民事法情報研究会だよりNo.22(平成28年10月)

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仲秋の候、会員の皆様におかれましてはますますご清祥のこととお喜び申し上げます。 さて、本年6月閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2016」、「日本再興戦略2016」、「ニッポン一億総活躍プラン」の中で相続登記の促進が政府全体の取組みとされたことから、来年度予算の概算要求においても、相続登記の促進が優先課題とされており、これまで公共事業や震災の復興の妨げとなっていた相続登記されずに放置された不動産の解消という不動産登記制度の大きな懸案の解決にいよいよ乗り出すようです。これに関連して、法務省は本年7月、来春を目途に「法定相続情報証明制度(仮称)」を新設すると発表しました。この制度は、相続人の1人が被相続人の遺産相続手続に必要な戸籍謄本等の書類一式を法務局に提出しておけば、その後は法務局が当該相続手続に必要な戸籍情報等が記載された証明書を出してくれるというもので、これによって相続による不動産登記の移転や銀行の預金解約のため個別に法務局や金融機関に大量の書類を提出しなければならないという現状が改善され、遺産相続手続の簡素化が期待されるところです。(NN)

賞味期限切れでも・・(理事 小畑和裕)

1 リオ・五輪が終わった。日本人選手の活躍は素晴らしかった。獲得したメダルの総数は41個、内訳は金12個、銀8個、銅21個と過去最多を記録した。各選手の活躍に、日本中が興奮のるつぼと化した。競技の模様は、早朝から深夜まで、連日放送された。選手たちの活躍は、応援する沢山の人々に感動と勇気を与えてくれた。また、試合直後に行われたインタビューにおける選手たちの言葉も素晴らしかった。どの選手もオリンピックの出場をめざして、毎日血のにじむような努力を重ねてきた。そして、全力を出し切った。選手たちの言葉に嘘はなく、聞く者全てに感動をもたらした。メダルを獲得した各選手の言葉もよかったが、むしろメダルを逃したり、不本意な成績に終わった選手たちの言葉が印象的だった。 2 「どんなに笑われても、金メダルと言い続けよう。」 これは、7人制女子ラグビーの日本チームの主将中村知春選手の言葉である。勝負に負けて落胆している各選手に、主将として今後の目標をはっきりと各選手に伝えたのだ。失意の選手たちに、はっきりと目標を決め、4年後の東京オリンピックに向けて、自分を信じて、またチームを信じて、日々研鑽・努力しようと宣言したのだ。この目標がある限り、どんなに辛い日々の練習にも選手たちは耐えることができると信じて。 3 「お父さんに怒られる。」 女子レスリングで、惜しくも4連覇を逃がした吉田沙保里選手の試合直後の言葉だ。「お父さん」の言葉にしびれた。父と娘の固い絆が端的に表現されていた。僻み根性で言うのではないが、最近は何かにつけて父親より母親のほうが大切にされているように思う。そんな中にあって、まず「お父さん」と叫んだことは、家庭内での存在が多少軽くなっている世の父親は大いに快哉を叫んだに違いない。 「うちには銀メダルはありませんから。」 吉田選手の母の言葉である。なんと素晴らしいコメントであろうか。不本意に終わった娘の銀メダル獲得を祝福し、よく頑張ったとその苦労を労るとともに、一方で、金メダル、金メダルと言い続けるマスコミ等に対する強烈な皮肉を含んでいる。母であればこその言葉である。 4 「賞味期限切れでも、賞味期限は切れていないという気持ちをもって頑張る・・」 男子200m背泳ぎ入江選手の言葉である。決勝には進出したが、メダル獲得はならなかった。リオ・五輪でこの言葉ほど感動と勇気をもらった言葉はない。入江選手は、今回は涙をのんだが、今後も絶対「負けないぞ」という強い気持ちで頑張っていくことを表明したのだ。勿論、本人は賞味期限が切れたとは思ってもいないだろう。まだまだ頑張るぞと自己を鼓舞しているのだ。現役を卒業して、無為の日々を過ごしている身にこの言葉は心にしみた。そして大いにこの言葉に励まされ、「よし、俺もこれからだ。賞味期限なんか過ぎてない。頑張るぞ」と勇気が湧いてきた。 感動と勇気を沢山もらったリオ・五輪だった。

今 日 こ の 頃

このページには、会員の近況を伝える投稿記事等を掲載します。 

孫に曳かれ(佐々木 暁)

