民事法情報研究会だよりNo.15(平成27年12月)

師走の候、会員の皆様におかれましてはますますご清祥のこととお喜び申し上げます。 さて、過日ご案内いたしましたとおり、12月12日の後期セミナーは、東京大学名誉教授の内田貴氏に「日本人はどのように法学を受容したのか?」と題して講演をいただくことにしております。また、セミナー修了後は会員相互の交流のための懇親会をご用意いたしております。まだ会場には余裕がございますので、欠席の回報をされている方でも当日都合がついた場合は、電話・FAX等でご連絡のうえ、ご出席ください。(NN)

「ありがとう」は五つのひらがな(理事 佐々木 暁) ?♪さようならは さようならは 五つのひらがな♪たった五つのひらがなに秘められた女の…♪♪で始まるロスプリモスの唄が私は大好きで、良くカラオケで恥をかいておりました。たった五つのひらがなにも色んな想いが込められ、人生の喜怒哀楽が秘められ、感謝や優しさが十分に伝えられるものであることが、馬齢を重ねるにつれ、しみじみと思うようになってきました。 主として私の性格だと思いますが、男のかってな気持ちや高慢さ?がなせることなのか、我が妻に対して、心に思っていても素直に「ありがとう」と口に出して言えないというか言っていませんでした。もちろん感謝の気持ちは十二分にあるのですが、ただ、口に出して言えないのです。ついでに恥をかけば、「美味しい」とか「お疲れ様」とかも頻繁には口にしていないような気がします。 住友信託銀行が主宰していたと記憶しておりますが、「60歳のラブレター」流に言えば、仮に「68歳のラブレター」を出すとすれば…「妻へ  ゴメン ありがとう の一言が言えなくて これからは出来るだけ口に出して言います ありがとう と」と心の中で書いてみたりもしました。 平成27年9月23日は、私の誕生日で、結婚43年目の記念日でもありました。その夜にふと改めて自分の年齢を考え、これまでの自分の事や婚姻生活等に想いを巡らしていると、反省することばかりが頭をよぎり、中でも一番は、妻にもよく言われていた、私の性格の事でした。妻に性格を改めるようによく言われて常に反省しては直そうとしてきたつもりなのですが、一向に改善?されていないようです。瞬間湯沸かし器的であること、仕事以外では口数が少ないこと、頑固であること、口が悪いこと等々(誌面の関係で省略)数知れないようです。努力はしているのです。必死に。如何せん結果が出ません。しかももう68歳。 ところで、私には間もなく晴れて人生のご褒美?の悠々自適?の日が訪れる予定となっており、子らが独立した今、この悠々自適の日々を妻と二人で歩む(歩まして頂く)には、その前提として、性悪な自身の性格をまず直さなければならないという大問題が控えており目下の悩みであります。 「ありがとう」の一言が、当たりまえの感謝の一言が、なんの躊躇いもなく口から発せられるよう特段の努力をしなければならないことを痛感しつつ、通勤電車の車窓を流れる景色を見つめているこの頃です。 法務局勤務時代、公証人となってからも、お客様や嘱託人には、いとも簡単に何の躊躇いもなく「ありがとう」と言えるのに。仕事で「ありがとう」を言い過ぎて家では玉切れ?と自分勝手な言い訳も世に通じないことも承知しているのですが。 私は、遺言書を作成するため公証役場に来られるご夫婦には、付言事項の段になり、「ご主人は、これまで奥様に対して、お礼とか愛しているよと言ってこられましたか?」「否、そんなこと思っていても男の俺から照れくさくてとても言えないよ」「奥様は、ご主人からそんな言葉がほしかったですか?」「まぁ、今更いいけど無いより在ったほうがいいわね(少し照れくさそうに)」「それではご主人の気持ちをせめて遺言書の最後に、・・・妻○○さん今日まで色々とありがとう・・・と書いておきましょうか?」「いいよ書かなくても。今更照れくさい。でも公証人が書きたいなら書いてもいいよ(やや顔を赤くして)」と人様の事には、いとも簡単に余計なお節介をするのですが。このやり取りがあって、ともすれば緊張し、重たい雰囲気の証書作成の場をやわらげて、スムーズな作成へと導いてくれているような気がしています。 人のことはどうあれ、これからはもっと素直な気持ちで「ありがとう」というたった五つのひらがなが言えるように、幼稚園児のような気持ちで余生を過ごしたいと思うこの頃でございます。 実は、私には、お題にはないもう一つの難題があるのです。結婚以来、妻を名前で呼んだ記憶がほとんどないのです。もう、二人きりでの中で「お父さん」「お母さん」「お爺ちゃん」「お婆ちゃん」と呼び合うのもどうかとは思ってはいるのですが(この呼び方さえもあまりしていない。よく言えば阿吽の呼吸で)。妻を「○○子・○○さん・○○ちゃん」と今更呼ぶのは、これまたシャイな私にとっては一大決意を要する超難題なのでありますが、多くの女性は名前で呼ばれることを望んでいるようです。誌友の偉大なる同志の皆様、何卒悩める老羊にご指導の手をよろしくお願いいたします。

 

