコンに精通しているとは言いがたい私が,今回,テレビ電話による電子定款認証手続について,取りまとめた内容を紹介させていただきます。

2 テレビ電話の導入経緯・対応そして問題点
 ご承知のとおり,平成31年3月29日から,「指定公証人の行う電磁的記録に関する事務に関する省令の一部を改正する省令」が施行され,法人設立手続のオンライン・ワンストップ化の取組として,一定の要件を満たす場合には,公証役場に行かなくてもテレビ電話で本人確認を受け,電子署名を自認することにより,認証を受けることが可能となりました。その事前準備として,日本公証人連合会からは,テレビ電話に関する説明資料,パソコン用のカメラやヘッドセットの送付があり,また,全国統一した電子認証サービスを提供しなければならないことやパソコン操作に対して苦手意識を持つ公証人の意識改革を図ることなどの必要から,各ブロックの電子認証公証委員が分担して,全公証人を対象にテレビ電話操作の事前リハーサルが実施されました。私は,前述のとおり決してパソコンに精通しているわけではなく,むしろパソコン操作の意識改革を図っていかなければならないタイプで,私なりに苦労をしながら,事前に操作マニュアルを何度も読み直し,何とかリハーサルを無事に終了し,安堵した記憶があります。しかし,一方で,発起人が電子署名できない場合は,電子委任状による本人確認ができず,このテレビ電話方式を活用することができないことから,このような制度を導入しても,個人に電子署名の利用が広がっていない現状を見ると,ほとんど需要は期待できないと思っていましたし,その後,全国的にもテレビ電話方式の申出件数が極めて低調であって,当役場においても現実に申出がなかったことから,自然とその操作方法等は忘却の彼方になってしまいました。

3 テレビ電話需要拡大の動き
 ところが,昨年12月に中国湖北省武漢市により原因不明の肺炎患者が報告されて以降,本年1月には日本での最初の感染者が確認され,その後,新型コロナウイルスとして全世界に感染が広がっていったのは皆様ご承知のとおりです。日本国内では,緊急事態宣言を受け,外出の自粛,テレワーク・オンライン会議・オンライン申請の活用が強く求められました。
 法務省民事局において,テレビ電話の利用拡大を図るため,発起人,設立時社員等の実印の押印された紙の委任状と,当該委任者の印鑑証明書を郵送する方式でもテレビ電話による認証を認める「指定公証人の行う電磁的記録に関する事務に関する省令の一部を改正する省令」が既に検討されていて,当初,令和2年7月6日施行を予定していたのを,急遽5月11日に前倒しで施行されたのも,このコロナ禍の影響によるものと思います。
 そんな中,本年4月当初にこれまで何度か定款認証の嘱託を受けたことがある埼玉県内のある業者から,「このコロナ禍の中,予定している定款認証日に復代理人を派遣させたくないのですが,何かいい方法はありませんか。」との問い合わせがありました。「現在,法務省民事局では,発起人から紙の委任状と印鑑証明書を事前に郵送されれば,公証役場に出向く必要がなく,テレビ電話での対応が可能となる省令の一部改正のパブリックコメントが行われていますが,施行日は本年7月6日の予定で,現状では発起人の方が電子署名の利用が可能でない限り,申し訳ありませんが,当役場に来ていただく必要があります。」と応答しました。この照会を受けた時に,当役場においても確実にテレビ電話方式の需要があることを実感しました。

4 テレビ電話方式での作業手順
 このような思いから,まずは,改めてテレビ電話導入時の説明文書を見直し,また,日本公証人連合会からの文書(令和2年5月13日付け「指定公証人の行う電磁的記録に関する事務に関する省令の一部を改正する省令の施行後の公証事務の取扱いについて(通知)」ほか)等を参考に,テレビ電話方式での作業手順を以下のとおり整理してみました。