本年6月1日、晴れて?公証人の任を解かれました。50年にわたる公務員生活に別れを告げ、この研究会だよりが会友の皆様に届く頃には、重圧・責任という重い荷物を肩から降ろして、身も心も解放され、羽が生えたようにふんわりと浮き上がっていることと思います。 さて、仕事人間?だった私にも二人の子供がおり、それぞれに二人ずつの子供がおります。つまり、私には、四人の孫がおります。男三人・女一人です。この四人の孫が、本年4月から私の自宅の近くの小学校に揃って通い始めました。今時、しかも23区外とは言え東京ではやや珍しいことかもしれません。私たち親子が○○1丁目、2丁目、3丁目と居を構えていることから、このような情況になりました。 最近の小学校では、学校公開という日があり、私たちじじ・ばばも保護者の一員として自由に授業参観ができます。この自由参観日には、親をさて置いても顔を出しておりますが、孫が一人目、二人目まではゆっくりと授業やら校内の展示物やらを観て回っていましたが、三人目の昨年はやや忙しくなり、四人目の今年は走り回るように一階から四階まで校内を行ったり来たりし、かつ、四人均等の時間割合で参観することも心掛ける必要があります(私にとってはですが)。このため、足腰をしっかりと鍛えておく必要があります。これが私の公証人退任後の目下の最大?の任務ですから。 最近の少子化の影響で、孫らの小学校の人数も少なく、1学年2クラス、1クラス30人程度で、昔々の私の田舎の小学校を想い出します。分校と言ってもいいくらいの私の通った小学校は、2学年が一緒の複式学級で、私の同級生は15人でした。小学校は自宅から30メートル位のところにあり、雨が降っていても傘など不要でした。忘れ物をしたことはありませんでした。何故か?私の机は家も学校も同じ管理下にありましたので?20秒もあれば忘れたであろうものを手元に確保できたのですから。そんな環境のせいか、親が子供の教育に関心がなかったのか、仕事が忙しかったのかは定かではありませんが、私の両親が父兄参観日(私の時代はこのように言っていました)にただの一度も来たことはありませんでした。逆に、校庭の真ん中を私道のようにして、教室の窓の外を通る親の姿をこちらが観察していたような気がします。その代わりにというか、昼食の時間になると、担任の先生が我が家の隣の公舎に帰らず、一歩手前の我が家で、生徒である私と一緒に、我が家の豪勢?な昼食を食べては学校に戻っていたと記憶しています。給食などありませんでした。ストーブの上に置かれたジャガイモ、スケソウダラの干物、塩辛、・・・三平汁・・豪華から程遠い・・毎日同じ物(魚の種類は、たまには替わる)・・たまにカボチャ・・手が黄色くなる・・、それでも先生は毎日来る・・親に私の学校での様子をあること、ないこと?も話す・・親にとってはこれ以上の情報はない・・したがって、参観日にわざわざ学校に行くことはない・・ということのようでありました。それでも子供心に多少の寂しさはあったような気がします。それでも運動会・学芸会には5人(私の妹・弟)の子供の晴れ姿を観ようと最前列に陣取っていたようでした。 そんな自分の遠い昔のことを想い出しながら、誰もが想像しなかった顔(破顔?間の抜けた?)をして(自分では、いつもの真面目顔のつもり)孫4人が在籍している小学校に出かけることを楽しみにしています。勿論、運動会は写真撮影から弁当作りまで大車輪の活躍となります。写真も4人公平な枚数になるよう心掛けます。更に、土曜・日曜ともなると、男の子3人が所属する少年野球チーム(通学する小学校主体)の練習・試合にも出かけなくてはなりません。そんなこんなで、当分は私の「小さな夢」(小料理屋の開店)は実現しそうもありませんが、この孫らを含め毎週土・日には、一族に私の料理の試作品を提供して、腕を磨いております。 少子化対策や子育て支援が参院選や都知事選の重要課題として論戦の目玉となったのは記憶に新しいところですが、いざ、自分の居住地に近いところに保育施設を建設する計画を策定したり、公園敷地の一部を利用したいとすると、必ずといっていいほど反対の声が上がります。決まり文句は、「事前の説明がない」であり、子供の声が公害?憩いの場が失われる・・・等々であります。私もそのうちの一人かもしれませんが、大体において事前説明の広報など読んでもいないし、普段は仕事でろくに子供の声など聞いたこともなく、公園など出掛けたこと、利用したことのない者が大半なのではないでしょうか。そして、何よりも、子供の元気な声、それが泣き声であっても、年寄りには何よりの魔法の、元気の源の力であることを忘れているのではないでしょうか。加えて、将来、私達高齢者を支えてくれる最高の宝であることも。 それにしても、幼子に対する親の虐待のなんと多いことでしょう。報道に接する度に胸が痛みます。公証人時代に、若い夫婦の離婚給付等契約公正証書を作成する度に、母親に抱かれてニコニコ笑っている乳幼児の行く末がいつも気にかかっておりました。 話が二転三転してしまいました。お孫さんがいなかったり、遠方にいらしてなかなか会いたくても会えない情況の会友の方には、ただのお爺の孫自慢の話になってしまいお許しください。と言いながら、少ない年金を貯め込んで、孫のおねだりを心密かに待っている不謹慎者がおります。

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実 務 の 広 場

このページは、公証人等に参考になると思われる事例を紹介するものであり、意見にわたる個所は筆者の個人的見解です。

No.40 株式会社(閉鎖会社)モデル定款と認証の際の留意事項(その2)

株式会社(閉鎖会社)の定款について、一般的な記載例と留意事項を掲げ、若干の解説を試みるとともに、実例の中には間違った事例も数多くみられるので、その事例も紹介し、今後の定款認証に参考になると思われる事項を記載したものである。 例文中( )書きは、そのような記載であっても差し支えないことを示している。 凡例 Q&A 日公連定款認証実務Q&A 会報  東京会報 研修  日公連専門科研修

17 株主総会決議事項 会295 

(非取締役会設置会社) 株主総会は、会社法に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議することができる。 (取締役会設置会社) 株主総会は、会社法に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議することができる。 

取締役の選任のような株主総会で決議すべき事項を、取締役の決定や取締役会の決議において選任できるようにする定款の定めは、効力を有しない(会295Ⅲ)。しかし、株主総会において、取締役の選任決議の効力発生を取締役や取締役会の承認に係らしめる決議をすることは許される(QA202p)。株主総会において、そのような定めをするとこは、そこに株主総会の意思が明らかになっているので、会社法第295条第3項は、そのような株主総会の決議まで否定するものではないと解されている。しかし、「全て、取締役会の承認に係らしめる。」という内容の定款の定めは許されるとすると、会社法第295条第3項の趣旨を潜脱してしまうことになるのではという疑問が残る。

18 決議の方法 会309 

例1(正確な記載例) 株主総会の決議は定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。 例2(最も多い例) 株主総会の決議は、法令又は定款に別段の定めがある場合を除き、出席した(議決権を行使することができる)株主の議決権の過半数をもって行う。 2 会社法第309条第2項に定める決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(又は3分の1以上)を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行う。 

1 定足数は軽減又は排除できるが、議決要件は軽減できない。(日公連速報2007.1.9) 2 「可否同数のときは議長が決する」旨の定めについては、定款認証実務には解説がないが、取締役会についての解説(Q&A251p 昭和34.4.21民事局長回答)によれば、決議要件の軽減になるから無効であるとされていることから、同様に考えて、このような定めは無効と解する。 3 誤りの例 「当該」を「当核」、「議決」を「決議」、「議決権」を「決議権」の事例が多い。