今 日 こ の 頃

   このページには、会員の近況を伝える投稿記事等を掲載します。

回想(澤脇達文) 時の経つのは早いもので、私も公的な職を退いて間もなく7年を過ぎようとしています。7年の経過で、年齢が70の大台に乗り着実に平均寿命に近づいています。 これを機に、この7年間でのあまり一般的でないと思われる経験を振り返ってみようと思います。 あまり一般的でないと思われる経験とは、①公証人会事務局勤務のこと、②シニアユニバーシティ在学のこと、③大型の大腸ポリープ切除のこと、で、私の勝手な回想にご容赦をいただくよう、予め申し上げておきます。 1 公証人会事務局勤務のこと 平成20年8月11日から平成25年11月1日まで日本公証人連合会・東京公証人会併用事務局・事務局長(以下、単に「事務局長」と略称する。)として勤務しました。 事務局長の仕事は、組織としての一般的な経常事務を行う事務局の事務処理および事務局職員の指導監督を行うほか、二つの公証人会の会長以下の執行部と業務分野ごとに設置されている委員会の指示又は要請に応える仕事を行います。 更に、一般の人からの公証人会あての相談・照会等に対応する仕事もしていますが、この仕事は量的にみて相当なウエイトを占めています。 この相談・照会対応の仕事は、公証人OBが事務局長に就くこととなった大きな要因で、公証人OBが事務局長に就任したのは、私で3人目です。 公証人OBの就任は、当時の日公連会長が、事務局の確実性、迅速性等を備えた事務処理および一般の人からの相談・照会に的確に対応することを図り、これを実現するため、人材登用のウルトラCとして公証人OBに着目し口説き落とした、と聞いています。 公証人会の事務処理上で、事務局長の果たしている役割は、この所期の目的の効果を十二分に発揮していると言って過言ではないと思います。 私の前任のお二人は、就任期間2年と短い期間でしたが、私の場合は後任者の人選の都合で、結局5年2か月、概ね二人分の期間を務めることになりました。もちろん、私としては恋々としてしがみついていた思いはありませんが、 職務の遂行の面では、私なりにできる限りの努力はしたつもりでおります。 具体的に大きなこととしては、継続していた遺言検索システム上の問題点(正確性の確認、外国人の検索)解消、いわゆる支援策の導入、UINLの初のアジア地区フォーラムの東京開催等々がありました。いずれも、全てを事務局が行ったものではありませんが、十分なサポートができたと思っています。 おしまいに、日公連本部に寄せられる苦情についてです。 苦情の多くは公証人に対するもので、苦情の性格上、相手はすぐには納得しません。最初に応対する事務局長も神経を使いました。もちろん苦情申し出の不当性を感じ、公証人の処理の理由を説明・説得するケースも多くありましたが、逆に、公証人の対応、説明に若干の疑問を感じることもありました。 最終的には、当番役員が処理することになりますが、苦情に関しては、エネルギーの消費は相当なものです。 付け加えますと、公証人ついての苦情のほとんどは、接遇に起因するもので、苦情申し出を生きがいにしているような人の場合を除けば、公証人が説明を惜しまない丁寧な対応をすることにより、大方の苦情は解消できるのではと思いました。 ただ、昨今の公証人の皆さんは、接遇の大事さも十分認識され、研修等の効果も相まって、この点の苦情は、減少をしているのではと思っています。 2 シニアユニバーシティでのこと 平成25年11月に事務局の仕事を卒業して、年金生活になりました。 しかし、それまで、ずっと決められた時間にしたがって働いていた生活習慣が抜けきれなく、毎日が日曜日と言っても、勤務中の本、資料は山積みのまま整理する気が起きず、長い習性は俄かに変わりません。 そこで、今までの生活時間の過ごし方も考慮し、1つは、さいたま市のシニアユニバーシティに入学して世間を知ること、2つは、シニアパソコン友の会に入会して、それなりにパソコンを使えるようになること、の目的で、それぞれ毎月2回通っています。 シニアユニバーシティは、現・元大学教授、専門分野で活躍された人等の講義が中心です。 内容は、例えば、歴史面(さいたまの歴史、邪馬台国は何処にあったか、養生訓を読む、等々)、健康面(高齢者の健康、薬と上手に付き合う法、介護について、歯と健康、等々)、社会面(環境問題と自然保護、食糧問題を考える、経済の動向とくらし、等々)のように、広範囲で知識として感心して聞くことも多い講義です。講義内容については、皆さんご承知のことと思いますので割愛します。 講義のほか東京証券取引所、県立近代美術館、盆栽美術館等の見学や三笑亭笑三の落語会を楽しみました。 講義のうち、貝原益軒(1630年生、1714年没・当時としては驚異的な長寿を全うした。)の養生訓については、今から300年以上前の476の 文章からなる人間の生きることに関わる作品とのことで、養生訓の一部分の講義でありましたが、なるほどとの私の勝手な思いで講義の一部分を転記します。 (養生訓・巻第一総論上・原文のまま以下同じ) 6 凡ての人、生れ付たる天年はおほくは長し。天年をみじかく生れ付たる人はまれなり。生れ付て元気さかんにして、身つよき人も、養生の術をしらず、朝夕元気をそこなひ、日夜精力をへらせば、生れ付たる其年をたもたずして、早世する人、世に多し。・・・・・ (巻第二総論下) 16 養生の道、多くいふ事を用ひず。只飲食をすくなくし、病をたすく  る物をくらはず、色欲をつゝしみ、精気をおしみ、怒哀憂思を過さず。  心を平にして気を和らげ、言をすくなくして無用の事をはぶき、風寒暑 湿の外邪をふせぎ、又、時々身をうごかし、歩行し、時ならずしてねぶり臥す事なく、食気をめぐらすべし。是養生の要なり。 (巻第三飲食上) 24 交友と同じく食する時、美饌にむかへば食過やすし。飲食十分に満足するは禍の基なり。花は半開に見、酒は微酔にのむといへるが如くすべし。興に乗じて戒を忘るべからず。慾を恣にすれば禍となる。楽の極まれるは悲の基なり。 (巻第八養老) 4 老後は、わかき時より月日の早き事、十ばいなれば、一日を十日とし、 十日を百日とし、一月を一年とし、喜楽して、あだに、日をくらすべからず。つねに時日をおしむべし。心しづかに、従容として余日を楽み、いかりなく、慾すくなくして、残軀をやしなふべし。老後一日も楽まずして、空しく過ごすはおしむべし。老後の一日、千金にあたるべし。人の子たる者、是を心にかけて思はざるべけんや。  大きな大腸ポリープ切除のこと ⑴ 20歳の頃に虫垂炎手術のため入院した以外には、大病もなく、健康そのものだったのですが、今年は、予想外の大腸ポリープの切除ということで、入院したのです。経過を書きます。 きっかけは、定期健康診断(人間ドック)でした。自宅近くの総合病院で、検査を受けた結果、便に潜血(+)あり、精密検査を受けることと告げられ、すこし離れた内視鏡検査の名手という噂の胃腸科個人病院で内視鏡検査を受けました(3月23日)。 ⑵ 結果は、ポリープ4個確認、うち1つは2センチを超える大きさ、しかも平板型でこの1つは、名手と噂される医師から当院では措置不能、他の病院でと。他の病院はどこかを相談、東大附属病院消化器外科(医師は、外科を念頭に置いていたようです。)を紹介してもらって手続きを終了しました。 ⑶ 東大附属病院消化器内科で内視鏡検査を受け、検査結果の患部の写真を見ながら説明を受けました(4月17日)。ポリープの状況は、前の個人専門医と変わらず。 ただし、問題の大型ポリープについては、がんの疑いあり。切除は不可欠で、検査(CT、レントゲン、血液、超音波、心電図)の実施と切除の方法の説明を受けました。 ⑷ ポリープ切除の方法は、直径2センチ以下の小さい場合は、外来内視鏡検査の際に切除することができるが、サイズの大きなものや難しい部位にあるもの、がんが強く疑われるものは、従来は外科的手術で腸管切除によっていたが、昨今では内視鏡的治療(内視鏡的粘膜下層剥離術)を考慮し、内視鏡的治療が難しいと思われる場合は、がんでなくても外科的な腸管切除することが行われている、とのことでした(内視鏡的治療は、数年前から健康保険治療の対象として行われるようになったようです。)。 ⑸ 私の場合は、直径約3センチであるが、内視鏡的治療が可能な範囲と判断している。施術中に外科的に腸管切除を要する場合には、手術に切り替えることを前提に治療に当たることでどうか(外科医師が対応できる体制を打合せ済。)と説明され、この方針で治療を受けることになりました。 ⑹ 治療は、入院して行われることになり、5月6日入院、5月8日施術の日程で行われ、施術は予定どおりの方法(大腸の粘膜層で腫瘍を内視鏡により剥離して切除)で成功裡に終了、その後は、回復度等経過診断、食事管理等で入院を継続し、経過良好で5月12日退院しました。 ⑺ 主治医から、5月26日に今回の治療全体の結果説明を受け、CT・血液等種々の検査結果、切除したポリープの組織検査の結果に異状はなく、施術後の状況等を総合的に判断して、完治したことを伝えられました。 年寄りの記憶の引き出しは、過去にウエイトが置かれ、現在のための記憶容量が乏しくなっていると言われます。少しでも引き出しの中身を入れ替えようと思ってはいるのですが、寄る年波には勝てそうにありません。時折、過去のことを回想文にして、その分の記憶の引き出しを新規にまわせばどうでしょうか。