(1) 電子定款認証の依頼

 ア FAX又はメールによる申込依頼及び事前審査
 最初に,電子定款認証の依頼方法として,FAX又はメールにより依頼文書及び定款案のほか,委任状,印鑑証明書,実質的支配者の申告書等も併せて送信される場合が多い。嘱託人から事前に送信があった定款案のほか,これらの関係資料の事前審査を行い,その結果を嘱託人に連絡する。
 イ テレビ電話方式での認証依頼
 依頼文書等でテレビ電話方式での認証依頼であることが確認できれば,事前の審査結果を嘱託人に連絡する際に,電子委任状によるものか,又は紙の委任状と委任者の印鑑証明書の郵送によるものかを確認しておく(上記アの申込依頼文書で記載されている場合が多いと思われる。)。また,メールによる申込依頼の場合は,嘱託人のメールアドレスをパソコンメモに貼り付けておく。
(2) 認証日時の調整
 事前審査の結果,定款案の内容に問題がなければ認証日時の調整を行う必要がある。特にFAXによる申込依頼で,嘱託人のメールアドレスを承知していないときは,小山公証役場のホームページにある「小山公証役場予約申込みフォーム」で申込みをしてもらい,判明した嘱託人のメールアドレスをパソコンメモに貼り付けておく。

【申込依頼があった場合の返信文言例】

=FAX又はメールによる場合=
 小山公証役場 公証人の松尾です。
 送信いただいた定款案及び関係資料を確認させていただきましたが,特に内容について問題はございません。
 認証の希望日時,書面による同一の情報の提供(謄本)をご希望の場合は,その通数を事前にご連絡願います。(ただし,FAXでの申込依頼の場合は,認証の希望日時について,小山公証役場のホームページにある「電子定款」の「小山公証役場予約申込みフォーム」から予約手続願います。)
 また,今回は,テレビ電話方式による認証をご希望とのことで,後日郵送される委任状,印鑑証明書等を確認後,嘱託人URL,認証手数料,振込先口座等について,別途ご連絡させていただきます。
 なお,委任状等を郵送される際は,返信用のレターパック(返送先の宛名を記載したもの)を必ず同封願います。
 よろしくお願いします。  
=小山公証役場予約申込みフォームによる場合(FAXでの申込依頼で,定款案等の事前確認が終了している前提)=
 小山公証役場 公証人の松尾です。
 今回の定款認証の予約申込につきまして,取り急ぎ,希望日時の令和2年●月●日(●曜日)●時からで承りました。
 つきましては,テレビ電話方式による認証をご希望とのことで,後日郵送される委任状,印鑑証明書等を確認後,嘱託人URL,認証手数料,振込先口座等について,別途ご連絡させていただきます。
 なお,委任状等を郵送される際は,遅くても上記認証予定日の前日までに必着するよう手配願います。
 よろしくお願いします。  
  (注)上記文言例は,状況に応じて修正が必要

(3) テレビ電話用URLの作成
 ① 公証人専用パソコンのGoogle Chromeのアドレスバーに「管理画面のURL」をコピー(当役場ではパソコンメモに既に「管理画面のURL」をコピーしており,それをダブルクリック)して管理画面を開く。
 ② 「公証人用ID」には,8桁の公証人IDを,「嘱託人用ID」には,嘱託人のメールアドレス(上記(1)イ及び(2)でパソコンメモに貼り付けたもの)をそれぞれ入力する。
 ③ 「公証人用URL」と「嘱託人用URL」が自動作成される。作成されたそれぞれのURLを,上記(1)イ及び(2)のパソコンメモに嘱託人のメールアドレスと併せて貼り付けておく。

(4) 嘱託人への連絡
 嘱託人に対して認証日,嘱託人URL,認証手数料,振込先等をメール送信する。
【嘱託人への送信メール例】 

小山公証役場 公証人の松尾です。
 ご依頼のありましたテレビ電話方式による定款認証につきまして,以下の事項をご連絡させていただきます。
 よろしくお願いします。
1 認証日:令和2年●月●日(●曜日)●時
2 嘱託人用URL:
3 認証手数料: 円
4 振込先:金融機関名:●●銀行●●支店   
      口座番号:普通    
      口座名義人:小山公証役場 公証人 松尾泰三
 振込みについては,遅くとも上記1の認証日までに完了願います。
 なお,テレビ電話による電子定款認証が終了し,振込みの確認ができ次第,電子定款をオンライン交付させていただき,また,同一の情報の提供(謄本),申告受理及び認証証明書,領収書等を郵送させていただきます。
【留意事項】
① 嘱託人の側でテレビ電話が利用できる環境の整備〔パソコンの場合はGoogle Chromeブラウザを,スマホの場合はFaceHubアプリを事前インストール〕が必要となります。
② 上記1の「認証日」当日の予約時間に上記2の「嘱託人用URL」をクリックして起動願います。
③ テレビ電話に対応していただく方は,嘱託人本人(法人の場合は代表者)に限られるので,復代理人の対応は不可となります。また,面識のある嘱託人についても,テレビ電話の性質に鑑み,嘱託人本人の顔のほか,運転免許証等の提示を求めて画像撮影及びデータ保存させていただきますので,ご了承願います。
④ 電子定款のオンライン申請は,遅くとも認証日の前日までに完了願います。
以上

