民事法情報研究会だよりNo.13(平成27年8月)

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暑中お見舞い申し上げます。 さて、7月から運用を開始した質問箱につきましては、これまでに数件のご利用があり、迷っていたことが自信をもって処理できるとのお礼のメールも届いているようです。質問箱はまだ始まったばかりですが、多くの会員から気軽に利用していただけるようになれば、会員相互の交流を通じて会員の知識・経験を生かしていこうという当法人の設立目的にも沿う大変有意義な事業となるものと思われます。 なお、6月20日開催されたセミナーにおける藤谷会員による民法(債権関係)の改正案に関する講演を記録した講演録は、現在、民事法情報研究会だよりの号外として印刷製本を依頼しており、出来上がり次第、全会員にお送りいたします。改正法案は早晩成立するものと思われますが、いち早くこのテーマを取り上げて解説したこの講演録は、改正内容を理解するうえで非常に参考になるものと思いますので、セミナーに参加できなかった会員も含めて皆様にご利用いただきたいと思います。(NN)

毎日が日曜日(理事 小畑和裕)

1 「毎日が日曜日」という言葉が流行語になったのは、昭和51年に出版された城山三郎の「毎日が日曜日」という長編小説のタイトルに由来します。小説の舞台は、戦後日本の驚異的な経済発展を支え  た、いわゆる巨大商社の猛烈サラリーマンの活躍と挫折、定年後の生活です。全世界の隅々まで出かけて、死に物狂いで活躍した商社マンの姿と退職後の生活が描かれています。 公証人を終えて、毎日が日曜日になってから2年になりました。(毎日酒を飲んでいるので、毎日が水(酔)曜日だと豪語される先輩もおられますが。)その日が来れば、各種の資料や膨大な写真の整理など、あれもしよう、これもやろうと思っていました。しかし、「小人閑居して不善をなす。」のたとえの通り、何をするでもなく、いたずらに2年の歳月が経過しました。無為徒食の毎日でお恥ずかしい限りですが、恥を忍んでその一端を披瀝することにしました。反面教師として、いつの日か毎日が日曜日を迎えることとなる、現役の公証人の会員の皆様に役に立てば幸いです。

2 倚(よ)りかからず 「倚りかからず」という詩集がベストセラーになったのは、平成11年頃のことだったと思います。大好きな詩人の一人である茨木のり子の詩集です。その詩は、「もはや できあいの思想には倚りかかりたくない もはや できあいの宗教には倚りかかりたくない もはや できあいの学問には倚りかかりたくない もはや いかなる権威にも倚りかかりたくない ながく生きて学んだのはそれぐらい じぶんの耳目じぶんの二本足のみで立っていてなに不都合のことやある 倚りかかるとすれば それは椅子の背もたれだけ  茨木のり子」というものです。 毎日が日曜日になり、この詩を改めて読みました。現役時代は、仕事では、国という権威や、上司、先輩、同僚、部下に倚りかかり、私生活では妻や家族に倚りかかり、どっぷりと倚りかかって生きてきた人生でした。よし、これからは家事を覚えて自立するぞ、親孝行もするぞ、いままでないがしろにしてきた地域社会にも貢献するぞと、決意しましたが、不発に終わりました。今日に至るも何一つ変わらず、相変わらず倚りかかって生活しています。この状態を反省するどころか、最近は、居直り気味に、やはり大好きな自由律詩人種田山頭火の次の句に共感を覚えています。 ここまできて この木にもたれている 山頭火

3 感受性の衰え 毎日が日曜日になって悲しいことの一つに感受性の衰えが有ります。現役を離れると、今まで得ていた各種の情報が圧倒的に少なくなります。少なくなれば当然に感受性も鈍くなります。ここでいう感受性とは、外界の印象を受け入れる能力のことです。美しいものを美しいと捉え、悲しいときは大いに悲しむ。日常生活の中で吃驚したり感動したりする能力が衰えていくのです。ところが最近、前出の茨木のり子さんの次の詩を読み、大いに反省しました。何を甘えたことを言っているんだと、笑われ、叱られました。 自分の感受性くらい ぱさぱさに乾いていく心をひとのせいにはするな みずから水やりを怠っておいて 気難しくなってきたのを友人のせいにはするな しなやかさを失ったのはどちらなのか 苛立つのを近親のせいにはするな 何もかも下手だったのは私 初心消えかかるのを暮らしのせいにはするな そもそもはひよわな志にすぎなかった 駄目なことの一切を時代のせいにはするな わずかに光る尊厳の放棄 自分の感受性くらい 自分でまもれ ばかものよ     茨木のり子

4 一日一生 最後に小説「毎日が日曜日」に関するトリビアを一つ。城山三郎は、読者から署名を求められたとき、「毎日が日曜日の」扉に「一日一生」と書いたということです。私はそのことを最近再読した同書の巻末の解説で知り、深く感動しました。毎日が日曜日ではあっても、その毎日毎日を大切に生きて行く。一日を一生のつもりで悔いなく生きる。その心構えの大切さを教わりました。毎日を無為に過ごすことの無いように強く戒められたのです。大いに共感しましたが、現実は相変わらずだらしない毎日です。 どうしようもないわたしが歩いてゐる  山頭火

左様なわけで、「毎日が日曜日」を生きるのは大変なことなのです。            了

 

実 務 の 広 場

このページは、公証人等に参考になると思われる事例を紹介するものであり、意見にわたる個所は筆者の個人的見解です。

No.13 貸金庫の開扉、蔵置品の点検に関する事実実験公正証書について

金融機関の貸金庫の開扉、点検に公証人が立会いを求められる案件には、様々な事例があると思われますが、代表的と思われる金融機関の開扉、点検の案件について、当公証役場における嘱託から証書作成までの事務処理の流れを説明し、執務の参考に供することとします。なお、これは、当公証役場における扱いであることを念のため申し添えます。