退職後の自由気ままな楽しい生活(前島俊一) ゴルフ 現職時代は自由な時間も余裕もなく十分できなかったゴルフを退職して郷里に帰ってから本格的にやり始めた。私の帰郷を待っていてくれたかつての同僚や後輩たちと同じゴルフ場会員権を購入し「好天、好人物とのラウンドこそゴルフの醍醐味」と思い楽しんでいたが、スコアは一向に伸びず同僚たちとの差も縮まらずだんだん物足りなさを感じるようになった。長年ゴルフをやっている義兄に話してみたところ、義兄は、レッスンプロに習ったこともあるがさほど上手くなるものではなく今でも100を切るのがやっとだが、ゴルフによって友情を深め健康を保つことができ、今でも月に2回のゴルフが楽しみだと言っていた。 しかし私は今のスコアを少しでも良くしたいという思いが強く、初めて正式にゴルフの基本を習うことにした。上田市スポーツ教室のレディース・シニアゴルフの案内に、「ゴルフは生涯のスポーツとして最高!技術の向上はもちろん、ルールとマナーも大切です。ゴルフを始めようという方、始めたばかりの方、一緒に基本を学びましょう。」と紹介されているのを見て、これだと思い早速受講の申し込みをした。この教室は年に4回開かれ、一回のレッスン期間は9週間で、毎週水曜日の午前10時から12時まで、最後の週はコース研修を行う。受講者は、初心者もいれば長い期間やっていてもっと上達したい人など様々で、女性は主婦が主で男性は退職後間もない人が多く年齢も62~3歳がほとんどで70歳を超えているのは私だけだった。レッスンは5~6人に一人の先生がついて最初の20分ぐらいは先生が基本を教え、残りの時間はそれぞれのレベルに合わせて個人レッスンをしてくれる方法で行っている。 私は体が硬くすべての動きについて注意され、柔軟体操をもっとやったほうが良いと指導されている。何回も教室に通ううちに私に合った先生に出会うことができたのだが、その先生は、アマチュアの県大会で3回も優勝したという人で、「練習は、嘘をつかない」から毎日たとえ10分でも良いからクラブを振りなさい、クラブを振る所がなかったら柔軟体操をしなさいと言う。自身は、毎日3~4時間練習していたそうだ。私に対しての指導は、細かいことはいっぱいあるが「ボールをよく見て頭を動かさずクラブをゆっくり最後まで振りなさい」ということだった。女子プロの「イ・ボミ」のスイングが良いと! 楽しいので私はもう6回続けて参加している。こんなに長く教室に通っている人は2~3人しかいない。今では受講生12人で毎月1回例会を開き、たまには先生にも参加してもらってラウンドを楽しんでいるが、私のスコアがどの程度向上したかはご想像におまかせする。 ゴルフは、年齢、男女、先輩、後輩や社会的地位に関係なくプレーができる素晴らしいスポーツなので、年齢じゃない絶頂期はこれから来ると思って続けていきたい。余り欲張らず3オン狙いでスコアをまとめることをモットーに、ラウンド後はよく眠れる最高の健康法でもあるゴルフを楽しみたいと思っている。 家庭菜園や花づくり 長年留守にしていた私の実家は農家で田畑があり、一昨年までは米作りは弟に頼み、畑や休耕田はシルバー人材センターに頼んで草刈をしてもらっていたが、今は畑いっぱいに野菜を作り米作りも弟と協力してやっている。私は、土いじりが好きで公証人当時も役場の近くに畑を借りて野菜を作り、道路際には花を植えたりしていた。通りかかった人に花を褒められたり、野菜作りのアドバイスを受けたりするのも楽しみだった。 実家に帰ってからは春先のビオラから始まって、夏から秋にかけては朝顔、ぺチュニア、百日草など様々な草花を絶やすことなく花壇やプランター、フェンスにひっかけた鉢などに咲かせている。 特に力を入れているのはビオラで、種から育てている。まず毎年8月末に10種類の種を2袋ずつ購入し、平鉢ひとつに1袋(40粒)の種をピンセットで蒔き、その上に湿らせた新聞紙をかぶせて、雨の当たらない涼しい場所に置く。以後、受け皿には水を切らさないように補給し、発芽したところで新聞紙をはずし日当たりの良い場所に移す。双葉が出そろったら、受け皿の腰水を薄い液肥に変え本葉が2~3枚になるまで続ける。大変なのは、小さな苗を傷めないように注意して平鉢からビニールポットに植えかえる作業だ。移植後1か月、本葉が6~8枚になるのを待って花壇や鉢に定植する。このようにしてビオラの苗を6~700(発芽率80%)作りそのうち500位を、隣近所、親戚、友人や母がお世話になっているデイサービスセンターなどに配り喜ばれている。3月から6月ごろにかけてあちこちでそのビオラが咲いているのを見るのが楽しみで、数年続けている。今も、皆が待っていてくれるのが励みで管理に神経を使いながら育てている。 野菜については、農協で主催している年7回(4月から10月)の「家庭菜園の楽しみ方」講座に参加しその時期の野菜の作り方を勉強している。畑をフル稼働し、美味しい野菜を作ることを目標に頑張っている。 なるべく沢山の種類を試したいと思い、今では38種類もの野菜を作るようになった。悩みは、畑も広いし種の量の都合もありどうしても1種類の野菜を沢山作ってしまうことで、なるべく新鮮なうちに親しい人などにあげるようにしているが、捨てざるを得ないときもある。自分で言うのもおかしいが講座に参加して教わったとおりに作っているせいか、私が作った野菜は隣近所の人が作ったものより立派なものが多いと自信を持っている。 野菜は人の足音を聞いて育つというが、朝起きてすぐ家の前の畑を見に行き、成長具合によって水や肥料をやったりすることも私の楽しみの一つだ。また、新鮮な旬の野菜や、疎抜きの葉物の美味しいこと、畑に残った葉物や根菜類を放っておくと薹が立ち春は菜の花畑のようになるが、その柔らかいところをかいてきてお浸しなどにするとこれも非常に美味しくて、農家ならではの喜びを感じる。 しかし、同じように種を蒔き管理をしても天候によっては上手くいかなかったり、種の蒔き時期や移植する時期が雨などで遅れたことによって上手くいかない場合があったりで、難しいことも多い。これからも、土づくりを基本に作付け計画、肥培管理をきちんとやり、取れた野菜の貯蔵や保存方法についても工夫していきたい。 自治会の仕事 田舎に帰ると今までご無沙汰していたせいかすぐ自治会の役員が回ってくる。私も公民館の副館長、青少年育成指導員の会長、人権同和の委員、老人会の役員等を仰せつかり慣れない仕事をやっているが、雑用が多すぎて忙しい。改善したほうが良いと感じることが色々あり、私と同じような考えの役員も多いことはわかっているが、帰ってきて間もない自分がそれを口に出すと嫌がられるのは確かなので1年間は我慢して何も言わないつもりだ。 先日公民館で「相続と遺言について」という題で1時間半の講演をやったところ、聞きに来てくれた人たちから、「長時間難しい話を聞いていると飽きるのではないかと思っていたが、実例を挙げてわかりやすく説明してくれたので時間も短く感じた」とお褒めの言葉をいただいた。これからも地域のためにお役にたつなら私の経験してきたことでできることは積極的にやりたいと思っている。

