民事法情報研究会だよりNo.29(平成29年10月)

天高く馬肥ゆる秋、会員の皆様におかれましてはますますご清祥のこととお喜び申し上げます。
さて、本年度の当研究会の後期セミナーは、12月9日に開催を予定しておりますが、講師には東京大学名誉教授の内田貴氏(民事法務協会会長)に再度お願いしております。講演テーマは未定ですが、好評だった前回(27年度後期セミナー)の講演後の研究成果等についてお話を伺うことができるものと思います。セミナーの開催通知につきましては、11月までには会員の皆様にお送りいたしますので、よろしくお願いいたします。(NN)

画一化と多様性(ダイバーシティ)(理事 中垣治夫)

CDラジカセという商品があります。電器屋に行くと幾多のメーカーから様々な製品が販売されており、所狭しと並べてあります。このCDラジカセ一つ取ってもおそらく数百からの種類があるに違いありません。SDカード対応の有無、ハイレゾ対応の有無、大きいのから小さいのまで、いろんな色があり実にカラフルです。買い手はどれを選ぼうか、長い時間を掛けなければなりません。
多くの人々の沢山のニーズに応えるため、こんなに種類があるのだとは思うのですが、よくよく考えてみると、CDという商品にも一定の規格があるのに気が付きます。どんなに大きな製品でも、またどんなに小さなものでも使用するCDは皆同じ規格なのです。数百という種類の製品が開発されていますが、全て同じ規格の枠内で開発されているのです。そうでなければ商品としての価値が全くなくなってしまいます。確かに、製品開発時に規格を作ることは便利であるし、必要なことでしょう。生産効率も上がるし、コストも低減できます。故障した時だって簡単に修理できるでしょう。さらに、消費者にとっても皆が同じCDを使えるという、これほど有り難いことはありません。
確かに製品作りのとき、規格の枠内で設計するのは必要なことでしょう。生産性を上げ、コストを下げ、数多く購入してもらうということが大切です。したがって、今日では、規格品は一般的ですし(スーパーでは、野菜にも規格があります。)、それゆえ規格作りで各国・各社が熾(し)烈な競争をし、規格が策定されるとその枠内での開発競争にしのぎを削ることになります。
ところで、今日の日本の社会は人間にまで、この規格を当てはめようとしているように思えてなりません。教育の画一化はその典型的な例の一つと考えます。私たちの学生の頃を含め長い間当然と考えられていた「詰め込み教育」→私たちの子供の世代になると、過度の受験競争が、いじめ、不登校等を誘発しているとの批判から生まれた「ゆとり教育」→さらに、私たちの孫の世代になると、ゆとりの持たせすぎや学力低下などの批判から「ゆとり教育からの転換」など、子供たちが皆、ひとつの枠内で教育され、競争し、しのぎを削っているのです。優秀な子というのは規格の中で優秀なのであって、規格を外れたらそれは社会のはみ出し者になるというリスクがあります。そういう環境は、異質なものを嫌う社会をつくります。身体障害者を排除し、落ちこぼれを切り捨て、老人を疎ましく思い、苦しむ者が横にいても自分と関係がなければ無視する、というそんな社会を作ってしまってはいないでしょうか。
今、日本を始め世界中が異質を嫌う社会をますます作りあげているような気がしてなりません。シリア内戦、アメリカンファースト、白人至上主義、果ては北朝鮮のミサイル問題まで、世界中が異質を嫌う社会、異質を排斥する社会を長い期間をかけて作りあげてきた結果が、今になって顕在化しているのです。ところで、近時、マネッジメントの世界を中心に、多様性(ダイバーシティ)が叫ばれるようになりました。異質を好きになることは困難であるにしても、少なくとも排斥はしない、嫌いではない、普通に存在を認め合う社会の到来が期待できそうです。孫たちが活躍する時代には、そのような教育が徹底され、異質を排斥しないことが普通の社会になっていることを望むばかりです。

今 日 こ の 頃

このページには、会員の近況を伝える投稿記事等を掲載します。

今日この頃(鈴木健一)