1 金融機関が貸金庫の開扉、点検を嘱託する理由 ① 貸金庫使用者が、使用料を長期間支払わず、銀行業務に支障が生じていることから、当該貸金庫を強制開錠して蔵置品の有無を確認し、保管物があれば、別途保管のための措置を講じ、当該貸金庫を他に利用させるためのもの。 ② 金融機関の施設移転(店舗の廃止、開設)に伴い、貸金庫の移設をするに当たり、個別の貸金庫を、開扉措置をせず、貸金庫そのものをそのまま移転するもの。 ③ 金融機関に施設内において、貸金庫のリニューアル等により、貸金庫の設置場所を移転するもの。 等が考えられます。

2 貸金庫の設置状況 貸金庫の方式は必ずしも同じような方式に統一されているわけではなく、各金融機関の施設ごとに導入されている貸金庫の方式が異なります。そこで、代表的と思われる2つの方式を紹介します。 (1)  貸金庫使用者が貸金庫室(いわゆる金庫)に入室して利用する方式 多くの金融機関の施設で導入されている方法です。金庫室内に各使用者の貸金庫が整然と番号順に格納され、使用者は自己の貸金庫を、直接、金庫室内の格納場所で開錠し、蔵置品についての点検等の用件を済ませ、その後、格納場所に格納、施錠するという使用方法です。 (2)  貸金庫使用者が施設内の所定のブースにおいて、利用する方法 施設内所定のブースに貸金庫使用者が入室し、ブース内からの遠隔操作(手許で、自己の貸金庫をブースまで取り寄せる操作)により、別室の金庫室に格納されている自己の貸金庫を取り寄せ、そのブース内で貸金庫を開錠し、蔵置品についての点検等の用件を済ませ、施錠し、格納操作を行い、所定の貸金庫室に機械操作により格納されるものです。 このシステムは、ベルトコンベアなどで、金庫室からブースに自動搬送されるシステムとなっており、使用者は金庫室まで出向く必要がなく、最近はこのシステムが普及している模様です。

3 事実実験期日までの準備(金融機関担当者等との打ち合わせ) 初めて訪問する場合には、貸金庫の設置場所、内容物点検場所等が不明なため、臨場から点検までの行程及び場所の確認のほか、臨場当日の作業手順について金融機関の担当者と打ち合わせをあらかじめ行ってから臨場することが、その後の作業を円滑に行うためには望ましいと考えます。 また、あらかじめ「嘱託書」、当該金融機関の「貸金庫規定」等の規約、手数料未納者に対する督促状等の写し、担当者の身分証明書の提出を依頼しておくことも、作業が円滑にすすむ方法です。 特に、施設(店舗)の移転に伴うものや、施設内における貸金庫室自体の移転などは、土日や休日を利用して行う場合が多く、その移転・運搬方法、移転に当たって各貸金庫の開扉の有無、格納に当たっての確認すべき事項等々、一連の作業行程について詳細に打合せを行い、公証人が確認、点検を必要とする行程について、金融機関担当者(場合によっては、運搬業者を含めて)と綿密に詰め、期日当日の具体的な作業行程、人の動き等をイメージしておく必要があります。場合によっては、担当者とともに一度リハーサルを行っておくと期日当日の進行がより具体的にイメージでき、円滑に進行します。

4 事実実験期日までの準備(内業) 3の打合せの中で、確認できた作業行程を、時刻の順に追った作業の流れ(担当者の誰がどのような行為を行うか)、公証人が確認すべき事項等を網羅した下書きを作成しておくと、期日当日の公証人の確認作業がスムーズに運びます。 別記の公正証書作成例文の文案をあらかじめ作成、持参し、その文案に確認事項を書き込むことによって、より漏れのない、事実実験証書が作成できます。

5 事実実験期日当日 当日の持ち物としては、打合せした作業行程表、下書き、メモ用紙(筆記用のバインダーがあると便利)、デジタルカメラ、職印等を持参する。 担当者と作業行程を再確認した後、事実実験の作業に入ります。 作業に当たっては、あらかじめ打ち合わせた作業行程どおり、作業が進行しているか、下書きしたものと実際の作業に齟齬がないかを確認しながら点検していきます。 一般的な1の①の貸金庫の開扉、点検作業を例に進め方を説明します。 確認作業を始めるに当たって、時刻を確認し、作業を開始します。作業行程に沿って、作業開始時刻をメモし、各行程ごとに開始、確認、終了時刻をメモします。 また、デジタルカメラを使用しながら、次の各作業行程を記録しておくことが間違いのない公正証書を作成することにつながります。 副鍵が封緘されている状況、担当者が封緘された副鍵を開封している状況、副鍵とマスターキー(利用しない貸金庫もある。)を使用して当該貸金庫を開錠している状況、開錠後、蔵置品(内容物)の確認に移り、開扉したときの状況、蔵置品があれば、蔵置品全体の収納状況、蔵置品1点ごとの状況(例えば、大封筒にいくつかの蔵置品が封入されている場合には、大封筒の状況、蔵置品1点ごとの状況、預金通帳であれば、金融機関及び支店名、口座番号、名義人が確認できる程度、権利証、各種領収書等も同じ)、最後に蔵置品を金融機関の大封筒に封入するに当たって、その封入作業状況、担当者による大封筒の封緘状況、公証人による封緘状況、取り出した蔵置品を最終的な保管場所に格納するまでの確認をする場合は、その場所における格納保管状況など なお、作業の際のメモ取り(蔵置品の書き出し作業)は、書記を帯同できる場合は書記に筆記させ、公証人が単独で赴くときは公証人自らが筆記します。金融機関の担当者の協力が得られれば、メモ取りをお願いする場合もあります。

6 公正証書作成作業(帰庁後の内業) 帰庁後、作業において使用した確認メモ、蔵置品の書き出しメモ及びデジタルカメラの映像を参考にして、公正証書案文を作成します。 案文作成完了後、金融機関の担当者(代理人)に来所を求め、内容確認後、署名押印させ、完了します。 なお、蔵置品が多数ある場合には、一覧表を作成し、別紙として添付する方法もあります。