 

実 務 の 広 場

このページは、公証人等に参考になると思われる事例を紹介するものであり、意見にわたる個所は筆者の個人的見解です。

No.20 遺言書作成に当たって留意したこと(事例紹介)

はじめに 私が勤務していた公証役場では、1日平均約2件の遺言書を作成しており,「遺言」役場を自称していた。遺言書作成に当たっては、留意しなければならないことが数多くあるが、何といっても遺言書作成で最も悩まく、かつ、神経を使うのは遺言能力の問題である。この点に関して、どのような点に留意して作成してきたか、気がつくまま述べ、公証実務の参考に供したい。 1「遺言能力」 「遺言能力」は,一般的には,遺言の内容を理解して,遺言の結果を弁識し得るに足りる意思能力と解されている。具体的には、①遺言者の遺言書作成当時の心身の状況、②遺言の内容(簡単か複雑か)、③遺言作成の動機(遺言内容が不自然でないか)、④署名代筆がされた場合はその事情、⑤医者の証明書の有無等が問題となろう。 上記②は、例えば、介護をしている妻に全財産を相続させるというような比較的単純で分かりやすい遺言の内容であれば,さほど高い判断能力は必要ないであろう。これに対して、多数の不動産や金融資産があり、これら財産を多数の相続人に分配したり,遺留分に配慮したり、というような複雑な内容の遺言を作成する場合は、ある程度高い遺言能力が必要であろう。 上記③は、例えば、長年連れ添い、看護や介護をしている妻に全財産を相続させる旨の遺言、あるいは仕事を辞めて、同居し、介護をしている娘に全財産を相続させる旨の遺言であれば、遺言内容は自然である。これに対して、介護施設に父親が入居し、長女が父親の面倒をみているにもかかわらず、東京の妻の実家敷地内に自宅を建築して疎遠であった長男が帰郷した際に、長男に全財産を相続させる旨の遺言を作成することは、不自然な印象を免れない。 遺言の作成依頼が誰からか―遺言者本人からか、遺言者の親族からか、それとも受遺者からか―も問題である。すなわち、遺言者自身は,自らが遺言をしたいのか、それとも遺言をさせられているのか、である。  遺言書作成の動機・目的 遺言能力との関係で重要なのは、遺言をするに至った動機・目的である。人間の死亡率は100%であることは理論的には分かっているが、できれば避けたい、あるいは先延ばししたいのが人情である。遺言は、「自分の死」を前提とするものであるから、積極的にする人は稀である。遺言は、いつかはしなければならない、あるいは遺言をした方がいいことは分かっている。しかし、「今、死亡するわけではない」から、「遺言はもっと齢を重ねてから……」と思うのが通常である。その証拠に、常日頃、嘱託者への相談や講演で、遺言作成の重要性について熱心に説明し、「遺言はいつやるの、今でしょ!遺言をするなら公正証書遺言が安全確実」と述べている公証人本人が遺言書を作成しているのは稀であろう。 遺言書作成の具体的行動に出るのは、相続人から強制される場合を除いて、①この人に遺産をやりたい(積極的動機)、②あの子には絶対に遺産をやりたくない(消極的動機)、③会社経営者が事業承継者に株式を相続させる(事業承継動機)、④遺産整理を迅速・簡便化しておきたい(遺産整理動機)などが一般的であろう。 積極的動機としては、①看護、介護をしてくれている親族に自分の遺産を譲りたい、②お墓を守ってくれる子ども(祭祀承継者)に遺産を譲りたい、③妻が死亡した後、老後の面倒をみてくれている事実上の妻に自分が死んだ後の生活ができるようにしておきたい……等がある。 消極的動機としては、①暴力を振るう息子にこれまでお金の無心の等に悩まされた、②娘の夫に浪費性があり、娘に遺産が入っても夫が浪費してしまう、③息子の嫁が可愛い孫に会わせない、④養子が、縁組みした途端冷たくなった……等がある。 3 遺言書作成に関する対応実例 ⑴ 遺言者の真意 「孫は可愛い」「可愛い孫と会うのが一番の楽しみ」というおばあちゃん。ところが、息子はいつも嫁の言いなりになっている → 息子の嫁は可愛い孫に会わせない → 可愛い孫に会わせない息子の嫁は憎い → 嫁が憎けりゃ息子も憎い……だから、息子には絶対に財産はやりたくない、と涙ながらに訴える事例は、意外と多い。 「じいちゃん、ばあちゃんにとって、孫はなぜ可愛いか」。それは、「じいちゃん、ばあちゃんは、可愛い時しか孫の相手をしていないからだ」、「孫が東京から来てくれた。とても嬉しかった。……デモ、だんだん疲れてきた。」、「孫が東京へ帰った。正直、ホットした。……お金が減って、疲れが溜まった。」、「孫が可愛いのは小学校まで。中学生になったら、じいちゃん、ばあちゃんはお小遣いをくれる人に過ぎない。そのうち、年金が下りた時期にしか会いに来なくなる……?」。 私は、一時的な感情で遺言をしたいというばあちゃんに対しては、このようなことを話しながら、「遺言はいつでも作成することができる。もう少し、ゆっくり考えて作りましょう」と申し上げている。 ⑵ 介護者 仕事を辞めて、親と同居し、介護をしている娘に全財産を相続させる旨の遺言をする事例は多い。しかし、体が不自由になったり、軽い認知症になっている老親を介護すると称して、長男が老親を自分の自宅に連れてきて、自己に有利な遺言を書かせる事例がある。そして、そのことを知った次男が、老親を自分の自宅に連れてきて、前の遺言を取り消して、次男に有利な遺言を書かせる事例がある。遺言を書かせるために老親の介護を装っているのである。 子どものいない人が、甥・姪、あるいは近所の友人が老後の面倒をみるとして、これらの者に財産を相続させる旨の遺言に併せて、財産管理契約及び任意後見契約を作成する事例がある。ところが、認知症が進み、遺言の取消ができなくなった時期を見計らったように、遺言者の面倒をみなくなる事例が見受けられた。 また、財産管理契約を締結することによって、介護者がお年寄りの財産を使って飲み食いをしたり、交通費等と称して多額の費用を請求する事例もあった。 ⑶ 養子縁組 子のいないお年寄りが、甥や姪との間で、老後の面倒やお墓を守ってもらうとして、養子縁組をする事例は多い。 ところが、養子縁組をした後は、これまで親切にしてくれていた甥や姪が、だんだん態度が冷たくなったり、寄りつかなくなったりする例がある。要するに遺産狙いの養子縁組である。 養子縁組は、一方的に離縁する方法はない。このため、このような養子には相続させなくするために遺言をする事例は、かなり散見された。 老後の面倒をみてもらう方法としては、養子縁組の方法のほかに、いやになったら、いつでも、一方的に破棄することができる遺言及び任意後見契約の方法がある旨を説明している。 ⑷ 事業承継 事業承継動機として、ロータリークラブ、ライオンズクラブ等会社経営者に対する講演で、次のように説明していた。 「あなたの会社で一番仕事ができる人は誰ですか?社長、あなたではないですか? 会社の中で社長よりも仕事ができる社員がいたら、その社員は独立してますよネ。社長も独立したのではないですか? あなたの会社の中で一番仕事ができる社長が、もし交通事故等で死亡したら、会社はどうなりますか? 会社は、あなた独りのものではないはずです。あなたの家族はもちろんのこと、社員もいるし、取引先もあります。 この『もしもこと』に備えるのが危機管理対策ではないですか。あなたの会社にとって、一番の危機管理対策は『社長のもしも』に備えることではないですか?」 そして、次のように説明を続ける。 「会社経営者で大事なことは、後継者を養成すること、そして、後継者に社長の株式を譲渡すること、です。 会社の業績が良く、株価が高く評価されている場合は、いつ、どのタイミングで、どの程度の株式を譲渡するかは、税理士と相談してください。 ただし、生前に社長の持株の全部を譲渡してしまうと、社長の老後資金が心配になります。生前は、社長が株式を保有し、株主として会社の経営を見守る方法もあります。 そのためには、遺言が必要です。そして、遺言は、公正証書遺言に限ります。私は、自分が公証人だから、営業行為として公正証書遺言を薦めているわけではありません。今、相続、遺言に関する本がブームです。どの本にも公正証書遺言が安全、確実と書いています。今日の私の話をきっかけに、奥さんと相談して、『もしも』に備える勉強をしてください。」 ⑸ 医師の診断書 自分が作成した遺言について、認知症が疑われ、遺言無効の裁判が提起されたらどのように対応したらいいか?この問題は、私の頭の中でいつも自問自答していた。 高齢者の遺言には診断書の提出を求めるべきではないか、診断書があれば、これを作成した医者は遺言無効の裁判で遺言能力はあったと証言することが期待できるのではないか、そうであれば、遺言無効の判決が出ても公証人の過失は否定されるのでないか……などと考えていたところ、地元新聞に、「認知症遺言トラブル」との見出で「遺言能力を証明するために診断書の保存が必要だ。必ず診断書の提出を求める公証人もいるが請求がなくても準備した方が良い」との記事があった。 これを契機に、高齢者の遺言作成には、原則として診断書の提出を求めることとした。 診断書の様式(別掲)を定め、管内の司法書士会、土地家屋調査士及び行政書士会の各支部に対して、協力要請文書(別掲)を出した。