19 議決権の代理行使 会310 

例1 株主又はその法定代理人は、当会社の議決権を有する株主1名(又は親族)を代理人として、議決権を行使することができる。ただし、この場合には、株主総会ごとに代理権を証する書面を提出しなければならない。 例2 株主は代理人によって議決権を行使できる。この場合には株主又は代理人は、法令に別段の定めがある場合を除き、株主総会ごとに代理権を証する書面を提出しなければならない。 2 前項の代理人は当会社の議決権を有する株主に限るものとし、かつ2人以上の代理人を選任することはできない。 

20 議決権の有無・行使 会308

株主は、株主総会において、その有する株式1株につき、1個の議決権を有する。 (単元株式数の定めがある場合) 1単元の株式につき、1個の議決権を有する。 (適切ではない例) 例1 1単元株式は1株とする。 例2 発行可能株式数は1株とする。 例3 ○○の有する株式は、1株について100個の議決権がある。他の株主の配当金の100倍とする。 例4 一定割合以上の株式を保有する株主は議決権を行使できない。

1 例1は、単元株を定めた意味がなく、例2は、最低限の株式数であり、発行可能の意味がなく、いずれも削除が望ましいが、違法ではなく認証しても差し替えない(研修番号17,18)。 2 例3、4 「議決権を行使することができる事項」について異なる定めをしたものと理解できるので、削除する必要はない。(研修番号23、38) 3 代表以外の株主は議決権を有しない旨の定めは可能である。(日公連速報2006.12.15)

21 招集 会296

例1 定時株主総会は、毎事業年度終了後(又は末日)の翌日から3か月(又は2か月)以内に招集し、臨時株主総会は必要に応じて随時招集する。 例2 定時株主総会は、毎年○月末日に招集する。

1 定時株主総会は毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならないと規定されているが、招集期日を「6か月」とすることは、適法ではない。前年度の決算等を決議するために開催するのが定時株主総会であり、一般的な会社であれば決算書など準備するのに2月乃至3月あれば十分であり、6か月も要するとは思われない。 2 1年を2事業年度としている会社、事業年度の末日ごとに招集しなければならない。(Q&A183p) 3 訂正の例 「総会」を「株主総会」に訂正 4 この記載例について、会報27.7 41p参照 

22 株主総会の開催地 会298 

株主総会は、本店の所在地又はその隣接地において開催する。ただし、議決権を行使することができる株主全員の同意があるときは、その他の地において開催することができる。 

 招集場所を、日本国外との定めは不適切である。(会報19.2 39p) 

23 招集権者及び議長  会296、298 

(取締役1名の非取締役会設置会社) 当会社の株主総会は、法令に別段の定めがある場合を除き、取締役(又は社長、代表取締役)が招集する。 (取締役複数名の非取締役会設置会社) 当会社の株主総会は、法令に別段の定めがある場合を除き、(取締役の過半数をもって決定し、)取締役(又は社長、代表取締役)が招集する。ただし、取締役(又は社長、代表取締役)に事故があるときは、あらかじめ取締役の過半数をもって定めた順序により、他の取締役が招集する。 2 株主総会においては、社長(代表取締役)が議長となる。ただし、社長(代表取締役)に事故があるときは、あらかじめ取締役の過半数をもって定めた順序により、他の取締役が議長となる。取締役全員に事故があるときは、株主総会において出席株主のうちから議長を選出する。 (取締役会設置会社) 当会社の株主総会は、法令に別段の定めがある場合を除き、取締役会の決議により、取締役社長(代表取締役)が招集する。ただし、取締役社長(代表取締役)に事故があるときは、あらかじめ取締役会の定めた順序により、他の取締役が招集する。 2 株主総会においては、社長(代表取締役)が議長となる。ただし、社長(代表取締役)に事故があるときは、あらかじめ取締役会の決議をもって定めた順序により、他の取締役が議長となる。取締役全員に事故があるときは、株主総会において出席株主のうちから議長を選出する。 

1 株主総会の招集は、原則として、取締役会設置会社においては、取締役会の決議により決定し、非取締役会設置会社においては、取締役の過半数をもって決定し(会298Ⅰ、Ⅳ)、いずれの場合も取締役が招集する(会296Ⅲ)。非取締役会設置会社においては、会社法第348条第3項3号において、会社法第298条第1項各号の事項についての決定を各取締役に委任できないとしているが、会社法第348条第1項、第2項で定款で別段の定めを認めているので、取締役が招集することはできる。但し、又取締役会設置会社においては、会社法第298条第4項で取締役会の決議によらなければならず、これを取締役に委任することはできない。(Q&A184p) 2 株主総会の議長については、特に会社法は定めていない。一般的には、取締役会設置会社の場合、取締役会で予め定めた順序により議長となる。取締役全員に事故があるときは、株主総会において出席株主の中から選ぶとするのが通例である。 3 代表取締役のある会社が「取締役社長が招集する」と記載することは、招集の決定ではなく招集行為を社長が行うとする趣旨と理解できるので問題ない。(日公連速報2007,3.19) 4 単に社長と記載して東京局では不可とされた例がある。(会報23.1.26p) 

24 株主総会招集通知 会298、299

(非公開会社で非取締役会設置会社) 株主総会を招集するには、(会社法第298条第1項第3号又は第4号に掲げる事項を定めた場合を除き、)株主総会の日の1週間(又は○日)前までに、(議決権を行使することができる)株主に対して招集通知を発するものとする。 2 前項の招集通知は、(会社法第298条第1項第3号又は第4号に掲げる事項を定めた場合を除き、)書面ですることを要しない。 注 1週間を下回る期間を定めることも可能である。 (非公開会社で取締役会設置会社) 株主総会を招集するには、(会社法第298条第1項第3号又は第4号に掲げる事項を定めた場合を除き、)株主総会の日の1週間前までに、議決権を行使することができる株主に対して招集通知を発するものとする。 注 取締役会設置会社は、書面通知が必要。ただし、書面投票・電子投票の定めがなく、株主全員の同意があれば不要(招集手続の省略の条項参照)。