(5) 認証日での対応
ア インターネット・バンキングによる手数料の入金確認
 事前に連絡した電子定款の認証手数料が指定口座に振り込まれているかどうかを確認する。振込みを確認した段階で認証行為を行うことになるので,いまだ振り込まれていない場合は,公証人の署名認証ができないことを嘱託人に伝えておく必要がある。なお,電子署名付電子委任状の場合は,郵送料の実費を嘱託人に負担してもらう必要があることから,返信用のレターパック料金を認証手数料に上乗せしておく必要がある。
イ テレビ電話の操作
(ア)公証人側
 認証日の予約時間の少し前にGoogle Chromeを起動し,アドレスバーにパソコンメモの「公証人用URL」を貼り付け待機する。
(イ)嘱託人側
 認証日の予約時間に,公証人から事前に送信された「嘱託人用URL」をクリックすると,公証人が待機中であれば,同時に呼出しが開始する。
(ウ)応答
 応答ボタンをクリックすることにより,嘱託人とのテレビ電話による応答が開始する。
【嘱託人との応答例】 (公):公証人,(嘱):嘱託人

=嘱託人による申請及び電子署名の確認=
(公)こんにちは。私は,小山公証役場公証人の松尾泰三といいます。これから,テレビ電話による定款認証を始めさせていただきますので,よろしくお願いします。
(嘱)よろしくお願いします。
(公)それでは,始めに,お名前をおっしゃっていただけますか。
(嘱)●●です。
(公)本日認証する株式会社▲▲の定款について,作成代理人としてオンライン申請をされたのは,今画面に映っている●●さん自身で間違いないでしょうか。
(嘱)はい。
(公)オンライン申請された定款の電子署名を確認させていただきましたが,これは,●●さん自身の意思に基づいて電子署名されたことで間違いないでしょうか。
(嘱)はい。
(公)発起人の委任状及び印鑑証明書が事前に郵送されてきて,内容を確認させていただきましたが,問題はありませんでした。 (嘱)了解しました。 =本人確認=
(公)次に,本人確認をさせていただきます。本人確認資料として,●●さんの運転免許証又はマイナンバーカードをお持ちでしたら,画面に提示していただけますか。
(嘱)画面提示
(公)提示いただいた運転免許証であなたが●●さんであることが確認できました。この本人確認資料を記録保存しておく必要があるので,あなたのお顔と運転免許証の画像を保存させていただきますが,よろしいでしょうか。 (嘱)はい。
=本人の画像撮影及び保存=
(公)それでは,まず,運転免許証の画像を撮影したいので,免許証をアップで示していただけますか。
(嘱)はい。
(公)次に,あなたのお顔を撮影しますので,もう少し前に出ていただけますか。
(嘱)はい。
(公)ありがとうございました。画像データを撮影して保存することができました。
=公証人の認証手続=
(公)これで,無事に株式会社▲▲の電子定款認証の本人確認が終了しましたので,これから私がこの電子定款に電子署名をして認証させていただきます。しばらくすると,私が認証した電子定款のデータが登記・供託オンライン申請システムを通じて●●さんの方に届きますので,これを原始定款の原本としてCD等に読み込んで,保管しておいてください。
(嘱)はい。
(公)また,請求のありました同一の情報の提供の紙謄本■通と申告受理及び認証証明書は,領収書と共に同封していただいたレターパックにより別途郵送しますので,しばらくお待ちください。
(嘱)はい。
(公)以上でテレビ電話による電子定款の認証手続を終了します。どうもお疲れさまでした。