公正証書遺言の作成について(お願い) 秋冷の候,貴会にはますますご盛栄のこととお喜び申し上げます。 公証事務につきまして格別のご理解とご協力を賜り厚く御礼申し上げます。 さて,認知症が疑われる者等が公正証書遺言を作成する場合には,公正証書遺言の更なる有効性を確保するとともに,遺言無効の争いの未然防止を図る(別添裁判例要旨参照)ため,原則として,医者の遺言能力に関する証明書(別添書式参照)を提出していただく取扱いとしましたので,ご協力方をお願いします。 なお,個別具体的案件の取扱いにつきましては,事前に公証役場にご相談下さい。 記 1 明治・大正生まれの者 2 認知症が疑われる者 3 自宅・病院・施設等で遺言をする者 4 自署ができない者

 

診 断 書(証 明 書) 住  所 氏  名 生年月日 傷 病 名 上記の者は,上記疾患にて治療中である。 上記の者は,精神的障害などはなく,意思表示が明確にでき,判断能力に問題は見られないことを証明する。 なお,自己の財産を単独で管理・処分する能力は十分にあると認められる。 平成  年  月  日 病院所在地 病 院 名 担当医師             ㊞  

 

当初、診断書提出に反発する司法書士等もいた。 これに対して、私は、「先生方が遺言の証人となっているので、遺言無効の裁判が提起された先生方が証人として証言することになる。その時に、遺言能力がある旨の診断書は有用ではないですか。」と説明をした。司法書士等の理解を得、高齢者の遺言に診断書を提出する取扱いはおおむね定着したと思っている。 司法書士から、「高齢者からの登記申請の意思確認に公証人の作った診断書を利用していいか」との問合せがあった。勿論OKである。 一般の依頼者からは、「診断書がないと遺言することができないのか」と質問が多かった。 これに対して、私は、「遺言が効力を生ずるのは、遺言者が死亡した後である。遺産争いは、遺言者死亡の後である。遺言無効の裁判が提起されるのは、更に先のことである。そして、遺言無効の裁判で争われるのは、遺言者が死亡した時や、裁判が提起された時のことではなく、遺言作成時に遺言能力があったか否かである。裁判が提起された時には遺言者はもうこの世にはいないのであるから、遺言作成時の遺言能力の有無は、誰も証明できない。その中で、遺言作成時に作成された、遺言者は遺言能力を有する旨の医者の証明書は、遺言者が、遺言作成時に、遺言能力を有する事実の有力な証拠になる。あなたは、醜い遺産争いが生じないために遺言するのでしょ?診断書があれば、裁判を起こしても無駄だと思う人もいるでしょう。診断書はこのためのものです。」と、説明している。 私が、診断書の様式を定めた理由は、①医師は多忙であるため診断書を作成する時間を軽減したいこと、②診断書の提出目的は遺言者の病名把握ではなく、遺言能力の有無であるので、このことを明確にした証明書が必要であること、③医師は、カルテは毎日書いているが、これは医師のメモであり、文章を書き慣れているとは限らないこと等からである。 ほとんどの医師は、この様式の診断書により、証明してくれた。 しかし、中には、「若干認知症が疑われるので、この様式の診断書では作成することはできない」と電話してくる医師がいる。 これに対して、私は、「この診断書の様式は多忙な先生のために、見本として作成したものです。先生の責任と判断で、この様式を修正したものでも、他の用紙を用いたものでも結構です。」と説明している。 また、「私は、このような内容の診断書は書かない」という医師もいる。かつて、医療過誤訴訟等の証人として裁判所に出廷し、弁護士から厳しい尋問を受けたためであろうか? これに対して、私は、「先生は、この患者さんを診察していますよネ。診察行為は医療契約ですから、患者さんは20歳以上の判断能力があるのでしょ?遺言能力は15歳ですけど?」などと、嫌みを言ったりしたこともあります。 診断書がない状態で、「公証人としては、遺言能力がないと思われるので、遺言書は作成できません」と説明すると、遺言書が作成できないという責任は公証人が負うことになる。嘱託拒否の説明責任(公証人法3条)が生ずる。 これに対して、遺言能力はない旨の診断書がでた場合は、「医者がノーと言っている以上、遺言書の作成は困難ですネ」と説明すると、多くの依頼者は、納得して遺言作成をあきらめてくれる。これにて一件落着である。アー良かった。これで今夜はぐっすり眠れる。 ところが、たまに、遺言能力はない旨の診断書の内容に納得しない依頼者がいる。 「先生、バァちゃんはしっかりしているんですよ。遺言は、バァちゃんが作ると言っているんです。先生、バァちゃんに会ってください」と主張する依頼者もいる。 そこで、私は、依頼者の陳述の趣旨に基づく遺言書(案)を作成し、遺言ができない場合でも中止手数料及び日当旅費が必要であることを説明した上で、遺言者のいる自宅や病院等に行く。この場合、証人に対して、遺言能力はない旨の診断書を見せて、遺言できない可能性が高いことを伝えた。 病床のバァちゃんに会って、遺言の話をすると、明確ではないが、自分の口から、○○が自分の老後の介護をしてくれいるので、財産を渡す旨を話すではないか。そこで、私は証人に対して、医師は遺言能力がない旨の診断書を出しているが、遺言書を作成可能か、作成した場合、証人として裁判所で証言できるか等を確認した。 遺言能力の問題は、医学上の問題ではなく、法律上の問題であり、最終的には裁判所で判断する事柄である。公証人は、遺言能力はない旨の診断書がある場合は、その存在を前提として、法律上の問題として、諸般の事情を勘案し、遺言能力の有無を判断した上で遺言書を作成すべきである、と判断した。 そして、証人と協議し、本件については、①遺言無効の裁判に備えて、遺言作成の経緯を明らかにした文書を作成すること、②遺言直後に作成文書であることを明らかにするため、この文書を登記所で確定日付の付与を受けておくこと、③この文書の保管を確実にするため、この原本を遺言書とともに公証人役場で保管すること、とした。 ⑹ 長谷川式簡易知能評価スケール 手軽に認知症の検査ができるものとして、長谷川式簡易知能評価スケールがある。私は、これをインターネットから入手して、窓口においた。認知症が疑われる遺言者の家族に、これで検査してみてくださいと言って、渡していた。「先生、大丈夫です」と言って遺言の依頼に来た者は、皆無であった。私は、遺言能力が疑われるお年寄りの遺言の作成依頼を断るのに利用した。 長谷川式簡易知能評価スケールとは、一般の高齢者から認知高齢者をスクリーニングするために作成されたものであり、記憶を中心とした高齢者の大まかな認知機能障害の有無をみるものである。検査項目としては、①自己の見当識(年齢を問う)、②時間に関する見当識(月、日、曜日、年)、③場所に関する見当識(ここはどこか)、④作業記憶(単語の直後再生、数字の逆唱)、⑤計算(計算及びおよび近時記憶の干渉課題)、⑥近時記憶(三単語の遅延再生)、⑦非言語性記銘(五品の視覚的記銘)、⑧前頭葉機能(野菜語想起)がある。 毎日のように遺言の相談を受け、大体同じような内容であるため、後日、遺言作成に来庁人の顔、氏名、相談内容をほとんど覚えていないのだった。物忘れを自覚するようになってきた。人様の心配をしている場合ではない……そんなことを心配していたある日、知人から、「新しい精神科の診療所ができたので、先生、プレオープンに行ってみませんか」と誘いをいただいた。 脳ドックを受けたら、なんと、長谷川式簡易知能評価スケールをやらされた。自信をもって臨んだら、引き算のテスト(上記⑤)で頭が真っ白になった。複雑な計算はエクセルを、簡単な計算は電卓を使用しており、暗算は全くしていない。買物は、カードかプリペイカードを利用しているし、公証人になってからは、釣銭用の小銭を用意するために、いつも一万円札を出してお釣りをもらっていた。暗算ができなくなっていたのであった。 診察の際に、「私の認知症は大丈夫ですか?」と聞いた。医師曰く、「大丈夫ですヨ、新井先生。年相応です」ダト。どういう意味なのか……?? その後は、長谷川式簡易知能評価スケールは利用していない。これは、記憶力テストであって、遺言能力とは直接関係ない。 (新井克美)