7 手数料の計算 手数料の計算に当たっては、事実実験当日に要した時間、内業に要した時間を合算して計算します。そのほか日当旅費が加算されます。貸金庫自体の移設、移転のような場合は、事前の打合せが重要であり、当該施設に出向いての打合せ、事前リハーサル等を行った場合は、その所要時間について、嘱託人に説明の上、旅費日当も含め、積算する取扱いで差し支えないものと思います。 (参考) 複数の貸金庫を開扉する場合、開扉した貸金庫ごとに1通ずつ公正証書を作成するか、空の金庫のみまとめて1通作成し内容物のある金庫については金庫ごとに1通作成するかについては、金融機関の意向に従うこととし、手数料は各通ごとに所要時間を計算して算出する。(2006.3.16日公連速報) 金庫の開扉について、金庫の数だけの日当を徴収することはできず、1回の出張に1日当のみ徴収できる。(2006.3.16日公連速報)

8 参考文例の説明 文例1は、1の①の例。 文例2は、1の②の施設内の施設の例であり、貸金庫ごとに作成せず、一括して作成したものです。

(文例1 蔵置品のない例) 平成○○年第     号 貸金庫の開披点検に関する事実実験公正証書 本職は、嘱託人株式会社〇○○銀行の以下の嘱託に基づき、同銀行〇○支店に設備してある貸金庫の開披及び蔵置品の点検、処理等に関し、その現場に立会い目撃した事実を録取してこの証書を作成する。 嘱 託 の 趣 旨 嘱託人株式会社〇○○銀行は、貸金庫使用者株式会社〇○○○に対し同銀行の「自動貸金庫規定」に基づき同銀行〇○支店に設備の貸金庫(貸金庫番号・第××××××号)を、平成〇○年〇月〇日から使用させてきたが、使用者は、平成〇○年〇月から約定の使用料を支払わず、かつ、前記「自動貸金庫規定」による貸金庫の明渡し蔵置品の引き取り手続きを執らずにいるため銀行営業事務の運営に支障、損害を生ずるおそれがある。ついては、嘱託人銀行は前記使用者の貸金庫を開披し蔵置品を点検のうえ一定の場所に格納する処置を実行したいので、本公証人に対し、その現場に立会い、目撃した事実を録取した公正証書の作成を嘱託するというにある。 以上の趣旨の嘱託にあたり嘱託人は「自動貸金庫規定」、「貸金庫取引印鑑届」、「貸金庫手数料ご入金のお願い」と題する書面を提出したからその写を本公正証書(*提出資料を原本にのみ添付する場合は、「原本」と記載する。)の末尾に添付する。 本公証人は平成〇○年〇月〇○日午後〇時〇○分から同〇時〇○分までの間、○○県〇○市〇○町〇丁目〇番〇号所在の嘱託人銀行の貸金庫所在場所である〇○支店に赴き同支店お客さまサービス課長〇○○○が以下に記載の処置を実行するのを目撃した。 なお、上記の処置の実行に当たっては、同銀行〇○支店お客様サービス課〇○○○が終始立ち会った。 記 1 前記○○○○は、銀行保管の副鍵を使用するにあたり、これを封緘した封袋を本公証人に提示し、その封印状況に異状のないことを告げ、本公証人もこれを認めた。 2 前記○○○○は、上記封袋を開き使用者の副鍵を取出し、これを使用して使用者の貸金庫を開披し、その蔵置品を点検したところ蔵置品はなかった。 以 上
(文例2 貸金庫の移設) 平成○○年第    号 貸金庫の移設に関する事実実験公正証書 本職は、嘱託人〇○○銀行株式会社の以下の嘱託に基づき、同銀行〇○支店3階金庫室に設備してある旧貸金庫を開扉し、格納品の内容及び破損のおそれの有無等を点検し、そのおそれのある場合には、梱包などの必要な取扱いをした上、当該格納品を同行専用の封緘袋に入れて封緘、搬送し、同支店内2階金庫室の新貸金庫に移設格納することに関し、その現場に立会い目撃した事実を録取してこの証書を作成する。 嘱 託 の 趣 旨 第1 本件嘱託の趣旨は、次のとおりである。 嘱託人〇○○銀行株式会社は、同銀行〇○支店(〇○県〇○市〇○町〇丁目〇番〇号所在)3階金庫室に設備してある貸金庫(以下「旧貸金庫」という。)の老朽化に伴い新たに貸金庫(以下「新貸金庫」という。)を設置したことから、貸金庫使用者のうち、未手続の下記貸金庫使用者について、貸金庫使用者の格納品を旧貸金庫から新貸金庫に移し替える必要があるため、平成〇○年〇月〇日、同銀行自動貸金庫規定(別添1)第11条及び第12条に基づき、旧貸金庫を開扉し、格納品の内容及び破損のおそれの有無等を点検し、そのおそれのある場合には、梱包などの必要な取扱いをした上、当該格納品を同行金庫室の新貸金庫に移設格納用の封緘袋に入れて封緘、封印して搬送し、同支店内2階金庫室の新貸金庫に移し替える措置をするので、その現場に立会い、下記事項について目撃した事実を録取した公正証書を作成することを嘱託する。 なお、嘱託人は、貸金庫規定写し、予め貸金庫契約者に対して通知した「貸金庫ご利用のお客様へ」(別添2)、「貸金庫移設お手続きのお願い」(別添3)及び下記使用者からの「貸金庫使用申込書ならびに印鑑」と題する書面(別添4-1ないし別添4-3)を本公証人に提示した。 