これまでは、本紙に大きな期待を抱いていたのに何らの貢献もせずに、ただ徒に馬齢を重ねるのみで、現職その他の方々の活動状況を垣間見ているだけだった。何か書くように要請を受けながら、言を左右にして徒にその任を免れてきた。本紙が会員の方々の日常におけるたゆみない努力により間もなく30号を超えるところまで実績を重ね、多くの先輩同僚の道しるべとして大きな存在に発展していることに畏敬の念を感じているところである。
私が公証人就任の折に感じたことは、公証制度は多くの市民の日常生活に役立ち定着していて不可欠の制度として重きをなしている、その担い手として任命されるのであるから、不断の努力によって維持していかなければならないということであった。今日の民主主義社会においてどのような社会事象が発生しようと、この崇高な理念に基づく制度を支え、市民社会に広く普及させ、福祉の向上に寄与していかなければならないということである。そのためにこの有用な制度の担い手として将来にわたって発展させていかねばならない。
とは言え、人生の大半を終え、現在身心が今日の会員諸氏のように活発に動かない。最近も経験したことであるが、ある会合に出席するため会場近くの私鉄の駅を降りて十数歩歩いたところで、道を誤ったかなかなか目的の会場に着かない。途中で通行人に尋ねてようやく見覚えのある会場にたどり着いた。ところが私が訪ねた場所は、翌週に予定されているとのこと、止むなく引き返した。原因は私の記憶誤り。これだけは小事であるが、会や会員諸氏にどれほどの迷惑をかけたか、反省することしきりである。
今後も各種会合にできるだけ出席させていただき、各位の活動ぶりを拝聴したいと思っているが、若い会員諸氏のように活発に動けない。会合で皆さんの御高説を聴くことは大いに楽しみあり、期待もしている。ただ私は受け取るだけで、与えるものは殆どない。市井の公証人の良き理解者と思っていただきたい。

新米公証人として(芳見孝行)