 

No.21 第三者の債務につき会社とその代表取締役が共に連帯保証人となる場合、利益相反行為として株主総会又は取締役会の承認決議を要するか (質問箱より)

【質 問】 金銭消費貸借公正証書に関して、ご教示ください。 【事例】 貸主は、A個人。借主は株式会社B。債権額は1500万円。毎月100万円を15回の分割弁済。無利息。ただし、遅延損害金は21.5%。 連帯債務者として、B社の代表取締役B1のほかC株式会社及びその代表取締役C1が個人として連帯保証人になります。 【問題点】 C社及びその代表取締役C1がB社の債務の連帯保証人になることがC社の利益相反行為になり、株式会社の承認決議が必要となるかどうか疑問があります。 「公証証実務(解説と文例)」63頁に「第三者の債務につき会社とその代表取締役が共に連帯保証人となり、かつ、会社の物件を担保に供する行為については、昭和43年10月8日最判(民集22巻10号2172頁)の趣旨からして、利益相反行為と解すべき」とされています。 本事例では、会社の物件を担保に供することは内容とされていませんので、上記解説で「かつ、会社の物件を担保に供する」とされていることとの関係で疑問が生じます。 この場合、①会社の物件を担保に供する場合に限って、利益相反となり、本事例は当たらないと考えるべきでしょうか? ②それとも、そもそも連帯保証債務はC社とC1のどちらに請求してもよいことから、潜在的にC社とC1の利益とが相反しているとみて、株主総会の承認決議を要求すべきなのでしょうか? 【質問箱委員会回答】 会社法第356条第1項3号で、「取締役以外の者との間において株式会社と取締役との利益が相反する取引をしようとするとき」は、当該株式会社の株主総会あるいは取締役会の承認決議を要するとされています。C会社(代表取締役C1)と代表取締役 C1が共にB社の債務(Aに対する1500万円の債務)につき連帯保証する行為は、利益相反行為に該当する行為となるのか、それだけでは利益相反行為とはいえず、C会社の不動産を担保に提供するような場合に限って利益相反行為といえるかどうかが問題となった事案です。 b社の債務について、C社の物件を担保に提供するようなことはしないで、単に連帯保証人になる場合について考えてみると、B社が債務を履行できなかったときは、BC社、Cは、各々がAに対して未履行分全額を履行する責めを負うことになり、C社が履行すれば、BCは履行を免れる、またCが履行すればBC社は履行を免れることになり、利益相反する関係にあるといえそうですが、連帯債務者間では求償できるので、理論的には、履行の負担は平等となります。このような関係であっても利益相反関係にあるとみるか、それだけでは利益相反関係にあるとはいえず、Cの不動産を担保に提供するような場合に限って、利益相反関係にあるということになるのでしょうか。 この点については、意見が分かれましたので、両説とその根拠を説明しておきます。 甲説 C社、Cが連帯保証人になるだけでは利益相反行為に該当しない。C社が連帯保証人になるほかに、C社の物件を担保に提供するような場合には利益相反行為に該当し、C社の株主総会決議が必要となる。 (理由) 平成4年12月10日最高裁判所第一小法廷判決(注1)は、親権者が未成年者の所有する物件を担保に提供する案件についてですが、「親権者に子を代理する権限を授与した法の趣旨に著しく反すると認められる特段の事情が存しない限り、親権者による代理権の濫用に当たると解することはできないものというべきである。」と判示し、代理権限の有無につき形式的に判断することで差し支えないとの見解(以下、便宜「形式判断説」という。)に立った上、場合によっては、民法93条ただし書きを使って現実的な救済を図るという考え方になっています。 したがって、形式的判断説に立つ限り、C会社とその代表取締役C1が、ともにB会社の連帯保証人になることは、形式的に利害が対立する行為ではないので、C会社とC1との利益相反行為には該当しないということになります。 ただし、C1が個人的に連帯保証人になる必要があるときに、C1の負担を軽減する目的で、本来関係ないC会社も連帯保証人にした場合、その事情をAが知っていると、C会社の連帯保証行為の効力が生じないということがあります。 しかしながら、公証人としては、特にそのようなことを疑わせる特別の事情がない限り、形式的判断によって、利益相反行為には該当しないものとして処理することで問題ないと考えます。 物上保証を伴う場合については、昭和43年10月8日最高裁判所第三小法廷判決(注2)は、形式的判断説からも、このような物上保証をすることが、利益相反行為に該当するという判断を示したものです。御指摘の「公証実務」63ページの⑥の事例は、考え方としては、①の事例と同様のものと考えられます。 したがって、所問のような場合、物上保証を伴わなければ利益相反には該当しませんが、C会社の所有物件を担保に供するということになると、利益相反行為に該当するということになります。 乙説 C社、C1が連帯保証人になることは利益相反行為に該当する。従って、C社の株主総会決議が必要となる。連帯保証人になるほかに、C社の物件を担保に提供するか否かで結論は異ならない。 (理由)C社の代表取締役であるC1がC社を代表してB社の債務につき連帯保証する行為は、会社の代表取締役としての行為であり、そのこと自体は、何ら問題の無い行為である。 平成4年12月10日最高裁判所第一小法廷判決は、親権者と子が利益相反行為に当たらない例について、親権者としての代理権の在り方を判断したものですが、「代理する権限を授与した法の趣旨に著しく反すると認められる特段の事情が存しない限り、代理権の濫用に当たると解することはできない」と述べられているように、付与された権限のとおり行使することには何ら問題がないとするもので、そのことと、当該行為が利害の対立する行為であるかどうかは、別途判断が必要と思われます。 そこで、C社、Cの利害が対立する関係にあるかどうかですが、C社が全額債務を履行したとしても、求償することによって最終的には、B1、C社、C1の負担は平等となるので、そのことからすれば、利害の対立する関係にはならず、利益相反行為とはならないと考えられます。 この点について、昭和43年10月8日最高裁判所第三小法廷判決は、「第三者の金銭債務について、親権者がみずから連帯保証をするとともに、子の代理人として、同一債務について連帯保証をし、かつ、親権者と子が共有する不動産について抵当権を設定するなどの判示事実関係のもとでは、子のためにされた連帯保証債務負担行為および抵当権設定行為は、民法第826条にいう利益相反行為にあたる。」