1 株主総会の招集の通知は、株主総会の日の2週間前までに通知することが原則であるが、非公開会社にあっては、書面投票・電子投票の定めがないときは、1週間前に通知することで差し支えない。更に、取締役会設置会社以外の会社は、これを下回る期間を定めることができるとされている(会299)。 2 書面投票・電子投票を認めるとき又は取締役会設置会社の場合は、招集通知は、書面又は電磁的方法によらなければならないとされているので(会299Ⅱ、Ⅲ)、口頭による招集通知は不可である。Q&A189p 3 議決権を行使できる全ての株主の同意があるときは、書面投票・電子投票を認める場合を除き、招集手続を省略できる(会300)。 4 取締役会設置会社は、「1週間」を「7日」と記載しても差し支えない。2週間は14日確保の意味であると解説されている。 5 単に、「前項の招集通知は、書面ですることを要しない。」とのみ規定している例もあるが、例外条項まで全て記載させる必要なしとの理解で、認証は可能である(研修 番号41)。 6 取締役会設置会社以外の会社にあっては、「会日の前日までに」との記載でも差し支えない。 7 会社法第298条第2項で株主とは、(株主総会において議決権を行使できる・・)となっているので、会社法第299条の株主も同様に解することとなる。 8 招集通知を、「議決権を行使できる株主」でなく、単に「株主」としても差し支えない。(平成23.9 民事局商事課補佐官回答) 9 招集通知について(民事法情報275 63p)

25 招集手続の省略 会300

株主総会は、その総会において、議決権を行使することができる株主全員の同意があるときは、(会社法第298条第1項第3号又は第4号に掲げる事項を定めた場合を除き、)招集手続を経ずに招集することができる。

1 単に、「株主全員の同意」、「総株主の同意」と記載してあっても、差し支えない。 2 欠席株主の書面決議、欠席株主の電磁的方法による決議を設けた場合は、省略できないので注意を要する。 3 単に、「招集手続きを経ずに招集することができる。」とのみ規定している場合であっても、差し支えない。例外条項まで全て記載させる必要なしと理解できる。

26 株主総会の決議の省略 会319

株主総会の決議の目的たる事項について、取締役又は株主から提案があった場合において、その事項につき議決権を行使することができるすべての株主が、書面又は電磁的記録によりその提案に同意したときは、その提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなす。 2 前項の場合には、株主総会の決議があったものとみなされた日から、10年間、同項の書面(又は電磁的記録)を当該会社の本店に備え置くものとする。

訂正すべき例 単に「総会」は、「株主総会に訂正させる。 

27 株主総会参考書類のインターネットによる開示 会301 会施規94、65

当会社は、株主総会の招集に際し、株主総会参考書類、事業報告、計算書類及び連結計算書類に記載又は表示をすべき事項にかかる情報を、法務省令に定めるところに従い、インターネットを利用する方法で開示することにより、株主に提供したものとみなすことができる。

1 株主総会参考書類に記載すべき事項については、会社法施行規則第73条以下に規定がある。 2 インターネットについては、会社法施行規則第94条(電磁的方法による旨の定款の定め)、第220条,第222条に規定がある。 

28 株主総会の報告 会320

取締役が株主の全員に対して株主総会に報告すべき事項を通知した場合において、当該事項を株主総会に報告することを要しないことにつき株主の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該事項の株主総会への報告があったものとみなす。

株主全員とは、議決権を有しない株主も含まれる。(日公連速報2007.1.9)

29 株主総会議事録 会318

株主総会の議事については、法務省令(会社法施行規則第72条)の定めるところにより、議事の経過の要領及びその結果を記載又は記録した議事録を作成し、議長及び出席取締役が記名押印又は署名して10年間本店に備え置くものとする。

株主総会議事録に記載すべき事項として、「株主総会に出席した取締役、執行役、会計参与、監査役又は会計監査人の氏名又は名称」とあるが、その者について、署名、記名押印の義務付けはされていない(会施規72Ⅲ④)。しかし、株主総会において代表取締役を選定したことによる変更登記申請に際しての添付書面は、当該株主総会の議事録に議長及び出席取締役が押印した印鑑について印鑑証明書の添付を義務付けているので、定款には、署名及び記名押印を必要とする旨定めておくことが望ましい。(商登則61Ⅳ)

30 取締役の員数 会326

当会社の取締役は、○名以上(又は以内、から・まで)とする。

1 取締役会設置会社の取締役は、下限を示さず「○名以内」でも差し支えない。 2 誤っている例 取締役の規定にもかかわらず、表題が(取締役及び監査役の員数)と記載されている。 

31 取締役の選任の方法 会329,341、会施規則97

例 当会社の取締役の選任(及び解任)は、株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(又は3分の1以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。 2 取締役の選任については、累積投票によらない。 注「行使」ではなく「ある」と記載した場合については、下記解説を参照。 (不適当な例) 例1 当会社の取締役は、株主総会において、議決権を行使することができる株主の3分の1以上であって当該株主の議決権の過半数に当たる多数をもって選任する。 (前半部分が頭数要件(一定数以上の株主)と解され不適当) 例2 当会社の取締役は、株主総会において議決権を行使することができる株主の賛成によって選任する。(頭数要件と解され不適当) 例3 取締役1名と定めながら、累積投票に関する規定を置く例。(1名であるから累積投票はあり得ない。) (好ましくはないが、認証できる例) 「株主総会の決議は、株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し・・・」とし、取締役選任決議は「株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1以上を有する株主が出席し・・・」と規定する例。(一般普通決議の要件より、特則普通決議のほうが軽減されている。)