本年7月1日に公証人に任命され、2か月半が経過しました。
東日本大震災の被災地でもある岩手県沿岸の公証役場で、被災者の皆様に寄り添いながら、どれだけ貢献できるのか毎日奮闘しております。
○アパート探し
3月に宮古市内のアパートを探すべく、ネットで調査したところ、東日本大震災の復興工事で県外からの工事業者が多くアパート事情が非常に悪いことが分かった。不動産業者を探し、電話で訪ねてみたところ、希望に添う物件はおろか、貸出予定のアパートが全くなかった。
役場事務所の賃貸人は、建築・建設業を営んでいる陸中建設(株)であったため、事情を話したところ、運良く1LDKの物件が見つかり、4月中旬にトントン拍子で仮契約まで済ませ、安堵していた。
先輩から、公証人任命後は休めなくなるから、公証人任命前に家族旅行をした方が良いといわれ、4月下旬に妻との沖縄旅行を計画済みであった。福島県二本松市の自宅から仙台空港へ車で向かった。まもなく空港に着く頃に、私の携帯電話が鳴り、運転していたため妻が対応した。内容は、「アパートの住人は、復興工事が伸びたため、退去しない」とのことで、振り出しに戻ってしまった。ルンルン気分の沖縄旅行が暗い状況に・・・・?
最悪、ホテル暮らしか寝袋持参で宮古市内に住むしかないかと考えたが、沖縄旅行後、手当たり次第に不動産業者に電話し、なんとか見つかり、5月下旬に契約を済ませ、6月中旬に入居した。
法務局退職後の2か月は、公証業務の勉強も頑張らなくてはいけない時期であったが、なんとなく気分が優れない日々を過ごしていた。
○はんこスーパー宮古店
6月に公証業務に必要な印判を注文した。店は,きれいな新しい建物で、東日本大震災の津波で店が流され、最近新築したことが分かる建物であった。
注文した印判を受け取りに行き、店主と津波の話をしていたところ、実は昨年8月の台風10号でこの店の1階部分が全部浸水したとのこと。下閉伊郡岩泉町の老人福祉施設が川の氾濫で流され、入居者全員が死亡したとのTV報道は有名であったが、宮古市内も閉伊川の氾濫で甚大な被害を受けていた。
店主は、「泣きっ面に蜂」ではないが、どこに怒りをぶつけて良いか分からないと言ってた。
宮古地方は、東日本大震災の津波と台風10号の被害状況を十分承知していないと、嘱託人の心の内が分からないことになることから、遺言書作成時の説明には気を遣っているところである。
○神棚と観葉植物
法務局在職時、退職までの14年間は単身赴任生活であった。
7月から書記(妻)と同居し、公証業務の間も一緒にいる時間が多くなり、どのように過ごすか少し悩むものである。
任命当初の7月は、嘱託事件が少なく(前任公証人の6月は普段の倍くらいの嘱託件数であった反動か?)、一日に電話が一度も鳴らない日が続き、書記に公証役場に電話させ、電話回線に異常がないことを確認することもあった。
宮古公証役場の入居先は、元々は農協関連の3階建のJAビルであったが、陸中建設(株)がビルを買い取り、陸中ビルとして現在に至っている。
前任公証人が陸中建設(株)社長の遺言公正証書を作成したときに、陸中ビルに空部屋があり、公証役場が入居してもらえば、地元からも信頼の置けるビルになるから入居してはとの話があり、入居が決まったと聞いていた。2階に、陸中建設(株)の本社、ひまわり弁護士事務所と公証役場とが仕切られて事務室ができている。
役場事務室内には、2.5メートル幅のケヤキ造りの立派な神棚がある。公証役場の事務室には似合わないものである。どうやら、JAビル時代に設置されたものであるが、前任公証人は何も飾らずほこりをかぶっていた。
早速、書記と共に、宮古市内の「横山八幡宮」と釜石市内の「釜石大観音」にお参りに行き、御札を神棚に飾ることにした。さらに、書記は、福島県二本松市の自宅にあったケヤキ造りの30センチほどの恵比寿様と大黒様を持参し、神棚に飾っている。
書記は、観葉植物が趣味で、冬場になると二本松市の自宅は、観葉植物の保護のため、廊下や部屋が占領されていた。
役場事務所の環境は、観葉植物に最良であるらしく、8月になると自宅から「君子蘭」、「モンステラ」、「オリヅルラン」、「コーヒーの木」、「サンスベリー」、「セローム」、「ストレチア」、「ポトス」など10数鉢運び込まれている。
その中にひっそりと「金のなる木」も一鉢並んでいる。
○トップダウン
嘱託人の相談を受けると、公証役場は「何をやっているところか分からなかった」、「公証役場の場所が分からない」、「相談は有料だと思っていた」などの声が聞こえてくる。また、地元市町村広報誌を見て相談に来る人が多いことも分かった。
前任公証人からは、宮古市の遺言件数が少なく、土地柄があるのか釜石市は宮古市よりも人口は少ないが、遺言件数は多いと聞いていた。
7月末、宮古市役所の相談担当室長に挨拶に行くと「私は3年在職しているが、公証人と会うのも話すのも初めてである」旨、嫌み口調で話された。
宮古市の広報誌を見ると、公証業務の相談日が毎月第3火曜日の1日で、弁護士相談と同じ並びで掲載してある。これでは、「相談はその日以外はだめなのか?」、「相談は有料?」と受け取られかねないと感じた。
8月、沿岸の首長と面談をし、実情を話し、広報誌の内容の充実を図ることにした。
ある市長は、祖父の公正証書遺言で、孫である自分が財産を相続した経験があり、公正証書の重要性を分かってくれて、内容を吟味する旨回答をいただいた。9月号の広報誌は、当職の要望どおりに変更されていた。
また、ある町長は、面談時、担当課長を町長室に呼び、トップダウンで広報内容を検討するよう指示していただいた。小さい町では、町長の力が非常に大きいと感じた。
○電子公証システム
全国で電子公証システムを導入していない役場は、数カ所と聞いていた。
起業したい方から定款作成の相談があるが、収入印紙4万円が節約できるので電子公証でやりたいと切り出されることも数件あった。盛岡の他の公証役場ではできますと回答しているのが実情である。
現在、回線工事を9月下旬に行い、11月1日の指定に向け、日本公証人連合会、日立製作所と連絡を取り、準備中である。
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離婚給付等公正証書作成は、両人の複雑な関係もあり、なかなか難しいものがあります。離婚後の未成年の子の将来を第一に考え、最善の内容を提案しております。
また、遺言公正証書を作成し、安心される嘱託人の顔を拝見すると公証人になって良かったと感じます。
とりとめのない話を書きましたが、新米公証人で、嘱託件数は少ないですが、毎日汗をかきながら奮闘しております。引き続きご指導宜しくお願いします。