と判示し、その中で「債権者が抵当権の実行を選択するときは、本件不動産における子らの持分の競売代金が弁済に充当される限度において親権者の責任が軽減され、その意味で親権者が子らの不利益において利益を受け、また、債権者が親権者に対する保証責任の追究を選択して、親権者から弁済を受けるときは、親権者と子らとの間の求償関係および子の持分の上の抵当権について親権者による代位の問題が生ずる等のことが、前記連帯保証ならびに抵当権設定行為自体の外形からも当然予想される。」として、具体的に不利益が生じる場合を指摘しています。 担保の問題がない本件には、このような問題が生じないので、C社に不利益はないということになりそうですが、C1が自ら連帯保証人となりながら、C社の代表取締役としてC社も連帯保証人とする行為は、結果的に、C1自身の履行の負担を軽減させることにつながり、このような場合であっても、利害が対立する関係にないといえるか疑問です。 C社が連帯保証しているところに、C1も連帯保証する場合は、C社とC1は利害が対立することになりますが、会社にとって利益になりますので、会社法第356条に定める利益相反第1項の問題は生じません。逆に、C1が連帯保証しているところに、C社も連帯保証させる行為は、C1との関係では利益が相反することになり、この場合は、明らかに「株式会社と取締役との利益が相反する取引」(会356Ⅰ③)に該当することになります。 本件は、同時に連帯保証する場合ですが、C社が連帯保証することによって、結果的にはC1が利することになりますので、利益相反行為に該当すると考えるのが相当と思われます。 「公証証実務(解説と文例)」63頁の説明は、昭和43年10月8日最高裁判所の判例をもとに説明したものですが、「会社の物件を担保に供する行為」がない場合までも、排除することまで意図したものではないと考えます。 以上のことから、B社の債務について、C社及びC1が同時に連帯保証する場合は、C社が担保提供していなくても、C社とC1の利害が対立することになり、利益相反行為となり、C社の承認決議が必要と考えます。 なお、この事例については、公証117号211ページ、公証137号221ページに、日本公証人連合会の検討結果が掲載されていますので、参考に願います。 (注1) 平成4年12月10日最高裁判所第一小法廷判決 未成年者の所有する不動産について、親権者が根抵当権設定契約を締結した事案について、「一 親権者が子を代理する権限を濫用して法律行為をした場合において、その行為の相手方が権限濫用の事実を知り又は知り得べかりしときは、民法九三条ただし書の規定の類推適用により、その行為の効果は子には及ばない。二 親権者が子を代理してその所有する不動産を第三者の債務の担保に供する行為は、親権者に子を代理する権限を授与した法の趣旨に著しく反すると認められる特段の事情が存しない限り、代理権の濫用には当たらない。」判示した。 (注2) 昭和43.10.8最高裁判所第三小法廷判決 親権者が、みずからは共有者の一員として、また、未成年者の親権者として、債務について各連帯保証契約を締結するとともに、同一債務を担保するため、いわゆる物上保証として本件不動産全部について抵当権を設定する等の事案について、「第三者の金銭債務について、親権者がみずから連帯保証をするとともに、子の代理人として、同一債務について連帯保証をし、かつ、親権者と子が共有する不動産について抵当権を設定するなどの判示事実関係のもとでは、子のためにされた連帯保証債務負担行為および抵当権設定行為は、民法第826条にいう利益相反行為にあたる。」と判示した。

 

No.22 買戻特約付土地売買契約公正証書の手数料について(質問箱より)                      

【質 問】 1 事例 土地所有者甲が、乙に対し、買戻特約付売買を行う。 売買代金は金4,000万円(ただし、売買日翌日から2年間、当該土地を甲が乙から賃借し、その借料金800万円を相殺するので、実際の支払額は金3,200万円) 2年後に甲は乙に対し、金4,000万円を支払って買い戻すことができる。 賃貸借については、「年月日~年月日の間賃借する、借料は金○○円」と記載する。 2 照会内容 この場合の手数料の積算は、売買契約1件(4,000万円×2)、特約1件(4,000万円×2)、賃貸借1件(800万円)として積算して差し支えないか。 【質問箱委員会回答】 1 先ず、買戻特約付売買ですが、民法第579条に「不動産の売主は、売買契約と同時にした買戻しの特約により、買主が支払った代金及び契約の費用を返還して、売買の解除をすることができる。」と明記されているとおり、売主甲が一定期間内当該売買契約を法定の要件(民法第579条から第585条)に従って解除する権利(単独で契約関係を遡及的に消滅させる権利)を留保する特約(買戻特約)が付された売買契約が締結されるのであって、甲から乙へ、乙から甲へという二つの売買契約が締結されるわけではありません。 また、解除権留保の特約は、売買契約とは別個の独立した契約というものではなく、不動産売買契約とともになされる境界標識設置特約、債務不履行による損害賠償特約、危険負担特約など(昭和40年7月21日民事甲1912号民事局長回答。公証事務先例集497ページ参照)と同様に、「従たる法律行為」ということになります。 したがって、買戻特約付売買契約は1行為(双務契約ですから、4,000万円×2)として手数料を積算するのが相当と考えます(公証人手数料令第23条第1項)。 なお、売買代金の一部が相殺され、実際の支払額が3,200万円ということですが、売買代金の一部の支払方法として相殺(相殺契約も「従たる法律行為」)されるものですから、売買代金は4,000万円として積算することになります。 2 次に、賃貸借契約ですが、これは売買契約とは別個の契約で、従たる法律行為とは言えませんから、契約期間(2年間)の賃料総額が800万円ということであれば、「800万円×2」(双務契約ですから×2となります。)として手数料を積算することになります。 したがって、賃貸借契約も買戻特約付売買契約と同じ公正証書で作成する場合は、売買契約1行為(4,000万円×2)、賃貸借契約1行為(800万円×2)として積算した手数料を合算することになります。 ただし、本件土地が建物の所有を目的として賃貸される場合は、借地借家法の適用を受けることになり、契約期間は最低30年(強行規定である借地借家法第3条)となりますから、その場合の賃貸借契約の手数料は、2年後に買戻しが予定されているとしても、10年分(1年間の賃料額が400万円として、4,000万円×2)で積算することになります。 なお、賃貸借契約、特に借地借家法の適用を受ける場合の賃貸借契約は、買戻特約付売買契約とは別の公正証書にしておくことが望ましいと思いますが、嘱託人の意向により、一つの公正証書で作成することも、禁じられているということではありません。