1 「総議決権の過半数(3分の1)」は誤りである。定款できめることができるのは、会社法第341条で、定足数に関する(3分の1以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)の箇所、議決権に関する(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)の箇所を変更できるだけである。定足数要件である「議決権を行使することができる株主」を「総株主」に変更することまで、会社法は認めておらず、「総株主の3分の1以上」と定めることはできない。(登記研究720 206p) 2 定足数に関し、頭数要件の設定は認められていない(会341)。(Q&A218) 3 選任、解任は、何も有しない者に一定の地位を付与する、又一定の地位を有する者からその地位を剥奪する場合である。これに対して選定、定める、解職は、一定の地位を有する者に更に別の職を付与する、あるいはその職を剥奪する場合である。(Q&A 232p) 4 「議決権がある株主の議決権・・・」という記載をすることは差し支えない。種類株式を発行する株式会社にあっては、議決権はあるが選任権を行使できないという株式はあるかもしれず、そのような場合は、議決権を行使できない株主を含むことが想定され、好ましくないこととなるが、一種類しか発行しない株式会社にあっては、このような問題はなく、「ある」株式であれば「行使」できる株式といえるので、「議決権がある株主の議決権・・・」のような記載は差し支えない。 5 取締役会設置会社でない株式会社については、取締役は1人で足り(会326Ⅰ)、その際は、当該取締役が代表取締役となる。

32 取締役の資格 会331 

当会社の取締役は、当会社の株主の中から選任する。ただし、必要があるときは(議決権を行使することができる株主の議決権の過半数をもって)、株主以外の者から選任することを妨げない。 注 ( )の記載を「株主の過半数をもって」と記載すると、頭数要件を定めたことになるので、不適法となる。

1 取締役が株主でなければならない旨を定款で定めることはできない。従って、取締役の資格を「持株数を100以上の株主とする。」旨の規定を設けることはできない。但し、公開会社でない株式会社においては、この限りでないとされているので(会331Ⅱ)、差し支えない。 2 取締役の資格を、成年者、日本国籍を有する者、年齢制限、あるいは親会社の取締役に限定することは可能である。 3 未成年者を取締役に選任する場合、就任承諾書に親権者の同意を要する(民5)。 4 認知症について(日公連速報2009.7.28) 

33 取締役の任期 会332,346

例1 取締役の任期は、選任後○年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。(「終了する最終の事業年度に関する定時総会終結の時までとする。」の例が多い。) 2 任期満了前に退任した取締役の補欠として、又は増員により選任された取締役の任期は、前任者又は他の在任取締役の任期の残存期間と同一とする。 例2 取締役の任期は、選任後○年以内の最終の決算期に関する定時株主総会の終結の時までとする。 2 任期満了前に退任した取締役の補欠として、又は増員により選任された取締役の任期は、前任者又は他の在任取締役の任期の残存期間と同一とする。 例3 (例1、例2に次の条文を付加する。) 3 取締役○○の任期は、選任時の株主総会で定める。 3 設立後最初取締役の任期は、1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。

1 取締役の任期は選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。ただし、定款又は株主総会の決議によってその任期を短縮することを妨げない。(会332Ⅰ)就任承諾のときではない。任期の始期が被選任者の意向にかかることになり相当でないことから、新会社法では終期を定めるものとし、その計算の始期を選任のときとしたものである。 2 公開会社でない株式会社において、定款において選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することを妨げないと規定されているので(会332Ⅱ)、非公開会社の大多数の会社が取締役の任期を「選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時」としている。 3 特定の取締役について、「その任期を選任時の株主総会において定める。」旨の定めをすることは認められる。特定の取締役の任期を他の取締役と異なる任期とする必要がある場合、定款に定めることは可能である。但し、法令の許容する期間内でなければならない。(Q&A223p、日公連速報2006.11.20) 4 取締役が欠けた場合、又は会社法若しくは定款で定める最低人数を欠くに至った場合は、任期の満了又は辞任により退任した取締役は、新任取締役が就任するまで取締役の権利義務を有する(会346Ⅰ)。 5 役員の任期を「定時株主総会の終結」のときではなく、事業年度に合わせて「1月1日から12月31日まで」のような定めとすることは好ましくない。このような規定を設けると、事業年度終了後開催しなければならない決算のための定時株主総会(会296Ⅰ)のほかに、別途、その事業年度終了の前に、役員選任のための定時株主総会を開催しなければならないこととなるが(定款には役員選任のための定時株主総会開催の規定を設けておく必要あり)、決算のための定時株主総会に出席すべき取締役は誰なのかという問題(当該事業年度の事業について責任を負うべき取締役は既に任期満了で退任しているが、新たに選任された取締役の就任時期を定時株主総会終結時まで遅らせ、それまでは既に退任した取締役が権利義務者として出席することにでもするか等)が生じ、このことは、同時期に無意味な株主総会を開催しなければならないことから生じるもので、無用の混乱を招くものである。仮にこのような役員選任のためだけの定時株主総会を認めるとしても、それを怠れば、選任懈怠(会第976条22号)の問題が生じる等の問題も生じる。 6 任期は選任されたときからであるから「取締役の任期は選任後」が正確であるが、「就任した取締役の任期は」と記載しても、選任決議後就任承諾して取締役になるのであるから、誤りとまでしなくてもよいように思われる。 7 任期は、株主総会において定める旨の定めは有効である。(日公連速報2006.11.20) 8 非公開会社において、各取締役の任期を、当該取締役の選任決議をする株主総会の決議で定めるときまでとする定款の定めは有効である(会報23.12 26p、新会社法千問の道標 285p)。定款に定めることなく、各取締役の任期を株主総会において、「選任後5年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結のときまで」と定めることも可能である。任期の短縮についても、定款で個別的に任意の期間短縮する旨の定めをすることは問題ない。

34 補欠取締役 会329、会施規則96 

補欠の取締役の選任に係る決議が効力を有する期間は、当該決議後○回目に開催する定時株主総会の開始のときまでとする。ただし、株主総会決議によってその期間を短縮することを妨げない。 注 取締役の任期を10年と定める会社にあっては、補欠取締役の期間は、「第10回目に開催する定時株主総会の開始のときまで」とするのが通例である。