実 務 の 広 場

このページは、公証人等に参考になると思われる事例を紹介するものであり、意見にわたる個所は筆者の個人的見解です。

No.54 不動産の賃貸借契約について

地方都市では,自家用自動車の普及とともに,公共交通機関が減少してきた。その結果,スーパーマーケット等は,駐車場の確保が難しい駅前を敬遠し,郊外の大型店舗を構える傾向にある。福山も例外ではなく,公証役場に持ち込まれる不動産賃貸借契約も,郊外型大型店舗を所有するための事業用定期借地権設定契約などが多いように思う。
本稿では,定期借地権に限らず,不動産の賃貸借契約について公正証書の作成の依頼を受けていて,気付いたことを数点紹介させていただいたが,問題提起として記載したものであることをご了承いただきたい。

事例1 甲・乙共有地の乙の持分に甲が賃借権を設定したいという事例
概要:甲は,ある事業目的で,乙単独所有地(A地)と甲・乙共有地(B地)を乙から借り受けて一体として使用したい。賃料は,A地とB地(乙持分)併せて金〇〇万円と決めた。この内容で不動産賃貸借契約公正証書を作成して欲しい。
検討:このような事案は,実例としては,ありそうな気がする。例えば,親兄弟で共同相続したB土地全体を,共同相続人の一人が賃貸用駐車場用地として使用し,他の2名には賃料を支払うといった場合などである。この事例は,法律的には,甲・乙共有のB地について,乙持分に関し甲・乙間で賃貸借契約を締結することができるかという問題である。
そもそも,乙持分について,賃貸借契約が締結できるかという点については,持分権についての賃借権の設定はできないと解されている。なぜなら,賃貸借について,民法第601条は,「賃貸借は,当事者の一方がある物の使用・・・」と規定し,賃貸借の成立要件は,「物の使用をさせることである。」としている。つまり,土地そのものを使用することによって賃貸借は成立するとしており,共有持分のように,他の共有者によって制約を受けるような場合は,設定できないということである。このことから,乙の持分について,賃貸借を設定することはできないことになる。
それでは,甲がB地を借用したい場合には,どのような契約を結べばよいかということになるが,方法の一つとして,共有物を現物分割し,分筆して乙所有部分として特定できた箇所を賃借する方法が考えられる。他の一つは,B地を対象とし,貸主甲及び乙,借主甲として賃貸借契約を締結することができるかである。B地を第三者に貸す場合は,その第三者との間に借主第三者,貸主甲及び乙として賃貸借契約を結ぶことができるのであるから,この場合も同様に考えられるのではないかと思う。
そもそも,共有物の賃貸借については,共有物の変更,管理,保存のいずれに該当するかという問題もあるが,賃貸借期間が長期にわたる場合は,共有物の変更として共有者全員の同意が必要と解されており,本件のようにB地を事業用借地として長期間に渡り賃貸する場合は,甲・乙の同意が必要となる。本件では,乙の同意が得られれば,B地を賃貸借契約の対象とすることには何ら問題がなく,貸主甲及び乙,借主甲という賃貸借契約は,可能ではないかと考える。ただ,甲が貸主と借主の双方の立場にあるが,貸主としての甲は,共有物の変更に同意しているという立場の甲であると理解することで差し支えないと考えるがどうであろうか。
似た例として,自己借地権があるが,これはA所有地上にA・B共有の建物を所有する場合であるから,本事例に適用することはできない。