記 1 対象貸金庫番号及び使用者の氏名 第一種B列第××××号  〇○○○ 第一種B列第△△△△号  〇○○○ 第一種C列第□□□□号  〇○○○ 2 嘱託事項 前記1の⑴ないし⑶の貸金庫に対する下記措置について、現場に立ち会い、目撃した事実の録取。 (1)  旧貸金庫と旧貸金庫副鍵袋の封緘に異常のないことの確認及び旧貸金庫と「貸金庫使用申込書ならびに印鑑、貸金庫副鍵袋の照合 (2)  旧貸金庫副鍵袋を開封し、同鍵を利用し、旧貸金庫を開扉し、格納品の内容及び破損のおそれの有無等の点検 (3)  破損のおそれのある場合には、梱包などの必要な取扱いをした上、当該格納品を同行専用の封緘袋に入れて封緘 (4)  封緘した旧貸金庫格納品を搬送し、新金庫への移設格納 第2 本公証人は、平成〇○年〇月〇日午後〇時〇○分から同〇時〇○分までの間、○○県〇○市〇○町〇丁目〇番〇号所在の嘱託人銀行の貸金庫所在場所である〇○支店に赴き、同支店次長 〇○○○、同支店課長 〇○○○が、以下に記載の処置を実行するのを目撃した。なお、本事実実験に当たり、本公証人とともに嘱託人〇○○銀行株式会社〇○○○及び〇○○○が全過程に立ち会った。 記 (第一種B列第××××号〇○○○の貸金庫に関して目撃した事実。) 1 平成〇○年〇月〇日午後〇時〇分、○○支店3階旧貸金庫室において対象の第一種B列第××××号〇○○○の旧貸金庫が金庫業者によって所定場所から取り出され、未開錠のまま2階応接室卓上に搬出されるのを目撃した(なお、同時に第一種B列第△△△△号、第一種C列第□□□□号も搬出された。)。 旧金庫について、その番号を「貸金庫使用申込書ならびに印鑑」と題する書面で確認し、使用者〇○○○の旧貸金庫であることを確認した。 2 前記○○○○は、銀行保管の副鍵を使用するにあたり、これを封緘した封袋を本公証人に提示し、その封印状況に異状のないことを告げ、本公証人もこれを認めた。 3 前記○○○○は、前記封袋を開き使用者の副鍵を取り出し、それを使用して使用者の貸金庫を開扉し、その格納品を点検したところ、別紙1格納品目録記載の格納品があった。 4 前記○○○○及び〇○○○は、別紙1格納品目録記載の格納品を同銀行の封緘袋に入れて封緘し、封緘部分の上下5か所に同人の印鑑で割印を押し、当職も上下5か所に同じく職印で割印を押した。 5 搬出格納 前記○○○○は、前記格納品を封緘した同銀行の封緘袋を同支店内2階金庫室に搬送し、新貸金庫に移し替え格納した(終了時刻 同日午後〇時〇○分)。 (第一種B列第△△△△号〇○○○の貸金庫に関して目撃した事実。) 1 平成〇○年〇月〇日午後〇時〇○分、○○支店3階旧貸金庫室において対象の第一種B列第△△△△号〇○○○の旧貸金庫が金庫業者によって所定場所から取り出され、未開錠のまま2階応接室卓上に搬出されるのを目撃した(なお、同時に第一種B列第××××号、第一種C列第□□□□号も搬出された。)。 同日午後〇時〇○分、旧金庫について、その番号を「貸金庫使用申込書ならびに印鑑」と題する書面で確認し、使用者〇○○○の旧貸金庫であることを確認した。 2 前記○○○○は、銀行保管の副鍵を使用するにあたり、これを封緘した封袋を本公証人に提示し、その封印状況に異状のないことを告げ、本公証人もこれを認めた。 3 前記○○○○は、前記封袋を開き使用者の副鍵を取り出し、それを使用して使用者の貸金庫を開扉し、その格納品を点検したところ、格納品はなかった。 (終了時刻 同日午後〇時〇○分) (第一種C列第□□□□号〇○○○の貸金庫に関して目撃した事実。) 1 平成〇○年〇月〇日午後〇時〇〇分、○○支店3階旧貸金庫室において対象の第一種C列第□□□□号〇○○○の旧貸金庫が金庫業者によって所定場所から取り出され、未開錠のまま2階応接室卓上に搬出されるのを目撃した(なお、同時に第一種B列第××××号、第一種B列第△△△△号も搬出された。)。 同日午後〇時〇○分、旧金庫について、その番号を「貸金庫使用申込書ならびに印鑑」と題する書面で確認し、使用者〇○○○の旧貸金庫であることを確認した。 2 前記○○○○は、銀行保管の副鍵を使用するにあたり、これを封緘した封袋を本公証人に提示し、その封印状況に異状のないことを告げ、本公証人もこれを認めた。 3 前記○○○○は、前記封袋を開き使用者の副鍵を取り出し、それを使用して使用者の貸金庫を開扉し、その格納品を点検したところ、別紙2格納品目録記載の格納品があった。 4 前記○○○○及び〇○○○は、別紙2格納品目録記載の格納品を同銀行の封緘袋に入れて封緘し、封緘部分の上下5か所に同人の印鑑で割印を押し、当職も上下5か所に同じく職印で割印を押した。 5 搬出格納 前記○○○○は、前記格納品を封緘した同銀行の封緘袋を同支店内2階金庫室に搬送し、新貸金庫に移し替え格納した(終了時刻 同日午後〇時〇○分)。 以 上 (橘田 博)