1 補欠の会社役員の選任に係る決議が効力を有する期間は、定款で別段の定めがある場合を除き、当該決議後最初に開催する定時株主総会の開始のときまでとする。ただし、株主総会決議によってその期間を短縮することを妨げない(会施規則96Ⅲ)とされているので、このとおり規定する例がほとんどである。但し、定款で別段の定めをすることができると規定されているので、「定時株主総会開始のときまで」を「定時株主総会終結のときまで」とすることでも差し支えない。 2 定款に「取締役5人以内」とあり、現に5名の取締役が選任されている場合、取締役1名が辞任したとしても、補欠役員が辞任した取締役の代わりに就任することはない。 欠員とは、①役員が欠けているとき(役員が一人もいない)②法律で定めた定員の欠けているとき(取締役会の3人を割った)③定款の最低限度を割ったとき、のことである。 3 補欠代表取締役の選任の定めも可能である。(Q&A23p、日公連速報2007.1.23) 

35 代表取締役及び社長(取締役会設置会社でない会社) 会349 

(適切な例) 例1(代表取締役1人の例) 当会社に取締役2人以上いるときは代表取締役1人を置き、取締役の互選(又は株主総会の決議)により定めるものとする。 2 代表取締役は、社長とする。 3 社長は、当会社を代表し、会社の業務を統括(統轄)する。 注 取締役の員数を「取締役1人以上」と定めている会社にあっては、取締役が1人となるときもあり、そのときは、その取締役が当然代表取締役となることは会社法第349条で明らか出るが、社長に関する定めを定款に設けておく必要があるとして、「取締役1人のときは、当該取締役を社長とする。」旨の規定を追加して定める例もある。もちろん、この定めは、無くても差し支えない。 例2(代表取締役複数の例) 当会社に取締役2人以上いるときは代表取締役2人を置き、取締役の互選(又は株主総会の決議)により定めるものとする。 2 代表取締役の内1人は、(取締役の互選により)社長とする。 3 社長は、当会社を代表し、会社の業務を統括(統轄)する。 注 代表取締役の員数を記載しないで、単に「代表取締役を置き」と定めることもできる。 例3(「取締役1人以上」と定め、取締役の員数が1人のときと複数のときの両方を規定) 当会社の取締役が一人のときはその取締役を代表取締役とし、当会社に複数の取締役を置くときは、取締役の互選(又は株主総会の決議)により、代表取締役1名を定め、代表取締役をもって社長とし、必要に応じて、会長、専務取締役、常務取締役各若干名を選定することができる。 2 社長は、当会社を代表し、会社の業務を統括(統轄)する。 注 上記規定に続けて以下のような条項を設ける例もある。 「前項により代表取締役を定めず取締役全員が会社の代表取締役となる場合は、取締役の互選により、内1名を社長とする。」 (適切ではない例 ただし、法務局において問題とされたことはない。) 例1 当会社は、社長1名を、必要に応じて専務取締役及び常務取締役各若干名を置き、取締役の互選により、取締役の中から選定する。 2 社長は会社を代表する。 3 社長のほか、取締役の互選により、会社を代表する取締役を定めることができる。 注 定款で定めることができるのは、「代表取締役」である。社長は、会社が勝手に付けた名称であり、法的意味を持たない。その他、適切ではない理由は、下記解説を参照のこと 例2 取締役の決議で、取締役の中から、社長1名を選定し、必要に応じて、副社長、専務取締役、常務取締役各若干名を選任することができる。 2 社長は、当会社の代表取締役として、会社の業務を統轄する。 3 取締役の決議をもって、第1項の役付取締役の中から会社を代表する取締役を選ぶことができる。 注 適切ではない理由は、例1と同じ 例3 取締役が複数いる場合は、株主総会の決議により、代表取締役社長1名を選定する。 2 代表取締役社長のほか、株主総会の決議により、当会社を代表する取締役を選定することができる。 注 代表取締役社長という役員は会社法上存在しない。その他適切ではない理由は、例1と同じ 例4 当会社に取締役2人以上いるときは取締役の互選(又は株主総会の決議)により代表取締役1人を置き、その者を社長とする。代表取締役が複数選定されたときは、その者の中から社長1名を選定する。 注 代表取締役1人と規定しながら、代表取締役複数選定と規定している。 例5 当会社に取締役2人以上いるときは、取締役の互選(又は株主総会の決議)により代表取締役を置くことができる。 2 代表取締役を定めず、取締役全員が会社を代表する場合は、取締役の互選により1名を社長とする。 注 このような定めを無効とまではいえないが、代表取締役がおかれたり、おかれなかったりの会社を認めることとなり、好ましいとはいえない。 例6 取締役は、社長とし、会社を代表する取締役とする。 注 この例は、代表取締役制を採用しない、つまり取締役が会社の代表者となるとするものである。現実には取締役が一人である場合問題ないが、複数取締役のときは全員が社長となり、「会社を代表する取締役とする」と記載しているので、いかにも代表取締役制をとっているかの誤解を与えかねず、最も不適切な記載である。