事例2 ある土地に事業用定期借地権設定後,隣接地を駐車場として借り増しするために事業用定期借地権を設定したいという事例
概要:A地とB地について事業用定期借地権設定契約を締結したが,後日,隣接するC地をA地及びB地とともに一体として使用する駐車場とするために,C地についても事業用定期借地権を設定したい。このような要望の背景には,C地は,A地及びB地と一体として事業用に供されることにより,賃料収入が確実視されることや,所定の期間が到来すれば返還してもらえるという安心感があるから貸すのであり,また,借主も安心して借りられるという事情もある。
検討:事業の用に供する建物と一体として使用する駐車場についても,事業用定期借地権設定契約ができると解されているが,これらの契約は建物所有地と同時にすべきであり,後日,追加的に駐車場用地を借り増しする場合には,事業用定期借地権設定契約は困難である(したがって,民法上の賃貸借契約によるべきである)旨説明されている。しかし,同時に契約できないのには,それぞれに事情がある。
例えば,大規模小売店舗所有に必要な広大な土地を借り受けるため多くの地権者との折衝を重ねてきたが,駐車場用地の一部について地権者との合意ができない,当該土地を除いて,とりあえず店舗開店に必要な土地について事業用定期借地権を設定する場合がある。この場合,後日当該地権者と合意ができた段階で土地の賃貸借契約を締結することになる。また,今は借りないが,将来駐車場用地として使用したいとして地権者から内諾を得ている場合もあるかも知れないし,あらかじめ内諾は得ていないとしても,事業拡大に伴って駐車場の借り増しが必要となる場合もある。しかし,このような背景事情は契約書に明記するものでもないので,背景事情によって事業用定期借地権が認められたり認められなかったりするのは適当ではない。
そこで,後日に事業用借地として提供したい土地が出てきた場合に,当該土地を事業用借地として扱っても差し支えないのではないかという意見が出てくるのは十分理解できるところである。問題は,当該土地について,事業用借地と一体ではなく,駐車場として利用するための土地賃貸借では,何故駄目なのかであるが,通常の土地の賃貸借契約は,20年を超えて締結することができないとされており(民法604),借主である事業者にとっては,長期にわたる事業展開には契約満了で解約されると不都合という問題あるかもしれないが,契約を更新すれば済む問題であるし,貸主にとっても,20年間,契約は尊重され,20年経過後は契約の更新,解除のいずれの選択肢もあり,それほど不都合とも思われない。
しかし,事業用借地として一体として取り扱うことはできないとすることも,何か不都合があればできないとして差し支えないが,特段の事情もなく,事業用定期借地権を設定したいという要望があり,既に事業用定期借地権設定契約を締結している土地と一体として使用することが明確であり,賃貸借期間も既設定の事業用定期借地権設定契約に求められる賃貸借期間期間を満たしている場合は,駐車場用地等の借り増しについても,事業用定期借地権を設定することは,可能として取り扱っても差し支えないと考えるがどうであろうか。

事例3 解約違約金についての事例
概要:借地権設定契約等によっては,借主側からの中途解約権を留保し,中途解約による違約金を定める例もあるが,この違約金はどの程度まで許されるか。
検討:建物賃貸借契約の中途解約の違約金について,賃借人からの申出による解約について,解約予告日の翌日より期間満了日までの賃料相当額の違約金支払い条項が一部無効であるとした東京地裁平成8年8月22日判決(注)があり,その趣旨は,定期借地権にも参考になるところである。
ただ,土地の賃貸借契約の場合,当該土地について,農地を宅地に変更するような場合や,多数の土地を一体として造成するなど,完全な原状回復が困難な場合もあり,建物賃貸借とは相当事情が異なる。
したがって,このような場合の違約金は,建物所有を目的とする土地賃貸借契約という建物賃貸借との違いを考慮すれば,相当程度多額となってもやむを得ず,前記判例では,違約金を賃料の1年程度が相当としたものの(判決は,違約金条項それ自体は有効と判断),違約金として「解約予告日の翌日より期間満了日までの賃料を支払う。」という条項がある場合,契約締結後直ちに解約した場合であっても,その条項をそのまま適用する例が生じても差し支えないと考える。
注 東京地裁平成8年8月22日の判例は,「期間4年の建物賃貸借契約を 締結した際,賃借人が期間満了前に解約する場合は,解約予告日の翌日より期間満了日までの賃料を支払う,との違約金条項が定められていた契約で,契約締結10月後の解約事例について,違約金として残期間3年2月分の賃料請求は,無効であり1年間について認める。」という事案である。
民事法情報研究会だより№7実務のページp3参照。

(由良卓郎)

 

 

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