ウ 本人確認の画像の撮影及び保存
 マウスを操作して,画面の矢印マークを画面の左上に動かすことにより現れた「キャプチャ」をクリックすることにより,表示画面を丸ごと画像データとして写し取ることができる。画面右下にキャプチャされた画像が現れ,それを,画像近くの保存のアイコン(「下向きの矢印をお盆で受けるような形のマーク」又は「一括」の文字)をクリックして,パソコンへの保存作業を行う(注)。なお,この保存作業は,複数キャプチャした画像(顔,免許証)を,「一括」のアイコンでまとめて保存することもできる。
 (注)キャプチャ操作だけでは画像データがパソコンに保存されないので,必ず保存のアイコンのクリックを忘れないように注意する必要がある。
エ 電子定款の署名認証・オンライン交付
 本人確認が終了した時点で,電子公証システムによる署名認証手続を行う。その際には,電子情報システムの申請情報画面の「オンライン交付あり」にレ点を付した状態で完了操作を行うことが必要となる。
オ 手数料領収書等の送付
 オンライン交付手続が終了した時点で,手数料領収書を始め,申出があった同一の情報の提供(謄本)・申告受理及び認証証明書,原本還付請求があった返却原本等を,嘱託人から送られてきた返信用レターパック(電子署名付電子委任状の場合は,当役場で準備した返信用レターパック)に入れ,郵送する。

5 おわりに
 この原稿を作成している6月下旬に,東京都内の業者から初めてテレビ電話による電子定款の認証依頼がありました。おそらく,一度テレビ電話による電子定款認証の手続を経験された業者は,特に遠隔地の役場に嘱託する場合,往復の時間,交通費等の軽減が期待されることから,テレビ電話方式を活用することになり,徐々に需要が増えてくるものと思われます。一方で,委任状の事前郵送手続による時間と事務の増加や,急ぎの認証を求める事案など,特に地元業者においては,当分の間は従前どおりの方式での定款認証手続が維持されていくものと思われます。
 新たな制度の導入について,ある程度の件数が出れば,その手続に慣れることにより問題なく処理することができますが,このテレビ電話方式による電子定款認証手続については,当面、短期間で慣れるほどの事件増になるとは思えず,しばらくの期間は,テレビ電話での手続を忘れかけた頃に嘱託されるといったことも危惧されることから,その際には,すぐに思い出せるような操作マニュアルとしてこの原稿を活用していきたいと思っています。
 これからは,一つ一つテレビ電話方式での手続経験を重ね,この取り急ぎ机上で作成した操作マニュアルをブラッシュアップできればと考えています。
(松尾泰三)