1 会社法第349条で、取締役は、株式会社を代表する権限を有し(会349Ⅰ)、取締役が二人以上いる場合は、各自が株式会社を代表する権限を有する(会349Ⅱ)と定めている。これは取締役が一人であると、複数であるとに係らず、取締役に選任すると、その取締役は当然のことながら、株式会社の代表取締役の地位にあることになる。従って、登記するとき、取締役一人のときは「取締役A」、「代表取締役A」と記載し、複数の取締役がいるときは、「取締役A」「取締役B」「代表取締役A」「代表取締役B」と記載することとなる。 但し、「代表取締役を定めた場合は、この限りでない。」と定め(会349Ⅰ但書)、会社が代表取締役をおくこととした場合は、会社を代表する権限(会349Ⅳ)は、取締役ではなく、代表取締役が有することになるとしている。取締役が一人のときは、その者が代表取締役となるが、取締役が複数のとき、全員が代表権限を持つのではなく、特定の者だけが代表権限を持つことにしたい場合は、取締役のうちから代表取締役という役職に就く者を定めれば、その者のみが代表権限を持ち、他の取締役は代表権限を持たないことになる。 そして、代表取締役をおく旨の定め方について、取締役会設置会社でない会社にあっては、「定款、定款の定めに基づく取締役の互選又は株主総会の決議によって取締役の中から代表取締役を定めることができる。」とし(会349Ⅲ)、取締役会設置会社にあっては、取締役会は、取締役の中から代表取締役を選定しなければならないとしている(会362Ⅲ)。従って、取締役会設置会社にあっては、当然のことながら代表取締役が存在することとなり、取締役会設置会社でない会社にあっては、代表取締役をおきたいのであれば、定款で「代表取締役をおく」旨を定めることとなる。 2 複数の代表取締役を選定したい場合は、単に「代表取締役を定める。」と規定すれば代表取締役は何名でも可能である。代表取締役の人数を決めておきたければ「代表取締役○名を定める。」と定める。 3 代表取締役のうち少なくとも1名は、日本に住所を有することとする先例(昭和59.9.26民事局第4課長回答)は、平成27.3.16商事課長通知で廃止されているので、留意すること。 4 共同代表を禁止する規定はないので、定款で共同代表の定めはできるが、内部的制限の意味だけである。 5 補欠代表取締役の選定は、可能である。取締役会設置会社にあっては取締役会の決議で、取締役会設置会社でない会社にあっては定款、定款の定めに基づく取締役の互選、株主総会の決議により予め補欠代表取締役を選定することができる。 6 代表取締役の任期は、取締役の任期による。 7 代表取締役を選任するは誤りである。会社法上の一定の地位を有する者について更に一定の地位を付与する場合は、「定める」か「選定する」の用語を用い、選任するとはしない。(民事法情報272 p57) 8 「取締役1名以上」と定め、「取締役は社長とする。社長は代表権限を有する。」との定めは、複数取締役の場合、社長が複数となるので、そのときのために、「複数取締役の場合は、そのうち1名を社長とする。」旨の定めを付記すべきと考えるが、法務局では特に指摘しないとの扱いである。 9 「社長を2名とする」は、誤りであり1名に訂正させる(会報23.7 21p)。 10 定款に直接代表取締役の氏名を記載しても差し支えない(349Ⅲ 松井・商業登記ハンドブック384p) 11 適切でない例の解説 「社長を選定する。」 代表権限を有する者として「社長を選定する。」旨規定する例が多いが、定款で規定しなければならないのは、会社法第349条第2項で「株式会社(取締役会設置会社を除く。)は、定款、定款の定めに基づく取締役の互選又は株主総会の決議によって、取締役の中から代表取締役を定めることができる。」と規定されているように、決めなければならないのは、「代表取締役」であり、「社長」ではない。 従って、取締役の中から代表権限を有する者を選ぶ場合は、「代表取締役を定める。」と規定する必要がある。取締役の中から社長に選ばれたとしてもその者は、単に当該会社で社長と呼ばれているにすぎず、代表権限を有していることにはならない。社長などの役職者については、会社法第354条で「代表取締役以外の取締役に社長、副社長その他株式会社を代表する権限を有するものと認められる名称を付した場合には、当該取締役がした行為について、善意の第三者に対してその責任を負う。」と規定しているように、代表取締役以外の取締役、つまり代表権限のない取締役に、社長の名称を付した場合は、その社長という名称だけでは、法律上は会社を代表する権限を有しないにも係らず、あたかも会社を代表するかのような役職名を用いているので、一般の善意の第三者を誤らせて損害を生じさせてしまうことがあるかもしれず、そのとき会社は社長というような紛らわしい名称を付したことについて責任を負わなければならないと規定している。このことは、会社法は、社長という名称は法律上の役職を表すものではなく、単に会社が勝手につけた名称に過ぎないことを明らかにしたものである。 いずれにしても、代表権限を有する者を定める必要がある場合は、代表取締役を取締役のなかから選びなさいとしているのであり、会社が代表取締役として選定された者を社長というかどうかは、法的な問題とは別問題であり、会社が自由に決めればよい問題である。 この件について、「取締役の互選により社長を定め、その者を代表取締役とする。」と定めても、「社長を定める」は同時に代表取締役を定める決議と解されるので、無効とは言えないとの意見はあるが、代表取締役制をとるか否かは、当該会社の根幹にかかわる重要な事項であり、この理由づけは相当ではない。 「会社を代表する取締役をおく。」 「会社を代表する取締役をおく。」と記載する例があるが、株式会社にあって、会社を代表する者は、「代表取締役」であるから(会47Ⅰ、会349Ⅳ)、「代表取締役をおく。」と記載すべきである。代表取締役は、会社を代表する者であるから、「会社を代表する取締役をおく。」と記載しても間違いとはいえないとの考えもあるが、会社法第349条第2項で、「代表取締役その他株式会社を代表する者を定めた場合」とあり、そこでは「代表取締役」と「それ以外に株式会社を代表する者」を区別して規定しており、ここでいう「株式会社を代表する者」とは、委員会設置会社の代表執行役を指すもの(会420)と解するのが相当であるから、取締役会設置会社でない会社にあっては、代表執行役を意味するかのごとき、「会社を代表する者をおく。」との記載は、適当でない。 12 非取締役会設置会社における代表権について(登記インターネット102 66p)

36 役付取締役 会354

取締役の過半数の同意をもって、取締役の中から、専務取締役及び常務取締役を選ぶことができる。 社長は会社の業務を統括し、専務取締役及び常務取締役は社長を補佐し、定められた事務を分掌処理し、日常業務の執行に当たる。