No.14 発起人が外国人である場合の定款認証について

はじめに 外国人が発起人となって会社を設立する場合の定款認証については、当該外国人が外国に在住している場合と、国内に在住している場合に区別して考え、更に、本人申請か、代理申請か、代理申請であれば、作成代理によるか、認証代理によるか、そして申請方法は、電子定款で申請するか、紙定款で申請するのかによっても異なる。 それぞれの場合に区分して留意すべき事項を考えておく必要があるが、公証役場に対して申請する行為それ自体は、発起人が日本人であるか否かで異なる点はなく、問題なのは申請行為に至るまでに準備しなければならない資料等に関してのことであるから、この点を中心に、(1)発起人が外国に在住し、国内に在住している司法書士等(以下、単に「司法書士」という。)に定款作成を委任する例として、作成代理(電子申請と紙で申請)をとりあげ、また、(2)発起人が国内に在住し、司法書士に定款認証を依頼する例として、作成代理(電子申請と紙で申請)及び認証代理をとりあげ、それぞれ手順について説明することとする。なお、嘱託人が外国法人の場合については、必要な範囲内で述べることとする。 因みに、外国人の署名押印については、外国文字による署名で足り、押印は不要である。(外国人の署名押印及び資力証明に関する法律1条)(日公連定款認証実務Q&A 6p参照)また、行為能力は日本法で判断することとされている(日公連定款認証実務Q&A 29p参照)。 <発起人が外国に在住している場合  作成代理> 1 発起人が外国に在住している場合であって、日本に居住している司法書士に、定款認証手続きの一切を委任し、司法書士が代理人となってその手続きを行うとき。 (1)  電子申請による場合 ①司法書士が委任者の意向を受けて、定款の原案を作成し、それを公証役場に送付し、事前に公証人の点検を受ける。いきなり定款認証の手続きにはいると、訂正があった場合、却下となり、再度やりなさなければならず、時間を要するからである。その際、司法書士は、管轄法務局にも、登記申請の際の必要書類等につき疑問があれば確認する。 (注)定款に発起人としての外国人の氏名を記載するとき、定款は、日本の文書であるので、日本文字である漢字、カタカナ、ひらがなにより記載するのが原則である。定款に日本文字以外の文字の使用が認められるのは、実務で認められている商号、目的、住所に限られており、それ以外の箇所では、日本の文字により表記することになる。従って、外国人の氏名は、カタカナ表記となるが、後で訂正することのないよう外国人氏名の名前を正確に聴取し、記載することとなる。なお、韓国、中国、台湾のよう漢字圏にあっては、日本の漢字により記載しても差し支えない。(登記インターネット102 48p) ②司法書士において、「発起人から司法書士に対する委任状」(電子申請用の委任状)を作成(日付、発起人の住所・氏名は空欄) ③定款(①で作成したもの)と委任状(②で作成したもの)を編綴して袋とじ(1部) ④袋とじしたもの(1部)を発起人に送付 その際、次の事項を指示する。 《指示1》 委任状に日付を記載し、委任者欄に外国人発起人が住所を記載して氏名をサインすること(法人の場合は、法人の本店所在地、法人の商号を記載し、代表者がサイン)  併せて適宜の箇所に捨てサイン(捨印にかわるもの)。但し、外国においては、捨てサインの習慣がなく、訂正さえなければ不要なので、無くても差し支えない。 《指示2》 委任状及び定款を袋綴じした貼合せ部分に発起人が割サイン(割印の代わり) (法人の場合は、法人の代表者がサイン) 割サインは、割印にかわるものであるが、外国においては、割サインの習慣がないので、それに代わるものとして、通し番号(○/○)を記載し、全てのページが連続していることがわかるようにしておくことでも差し支えない。 《指示3》 委任状のサインについて、「当職の面前でサインした」旨の当該国の領事等公的機関若しくは当該国の公証人の認証を受ける。又は、当該国の領事、公証人作成にかかるサイン証明書を提出する。 (注1)サイン証明の有効期間については、印鑑登録証明書の有効期間3月と同様に考えるべきであるが、法務局によって若干取扱いが異なるようである。 当該国に印鑑登録制度があれば、署名しそこに印鑑を押印することで差し支えない。その場合は、前述したサインの箇所には、個人、法人の代表者が署名(又は記名)するとともに印鑑を押印させ、印鑑証明書を提出させることとする。印鑑証明書については、当該国の権限ある者の証明であることの公的機関の証明書が添付される必要がある。日本の登記事項証明書が外国で通用するためには、登記官印を法務局長が証明し、その法務局長印を更に外務省で証明しなければならず、それと同様に当該国の公印証明が付されている必要がある。中国は、地域によって、印鑑登録制度があり、その地域の者が発起人となる場合は、氏名、印影、住所、生年月日が記載された書類を公証人が証明する方式が一般的である。韓国は、印鑑登録制度があるが、印鑑証明書には生年月日が記載されていないので、パスポートの写し(本人の相違ない旨の記載と押印)等で補う必要がある。 (注2)法人の場合は、公証人等の証明した「(代表者の)サイン証明書」のほかに、法人の資格証明書(又は認証謄本)が必要である。これは、代表者のサインだけでは、その者が代表権限を有していることが確認できないので、代表権限を有していることを証明する資料として、提出させるものである。この資格証明書については、本店所在国における官公署発行の証明書(登記事項証明書等とそれが権限ある機関から発行されたものであることを証する当該国の権限ある機関の公的証明)、又は本店所在国における公証人等の証明書を提出させる。もっとも、資格証明書に代えて、本店所在国の公証人が当該法人の内容を証明したもの(商号、所在地、代表者の氏名、その者が代表権限を有することの記載が必要)でも差し支えない。サイン証明に代えて、「当該個人が代表者に相違ない」旨の当該国の公証人の面前でなされた宣誓供述書を提出させることでも差し支えない。これには本人のサインが必要である。 この件に関し、外国会社であっても、当該会社の目的が新設会社の目的の一部と重複している必要があり、そのことを判断するためにも外国会社の登記事項証明書を提出させる必要があるのではとの疑問もあるかもしれないが、登記実務ではそこまで要求していない。外国会社は、必ずしも日本と制度が同じとは限らず、仮に目的が記載されていたとしても国が異なれば事業も異なり、目的に関して厳格に考えるまでは必要ないとされているものと思われる。 ⑤書類がそろったら司法書士が電子申請する。電子定款に、司法書士が電子署名する。 ⑥電子申請による定款認証が受理されたら、司法書士(又は、補助者)が認証定款等を受領するために、必要書類(発起人のサイン証明、委任状、司法書士の印鑑登録証明書等)を持参し公証役場に出頭し、手続きをする。 (2)  電子申請によらず、紙定款による場合 紙定款による作成代理の場合であっても、定款作成までの手続き(前述した⑴①~④)については、電子申請で記載した場合と同様である。異なるのは、委任状の記載内容(電子定款では無く、単に作成代理用の委任状)と委任状に添付される定款の末尾の記載(電子申請用の記載ではなく、単に作成代理である旨の記載)になっている点のみである。その後の公証役場への認証手続きについては、前述した⑴⑤⑥の箇所が、電子申請ではないので通常の作成代理の際の手続きとなる。 <発起人が日本に在住している場合  作成代理> 2 日本に居住している発起人が司法書士に、定款認証手続きの一切を委任し、 司法書士が代理人となってその手続きを行うとき (注)発起人が日本人である場合と同様であり、氏名表記を除き異なるところはない。 (1)  電子申請による場合 ①司法書士が委任者の意向を受けて、定款の原案を作成し、それを公証役場に送付し、事前に公証人の点検を受ける。前述したように、電子申請の場合、いきなり定款認証の手続きにはいると、訂正があった場合、却下となり、最初からやり直しとなる。 (注)在日外国人の氏名の記載の仕方については、前述1(1)①注に記載のとおりであるが、在日外国人については、通常、印鑑登録証明書が提出され、そこにカタカナ書きされているので、その記載のとおりに記載することとなる。このカタカナ標記は、外国人住民登録の記載に基づき、プリントアウトされているが、文字数の制限から、通常使用する名前がカットされている例もあり、外国語表記の名前が必ずしも正確に表記されていない場合もあるので、留意する必要がある。但し、印鑑登録証明書に記載のローマ字表記とカタカナ書きが極端に異なっている場合であっても、法務局ではそこに記載されているカタカナ書きどおりであれば問題としない扱いである。もっとも、市役所では、本人からの申出で容易にカタカナ書き部分の訂正を認めている。なお、印鑑登録証明書には、ローマ字のみでカタカナ書きにしていないものも散見されるが、その時は、本人に供述させ、読み名を確認する。場合によっては、戸籍謄本、外国人登録証明書、運転免許証等で日本語読みを確認することが望ましい。韓国、中国、台湾のよう漢字圏にあっては、日本の漢字により記載しても差し支えない。(登記インターネット102 48p) ②司法書士において、「発起人から司法書士に対する委任状」(電子申請用の委任状)を作成(日付、発起人の住所・氏名は空欄) ③定款(①で作成したもの)と委任状(②で作成したもの)を編綴して袋とじ(1部) ④袋とじしたもの(1部)を発起人に手交 その際、次の事項を指示する。 《指示1》 日付を記載し、委任者欄に外国人発起人が住所を記載して署名の上、登録印鑑を押印する。日付、住所、氏名は記名でも差し支えない。 《指示2》 委任状及び定款を袋綴じした貼合せ部分に発起人が割印する。 《指示3》 発起人の印鑑登録証明書(有効期間3月、1通)を提出させる。有効期間3月との取扱いは、従来6月間とされたものを平成17年4月1日から短縮することとしたものである。これは印鑑登録証明書の有効期間が6月では長すぎ、既に失効しているにもかかわらず利用されるおそれがあるところからこのような措置がとられることとなったものである。 《指示4》 外国人が印鑑登録していない場合は、印鑑登録するよう指示し、印鑑登録証明書が提出されてから、前記のような扱いをすることとなる。ただ、印鑑登録証明書が提出できない場合に、委任状にサインし、そのサインの真正を担保させるため、本国の権限ある者(本国の公証人等)のサイン証明を提出させる扱いができるかどうかについては、公証人法第60条(公証人法28Ⅱを準用)により可能である。 ところで、当該発起人が代表取締役に就任し、会社の登記申請をすることになると、随所に「印鑑につき市区町村長の作成した証明書を添付しなければならない。」との定めており(商業登記規則61等)、現実には印鑑登録をしておかなければ、会社設立登記すらできないこととなるので、定款認証手続きについても、印鑑登録証明書を添付させる扱いとすることが無難である。 ⑤書類がそろったら司法書士が電子申請する。電子定款に、司法書士が電子署名する。 ⑥電子申請による定款認証が受理されたら、司法書士(又は、補助者)が認証定款等を受領するために、必要書類を持参し公証役場に出頭し、手続きをする。 (2)  電子申請によらず、紙定款による場合 電子申請によらず、紙定款による場合は、定款作成までの手続き(前述した⑴①~④)については、電子申請で記載した場合と同様である。異なるのは、委任状の記載と委任状に添付する定款末尾の記載が電子申請の際の様式ではなく、単なる作成代理による申請の様式になっていることである。その後の公証役場への認証手続きについては、前述した⑴⑤⑥の箇所が電子申請ではないので通常の作成代理の際の手続きとなる。 <発起人が日本に在住している場合  認証代理> 3 発起人自ら定款を作成し、日本に居住している司法書士に、定款の認証手続 きのみを委任し、司法書士が代理人となってその手続きを行うとき (注)発起人が日本人である場合と同様であり、氏名表記を除き異なるところはない。 ①発起人が定款を作成し、司法書士に定款を手交する。 (注)定款は事実上受任者が作成する例も多いと思われるが、定款に発起人として署名(又は記名)及び押印しているときは、司法書士の代理行為は、認証代理である。 ②発起人が委任状(認証手続きを委任する旨記載)を司法書士に手交する。 (注1)委任状の委任者欄に発起人が住所を記載し、署名の上、登録印鑑を押印する。日付、住所、氏名は記名でも差し支えない。あわせて適宜の箇所に捨印しておく。 (注2)印鑑登録証明書の有効期間については、前記2⑴④指示3に記載のとおりである。 (注3)外国人が印鑑登録していない場合は、前記2⑴④指示4に記載のとおりである。 ③書類がそろったら司法書士が発起人の印鑑登録証明書、定款及び委任状のほかに、司法書士個人の印鑑登録証明書(又は運転免許証等)を提出して認証の手続きをする。 (小林 健二)