 

No.23 旧借地法が適用される建物所有を目的とする土地賃貸借契約(普通建物で20年)の更新契約において「賃借人の死亡により賃貸借契約を終了する」旨の条項を加えること及び当該建物を賃貸人に遺贈することの可否(質問箱より)                      

【質 問】 土地賃貸借契約及び遺言公正証書に関するものです。 1 土地賃貸借契約 司法書士を仲介者とする賃貸人A、賃借人Bの間の建物所有を目的とする土地賃貸借契約(普通建物で20年)の更新です。昭和50年代に最初の土地賃貸借契約をしているものの2回目の更新で、旧借地法の適用になります。 次の事情から、今回の更新で「賃借人の死亡により賃貸借契約を終了する」旨の条項を加えたいとの要望がありました。 (事情) ・Bには、配偶者・卑属がおらず、推定相続人は兄弟姉妹のみ ・建物は築40年以上で、将来的に相続を希望する者はいない。 ・AB間の話し合いでB死亡後はAが取り壊す合意がある。 【問題点】 上記特約により賃借人の死亡を終了原因とすることが旧法第11条の「借地権者に不利なもの」に該当する可能性があると考えられます。「基本法コンメンタール借地借家法」169頁には「存続期間が有効に約定された場合には、借地権は、原則として約定期間の満了によってのみ消滅する。したがって、約定期間の満了以外の事由で消滅する(用法等違反の場合は別として)その効力を有しない」との記述があり、賃借人の死亡は消滅事由にできないように読めますが、文献等に賃借人の死亡を終了事由とすることに関する直接的な記述は見つかりませんでした。類似の事例等ありましたらご教示いただければ幸いです。 2 遺言公正証書 【事例】 1と併せて、上記Bから遺言公正証書の作成依頼がありました。内容は、「1の建物を上記A(土地賃貸人)に遺贈する」とのものであり、1の建物以外にはほとんど財産はないとのことです。 【問題点】 本人の能力と真意を確認する必要がありますが、仮に真意だとすると、遺言自由の原則からこのような遺言も可能となりそうです。しかし、上記1と併せてこのような遺言することは、旧借地法11条の趣旨からしていかがなものかと考えられるところです。 【質問箱委員会回答】 建物所有を目的とする土地賃貸借契約について、現行では借地借家法が適用になりますが、昭和50年代に最初の土地賃貸借契約をしている更新に関する本件については、旧借地法第5条で定める「当事者が契約を更新する場合においては借地権の存続期間は更新のときより起算し、20年とする。」旨の規定が適用になります。これに反し、これより短期間の契約を締結することは、一般的には、旧借地法第11条で「借地権者に不利なものはこれを定めざるものとみなす。」に該当し、無効になると解されています。 ところで、当事者間で、「賃借人の死亡により賃貸借契約を終了する。」旨の特約を結ぶことは、旧借地法第11条で定める「借地権者にとって不利なもの」に該当し、このような特約は、無効となるかどうかが問題となったものですが、この特約は、借地契約について借地権者の死亡という、いつ時期が到来するかが不確定な期限を設定し、その期限到来により借地契約を解約することを内容とするので、いわゆる「賃借人一代限りの特約」といわれ、この特約の法的性質は、不確定期限を付した合意解除契約、一般的には、「不確定期限付合意解約」と呼ばれています。 この特約は、借地契約後20年未満で賃借人が亡くなった場合にはその時点で賃貸借契約の期間が満了するという特約ですので、借地権の更新後の存続期間を最低でも20年とする旧借地法第5条の規定に反することになります。このような考え方に立ち、このような特約は、許されないとの考えも成り立ちえます。 しかし、この点について、最高裁第三小法廷昭和44年5月20日判決(民集23巻6号974頁、判例時報559号42頁、判例タイムズ236号117頁、法曹時報22巻4号71頁、民商法雑誌62巻3号88頁)は、「従来存続している土地賃貸借につき一定の期限を設定し、その到来により賃貸借契約を解約するという期限附合意解約は、借地法の適用がある土地賃貸借の場合においても、右合意に際し貸借人が真実土地賃貸借を解約する意思を有していると認めるに足りる合理的客観的理由があり、しかも他に右合意を不当とする事情の認められないかぎり許されないものではなく、借地法11条に該当するものではないと解すべきである」と判示しています。 そこで、賃借人Bの死亡を不確定期限とする解約合意の特約ができるかどうかということについては、最高裁判例が示している要件、すなわち、このような特約が、⑴賃借人が真実解約の意思を有していると認めるに足りる合理的客観的理由があること、加えて⑵他に右合意を不当とする事情の認められないこと、という要件を具備しているかどうかにより判断することとなります。 当事者の事情(①Bには、配偶者・卑属がおらず、推定相続人は兄弟姉妹。②建物は築40年以上で、将来的に相続を希望する者はいない。③賃貸人AとB間の話し合いでB死亡後はAが取り壊す合意がある。)を踏まえると、賃借人Bについても特約を締結しておきたいとの思いであることが伺え、また賃貸人Aが優越的地位を利用して借地法の適用を回避する目的でないことも理解でき、前記事情を覆すような事情も伺えないところから、⑴の要件及び⑵の要件を満たしているものと思われますので、このような不確定期限を付した合意解除を内容とする契約は差し使えないものと考えます。 なお、参考までに、特約条項を加入した事情を記録に留めておかれるとよいと思います。 2 遺言公正証書について Bの遺言能力に問題なく、その内容がBの真意であれば、自己の財産の一部である借地権を、賃貸人に遺贈する旨の遺言をすることは、何ら問題はないものと思われます。兄弟姉妹だけが法定の相続人ということであれば、遺留分もありませんから、後日問題となることもないと考えます。 (参考) 建物の賃貸借については、高齢者が安心して生活できる居住環境を実現する趣旨で制定された『高齢者の居住の安定確保に関する法律』により、一定の要件を満たした場合のみ、借地借家法30条の特例として、終身建物賃貸借契約を締結することが認められています。ただし、終身建物賃貸借事業者としての都道府県知事の認可、一定の基準を満たしたバリアフリー住宅であること、60歳以上の賃借人に対し終身にわたって賃貸するものであること等の条件が必要です。

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