37 取締役会 会362

例1 取締役会の決議で、会社の代表取締役1名を定める。 2 代表取締役を社長とし、当会社の業務を統括する。 3 取締役会の決議により、取締役の中から副社長、常務取締役及び専務取締役を選定することができる。 例2 取締役会は、その決議により取締役の中から、代表取締役を選定する。 2 取締役会は、その決議により、代表取締役のうち1名を社長とし、社長が会社の業務を執行する。 3 取締役会は、その決議により、取締役の中から取締役会長、取締役副会長、専務取締役及び常務取締役若干名を選定することができる。 例3 取締役会は、その決議により取締役の中から、代表取締役を選定する。 2 代表取締役が1名のときはその者を社長とし、代表取締役が複数のときは、取締役会の決議により、代表取締役のうち1名を社長とする。 3 社長が会社の業務を執行する。 (適切でない例 ただし、法務局において問題とされたことはない。) 例1 取締役会の決議により取締役の中から社長1名を選定し、必要に応じて専務取締役、常務取締役若干名を選定できる。 2 社長は、代表取締役とする。ただし、取締役会の決議をもって、社長のほかに前項の役付き取締役の中から会社を代表する取締役を定めることができる。 注 適切でない理由については、下記解説を参照のこと 例2 取締役会の決議をもって、取締役の中から、代表取締役である取締役社長を選定する。 注 適切でない理由については、例1と同じ

1 適切でない例の解説 会社法第362条では、「取締役会は、取締役の中から代表取締役を選定しなければならない。」と定めており、代表取締役として選定された者に社長という名称を付すかどうかは会社の自由であり、会社法の定めるところではない。従って、社長を選びそれを代表取締役とするのは本末転倒である。社長などいかにも会社の代表権限を有する者と思われるような名称を付した場合については、会社法354条に規定されている。 2 取締役会設置会社は、代表取締役を取締役会で選定すると規定しているので、定款で「株主総会においてのみ選定することができる。」という定めは不適切であるが、「株主総会で選定することができる。」旨の定めを設けることはでき、その定めがあるときは、取締役会と株主総会の双方に選定権限があると解される(登記インターネット№86P61)。

38 取締役会の招集 会366、368

取締役会は社長が招集する。社長に事故があるときは、あらかじめ取締役会の決議により定めた順序により、他の取締役が社長に代わって招集する。 2 取締役会の招集通知は、各取締役及び各監査役に対して会日の1週間(又は3日)前までに発する。ただし、緊急を要する場合は更に短縮することができる。 3 取締役会は、取締役及び監査役の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができる。

取締役会は、代表取締役が招集すると記載するのが、正しい記載であるが、「社長」と記載しても差し支えない。

39 決議の方法 会369

取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その過半数をもって行う。 2 決議について、特別の利害関係を有する取締役は、議決権を行使することができない。

「可否同数の場合は、議長が決する。」は無効である(Q&A251p)。

40 取締役会の決議等の省略 会370,372

取締役が取締役会の決議の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき取締役(当該事項について議決に加わることができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす。ただし、監査役が異議を述べたときは、この限りではない。 2 取締役又は監査役が取締役及び監査役の全員に対して取締役会に報告すべき事 項(ただし、会社法第363条第2項の規定により報告すべき事項を除く。)を通知 したときは、当該事項を取締役会へ報告することを要しない。

1 特定の取締役の出席を会議開催の要件とすることはできない(Q&A251p)。 2 監査役の権限を会計に関するものに限定している場合は、監査役設置会社ではないので、監査役の異議は問題とならない(Q&A253p)。 3 株主総会と異なり(会319)、取締役会決議の省略は、定款に記載しないと利用できない(会370)。 4 意見交換前に議決権行使は相当でないので、書面投票、電子投票は認められていない。(Q&A254p) 5 取締役選任権付き種類株主総会で選任された取締役の出席を、取締役会の開催要件とする定款は許されない(日公連速報2007.1.23)。 6 代理人による議決権行使は、認められない。

41 取締役会議事録 会369,371

取締役会の議事については、法務省令に定めるところにより議事録を作成し、出席した取締役及び監査役がこれに署名若しくは記名押印又は電子署名を行う。

42 取締役会規程 会362

取締役会に関する事項は、法令又は本定款のほか、取締役会において定める取締役会規程によるものとする。

43 監査役   会341

当会社の監査役は、○名とする。

1 人数については、制限がないので「○名以上」とする記載でも差し支えない。 2 取締役会設置会社は監査役を置かなければならない。ただし、公開会社でない会計参与設置会社はこの限りでない(会327)。

44 選任及び解任の方法 会341

監査役の選任は、株主総会において、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(又は3分の1)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数の決議をもって行う。 2 監査役の解任は、株主総会において、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(又は3分の1)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行う。

監査役の解任については、特別決議が要求されている(会309Ⅱ⑦、343Ⅳ)。

45 資格 会335、331

当会社の監査役は、当会社の株主の中から選任する。ただし、必要があるときは(議決権を行使することができる株主の議決権の過半数をもって)、株主以外の者から選任することを妨げない。

監査役の資格を株主に限定することはできない。ただし、公開会社でない株式会社はこの限りでない(会335Ⅰ、331Ⅱ)。

46 任期 会336

監査役の任期は、選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。 2 任期満了前に退任した監査役の補欠として選任された監査役の任期は、その前任の監査役の任期の満了すべき時までとする。

1 監査役が1名の場合、補欠監査役の任期短縮の定めは不適当と解されていたが、会社法336条第3項の文言どおり、「前任の監査役の任期の満了すべき時までとする。」として差し支えない。(Q&A285p、日公連速報2006.10.16) 2 増員として選任された監査役の任期を他の監査役の任期と同一とすることは、できない。

47 監査役の監査の範囲 会389

監査役の監査の範囲は、会計に関するものに限定する。

非公開会社においては、監査の範囲は、会計に関するものに限定することができるとされている(会389)。 

48 会計監査人 会329、337,338、339、396,399 

当会社は、会計監査人を置く。 2 当会社の会計監査人は○名とする。 3 会計監査人の選任及び解任は、株主総会において、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(又は3分の1)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数の決議をもって行う。 4 当会社の監査役は、公認会計士をもって充てる。 会計監査人の任期は、選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。 5 会計監査人は、定時株主総会において別段の決議がなされなかったときは、当該定時株主総会において再任されたものとみなす。 6 会計監査人の報酬等は、代表取締役が監査役の同意を得て定める。 

 (小林健二)

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