No.15 公証業務の広報活動について

公証業務の広報活動については、毎年の公証週間における全国的な取組や各地域の実情に応じた日頃からの取組が公証誌で報告され、各公証役場では、それらを参考にして様々な広報活動が行われています。 当公証役場では、特に、関係機関との連携・協力に重点を置いて広報活動を行っており、関係機関が嘱託人と公証役場との橋渡し的役割を果たすなどにより、公証業務の需要喚起に繋がっていることから、参考までにその取組状況を以下に紹介いたします。

Ⅰ 行政機関 1 市役所 (1)  いわき市役所の市民課及び相談窓口用として、「遺言公正書作成のための準備について」というペーパー(A4・1枚)と「公証役場所在地図」をCDに入れて配布し、相談対応に活用していただくとともに、必要に応じて公証役場を紹介してもらっている。 (2)  生涯学習課を通じて市内の各公民館(37か所)に対し、各公民館が企画する市民講座、高齢者学級、寿教室、いきいきミセス教室などの講師派遣について案内し、「老後を安心に!」というテーマで遺言、成年後見等に関する講演を行っている(時間は、90分~120分)。その際に、各種パンフレットを配布するとともに民事法務協会作成の任意後見啓発DVDを活用している。 (3)  長寿介護課主催の「権利擁護講演会」においては、市民及び高齢者支援に関わる担当者などを対象として成年後見制度について講演し、「いわき市シルバーにこにこ学園」においては、高齢者を対象として遺産相続等について講演している。 (4)  いわき市が平成26年9月に新たに設置した「権利擁護・成年後見センター」(保健福祉課所管)の依頼により、任意後見に関する資料提供及び相談に応じている。 (5)  いわき市が民間業者に委託して市民課窓口に設置している呼出番号表示システムにおける広報用スライドショーに当役場も広告している(有料、15秒、1時間に10回程度)。

Ⅱ 社会福祉機関 1 社会福祉協議会 (1)  いわき市社会福祉協議会と民生・児童委員合同研修会において、福祉推進委員及び民生・児童委員を対象に遺言及び成年後見制度について講演している。 (2)  社会福祉協議会が推進する「心配ごと相談事業」における心配ごと相談員の資質向上のための連絡会又はいわき市内の地区協議会の「ボランティア講座」において、「老後を安心に!」というテーマで遺言、成年後見等に関する講演を行っている。 2 地域包括支援センター いわき市地域包括支援センター事務局又は市内の各地域包括支援センターからの依頼により、各種資料提供及び相談に応じている。

Ⅲ 士業関係 1 司法書士 (1)  福島県司法書士会いわき支部の研修会において、「公証業務について」と題し、公証業務の遂行状況や嘱託の傾向について説明するとともに、最近の情報提供及び意見交換を行っている。 (2)  福島県司法書士会における毎年2月の相続登記推進キャンペーンの一環として県内地方紙(2紙)に遺言公正証書についても記事を掲載していただいている。特に、本年1月末の紙面においては、同会会長と当職とが対談の形式で相続登記と遺言公正証書についてそれぞれの役割等を述べ、遺言公正証については、これまで以上の割合で紙面を占めたことから、その後の相談や証書作成の嘱託が顕著に増加した。 2 行政書士 (1)  毎年、福島県行政書士会いわき支部が主催している「市民なんでも相談所」において遺言、任意後見等について講演するとともに、その後の相談会にも対応している。 (2)  福島県行政書士会いわき支部の研修会の講師として、定期的にテーマ別に講演するとともに、具体的事例を参考に質疑応答も行っている。 (3)  成年後見制度については、平成22年に通年にわたり研修会が開催され、その講師を務めた。

Ⅳ マスコミ関係 1 地方紙 (1)  いわき市で発行されている(約12万世帯が購読)夕刊紙「いわき民報」において定期的に公証業務について広告している。 (2)  いわき民報社からの依頼により、同社が毎月発行しているフリーペーパーのコラム欄において30回にわたり公証業務について連載し、終了後、それを「あんしん生活」という冊子にした上、いわき市内の公民館等の関係機関に配布し、窓口や相談コーナーに備え付けてもらっている。 2 NHK NHK文化センターいわき教室が開催している講座(年2回)において、「公証人が教える老後の安心」というテーマで遺言、成年後見等について講演している。

Ⅴ その他 特定非営利活動法人そよ風ネットいわき(高齢者や障がい者を支援する団体)が主催する「権利擁護サポーター養成講座」におけるカリキュラムである公証役場の役割、成年後見の法律知識、遺言公正証書等に関する講師の派遣依頼に応じている。 (本間 透)

No.16 相続登記が未了のまま相続人を当事者として、事業用定期借地権契約が可能か(質問箱より)

【質 問】 相続登記が未了のまま(相続登記をするつもりがない。)相続人を当事者として、事業用定期借地権契約が可能か? 所有権の帰属が未定のままでは、敷金の返還等で問題が発生する可能性があり、消極と考えていますが、相続人は、同族会社と賃貸借契約を結んだうえで、その同族会社が当事者となって、事業用定期借地権を設定することを考えているようです。 どのように考えるべきか悩んでおります。よろしくお願いします。 【質問箱委員会回答】 「相続人は、同族会社と賃貸借契約を結んだうえで、その同族会社が当事者となって、事業用定期借地権を設定することを考えている。」とのことですから、公正証書として作成する事業用定期借地権設定契約は、同族会社と第三者との間で締結し、その前提として同族会社にその権限を付与するために、相続人と同族会社の間で、賃貸借契約を締結することが想定されています。 同族会社が事業用定期借地権設定契約の当事者となるには、当該土地に関しその権限を有している必要がありますが、その前提として、相続人と同族会社との間で、当該土地に関して賃貸借契約を締結することによって、同族会社が第三者との間で事業用定期借地権設定契約ができるようにすることは、一般的に採られる方法です。 ところで、当該土地の登記名義は被相続人のままとなっており、相続登記は、未了のままということですが、登記は、対抗要件に過ぎず、相続登記が未了であっても、当該土地の所有権は、相続開始と同時に、相続人に帰属しているので(民896、民898)、相続人が契約の当事者となることに何ら問題はありません。この問題は、契約途中で地主が死亡し、相続が発生すると、契約当事者としての地位を法定相続人全員が相続することになりますが、その場合の法律関係と何ら変わりがありません。 ただ、同族会社との契約にあたって、相続人が一人の場合(当初から相続人が一人の場合、あるいは遺産分割協議が終わり特定の者が当該不動産を取得している場合で、登記は未了)は、賃貸借契約の締結はシンプルですが、相続人が複数の場合(相続人が複数で遺産分割協議が行われていない場合で、共同相続登記は未了)は、共同相続人全員が賃貸借契約の当事者になる例と、共同相続人全員から委託等を受けた相続人の代表者又は第三者がなる例が考えられ、それぞれに応じて契約が締結されることとなります。 そして、公証人としては、同族会社が当該土地について、事業用定期借地権設定契約締結の権限を有していることを確認する必要があり、少なくとも当該土地に関する「相続人(又は委託を受けた代表者等)と同族会社との間の賃貸借契約書(写し)」を提出させる必要はあると思いますが、後々のことを考えると、戸籍により相続人を特定し、その相続人全員が前述の賃貸借契約に同意していることを確認しておくことが望ましいと考えます。 なお、相続登記は、いずれはしなければならず、遅れると手続きが複雑になるので、早期にしておく必要がある旨、嘱託人に説明しておくべきでしょう。