No.81 親権を利用した知的障害のある未成年の子の保護のための任意後見契約

 新型コロナウィルスの感染拡大により,全国の公証役場において,特に3月から6月までの4か月間は,役場運営や事件処理の面で大きな影響があったのではないかと思われます。
 当役場においては,事件数が減少する中,遺言が特に少なくなり,相対的に離婚と定款が多くなるなど,これまでとは少し異なった日常を過ごしていましたが,5月も終わろうとした頃,司法書士の方が珍しく任意後見契約の一般的な相談で来訪されました。
 相談の内容は,知的障害のある未成年の子どもがいる両親が,その子の将来のことを心配し,その子に後見人が必要となったときに,両親のうち,どちらか一方の親が後見人となって,その子の身上監護及び財産管理を行うことができるように,その子が未成年のうちに,両親が親権を使って,一方の親を任意後見受任者として任意後見契約を締結したいとの事案であり,既に,東京法務局管内において公正証書が作成され,登記も経ている事案があり,また,全国的にも何件か作成されているとのことでした。
 ただし,相談者いわく,この趣旨の公正証書を作成することに疑問を持たれる公証人がいるため,今回,当役場の所在地近くにお住まいの方から具体的な希望が出てきたことから,まずは当役場に一般的な相談に来たということです。
 全国的に作成されているとの説明を受けて,不勉強ながらそのような話は聞いたことがないと思いつつ,知的障害のある未成年の子の任意後見契約を締結する場合は,親が信頼できる人を見つけてきて,その人との間で親が親権に基づいて子を代理して契約を締結することができる(ただし,いったん公正証書を作成すると,たとえ子の将来の状況が変化しても,子自身が解除することは困難であると思われることから,公正証書の作成に当たっては,より慎重な判断が求められる。)けれども,そこでの任意後見受任者は,親以外の第三者を想定しているのではないか,果たして親自身を任意後見受任者にすることができるのであろうか,と思わず相談者に疑問をぶつけてしまいました。
 この疑問に対し,相談者は,任意後見人には誰がなってもよく,登記も受理されていること,加えて,知的障害を持つ親にとっては,その子の出生から一番近くでその子のことを見てきた親自身が任意後見人になることが一番ふさわしいし,多くの親はそのことを希望しているとの説明でした。
 任意後見契約に関する法律4条1項3号記載の不適格事由の存否について注意が必要である点は別として,任意後見受任者の資格には法律上の制限がないので,親を任意後見受任者にすることができるというのは,確かにそのとおりです。
 それなのにどうして親を任意後見受任者とすることに疑問を感じたのかと言えば,任意後見契約は,本人に知的障害があるとはいえ,子の自己決定権の尊重の趣旨から本人の意思に合致していなければならないのは当然ですが,最近の親子間の問題事例を念頭に,親を任意後見受任者とした場合,結果的に子の意思や希望が無視されるようなことが懸念される事例が出てくることにならないかと考えたことがまずあります。また,これは手続的なことになりますが,子に知的障害がある場合に親が親自身を任意後見受任者とする契約は利益相反行為になるのではないかと考えたこともあります(なお,寶金敏明監修「活用しよう!任意後見(安心の老後と相続のために)」39ページには,親が親自身を任意後見受任者とする契約は,同一の法律行為について相手方である子の代理人となる自己契約(民法108条)に該当するため,特別代理人と受任者である親とで契約を締結することになるとの趣旨の記載があります。)。
 これについても,相談者は,任意後見人としてふさわしくない親については,任意後見契約の効力発生に際して家庭裁判所がその適格性を判断すること,利益相反行為の点については,既に利益相反行為に当たらないことを前提とした手続により公正証書が作成され,登記がされている事案があり,特別代理人を選任しなくても契約としては有効であると考えているとの説明でした。ただし,後者については法的な判断に係ることであり,公証人の判断にお任せするとのことでしたので,その日は,事件の受否及び手続について検討して回答するとして相談を終えました。
 相談後,東京公証人会の「会報」を確認すると,既に,この趣旨の事案については日本公証人連合会及び東京公証人会において検討がされ,「会報」の令和元年11月号22ページに法規委員会の協議結果が登載されており,令和2年5月号26ページに,東京家庭裁判所と東京公証人会との連絡協議会の協議結果が登載されています。
 二つの協議結果の概略は,夫甲と妻乙との間に知的障害のある未成年の子丙がいる場合,①丙を委任者,甲又は乙を受任者として無報酬の任意後見契約を締結することは可能であること,②甲を受任者として任意後見契約を締結する場合,甲に代わる特別代理人を選任し,特別代理人と乙とが共同代理して契約を締結すべきであるとするのが多数説であるが,乙のみが法定代理人として契約を締結できるとの考え方もあり得るので,特別代理人の選任が必要かどうかは,最終的には家庭裁判所の判断によること,③東京家庭裁判所の事例として,特別代理人の選任申立てがされた後,取下げで終了した事案(同事案は,公正証書作成後,登記されている。)はあるが,東京家庭裁判所として判断に至った事例はなく,東京家庭裁判所としては,現時点では確定的な考え方を述べることはできないということでした。
 今回の事案の検討に当たって特に問題となるのは,上記協議結果における甲と丙との任意後見契約が利益相反行為に該当するか否かということです。
 この点について,民法826条の利益相反行為に該当するか否かの判断基準は,「行為自体」ないし「行為の外形」から外形的に判断すべき(形式的判断説)というのが判例ですが,今回の相談事案については,たとえ,任意後見契約が無報酬の場合でも,被任意後見人の重要な書類等の引渡しを受けて任意後見人が代理行為を行うということが,外形上,任意後見人が利益を得る一方,被任意後見人が不利益を被るものと考えられる余地があります。
 そのように考える限り,既に登記事例はあるものの,家庭裁判所の判断が分かれる可能性もあり,せっかく締結した任意後見契約が,万が一にも将来において無効とされることのないよう,慎重に事を進めた方が良いと考えました。
 そして,6月に入り,相談者に対しては,公正証書を作成することはできること,ただし ,作成に当たっては,嘱託人の方に負担を掛けることにはなるが,特別代理人の選任が必要な事案と考えるので,依頼に当たっては,その準備も同時に進めてほしいとの回答をしました。
 その後,現在まで具体的な依頼はありません。
 特別代理人の選任を必要とするかどうかは,個々の公証人の判断によることになりますが,この趣旨の事案は,全国に知的障害のある子を抱え,その子の将来のことを心配されている両親(又は一人親)が多いのではないかと思われること,また,成人年齢の引下げの施行期日が迫っていることなどから,今後近いうちにある程度の依頼があるかもしれないので,一つの相談事例として紹介します。
(喜多剛久)

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