No.17 離婚の財産分与の記載方法(質問箱より)

 【質 問】 甲乙間の離婚の財産分与の記載方法に関してです。 1 事例 自宅不動産の土地建物を甲が5分の3、乙が5分の2で共有し、甲及び乙はA銀行の住宅ローンの連帯債務者になっています。 住宅ローンは甲の口座からの引落し(月額9万円)となっています。乙の債務引受、履行引受は銀行が認めていません。 2 記載内容 ①自宅不動産には乙と子供丙丁が引き続き居住する予定で、ローン完済後は、自宅の所有権を乙に移転し、登記する。 ②A銀行の住宅ローン債務については、甲が支払うものとする。 ③乙は、②の債務の弁済資金の一部として、月額7万円を甲の口座に振り込んで支払う。 3 ご教示いただきたい事項 ①日公連の記載例45頁では、乙による「履行引受」の場合が記載されているのですが、このように履行引受せずに乙が甲に弁済資金の提供だけするということは可能でしょうか?当事者の要望としてはあり得ることと思われます。 ②この場合、実質は、ローン資金の提供なのですが、強制執行認諾条項を付しても差し支えないでしょうか? 【質問箱委員会回答】 「甲及び乙はA銀行の住宅ローンの連帯債務者」ということは、甲乙ともに月額9万円を支払う債務を負っており、銀行としては、どちらに請求してもよいが、現在のところ、9万円全額を甲に請求することとし、甲の口座からその額を引落としている状況にあり、甲の支払いが滞ると乙へ請求することもあり得るということになるものと思われ、これを前提に、お尋ねの件について検討すると、以下のようなことが考えられるものと思われます。 ①について 「履行引受でなく、乙が甲に弁済資金の提供だけするということ」は、乙としては、甲が滞りなく住宅ローンを返済できるように(甲の口座には、引き落とし時に常に9万円以上の額が残存している必要あり)、甲の口座に月額7万円を振り込んで援助することですが、その方法として、乙が甲に、贈与するか、財産分与するか、金銭消費貸借するか、3つの方法が考えられます。いずれの方法も可能であり、記載例に従って、公正証書として作成することは、問題なく、どの方法を採用したとしても、甲が7万円を受領する権利があり、乙は毎月7万円を甲の口座に振り込んで支払う責務を負う内容となります。但し、乙としては、提供した7万円が確実に住宅ローンの返済に使用される必要がありますので、そのことを条件とする旨記載する必要があり、また、住宅ローンの返済に確実に使用されれば当該資金提供は目的を達したことになるものの、使用されていないことが明らかになった場合は、その対処方策を盛り込んでおく必要があると思われます。 その方法ですが、贈与あるいは財産分与によることとした場合は、7万円が住宅ローンの返済に使用されたときは目的を達したこととなりますので、特段の問題は生じないのですが、使用されなかったことが明らかになった場合は、それ以後の契約解除と使用されなかった金額(甲の住宅ローンの返済が滞ると、金融機関から甲及び乙に速やかに、督促されると思われるので、乙が甲の支払い滞納の事実を長期間にわたって知らずに7万円を振込続けることは想定し辛く、乙の被害金額は多額にはならないと思われる。)の返還を記載しておく必要があると思われます。 金銭消費貸借によることとした場合は、貸したお金の返還をどのようにするか記載する必要がありますが、元々毎月7万円の日払いは、住宅ローン完済後は、返済を要しないお金として提供するのであれば、金銭消費貸借という方法ではなく、前記贈与か財産分与によることが相当と思われます。 ②について ①を前提にすると、贈与、財産分与としては、いずれの契約も、甲は、毎月7万円を受領する権利があり、乙は、毎月7万円を支払う責務(甲が金融機関への弁済に充当したことを条件)があることを内容とするものですから、乙がその支払いを怠ったとき、強制執行認諾条項を付した公正証書(執行文は条件付成就)を作成することは可能と思われます。乙が強制執行できる内容の公正証書にしたいのであれば、甲が住宅ローンの返済への充当を怠ったことを条件として契約解除ができ、それまで支払った金銭のうち住宅ローン返済に充てられていない額(7万円×未充当月数で金額を特定)を返還請求できるとし、返還されなければ強制執行できるという条項を盛り込むことも可能と思われます。 しかしながら、以上のような公正証書を作成する例は、あまりありません。なぜならば、本件のような例で、甲の方から、7万円の支払いを負担しなければならない乙の支払能力を疑問視して公正証書を作成しておきたいとすることはほとんどないと思われます(例としては、極僅かである。)。逆に、7万円を提供する乙としては、提供した7万円が確実に金融機関に支払われるかどうか不安があり、そのために、乙の提供した7万円が確実に住宅ローン返済に充てられることを内容とする公正証書を作成しておきたいと思っても、作成される公正証書は、前述したように乙に支払い義務を課すことがメインとなる内容で、確実な支払いは条件として記載される程度であり、わざわざ費用をかけて前記したような公正証書を作成しても、乙の本意とは異なったものとなってしまい、また、僅かではあるが、支払いに充てられなかった金銭を甲から取り戻せるかというと、甲としては、経済的に余裕がないから支払いを滞納しているので、乙からの請求には、無い袖はふれないということになるものと思われ、つまるところ、前記の例の公正証書の作成は、精神的な負担を強いる程度で、それ以上の効果はないものと思われるので、乙からも公正証書の作成方の要望は、出されないものと思われます。 そうであるならば、離婚給付契約公正証書のなかに、甲が支払いを履行する義務がある旨を明確に記載しておくことで足りるものと思われます。 金融機関は、履行引受を認めないとのことですが、乙が甲の口座に漫然と振り込むのは危険であり、乙としては、金融機関の甲の口座の残額がいくらあるのかを常に確認できるようにしておくとともに、金融機関が引き落とす直前に振込する等、少なくとも金7万円は確実に金融機関に届く方法を講じておく必要があります。

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