民事法情報研究会だよりNo.23(平成28年11月)

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晩秋の候、会員の皆様におかれましてはますますご清祥のこととお喜び申し上げます。 さて、昨年12月の最高裁判決で再婚禁止期間の100日を超える部分が違憲とされたことを受けて、本年6月、再婚禁止期間の短縮等についての民法の一部を改正する法律が公布・施行されました。来たる12月10日に開催予定の後期セミナーにおいては、これら戸籍制度をめぐる昨今の動向を踏まえて、法務局OBの中でも特に戸籍制度の大家として知られている木村三男氏(株式会社加除出版常任顧問・相談役、元大津地方法務局長)を講師にお招きして、ご講演をお願いすることとしております。(NN)

義父は大和特攻の生き残り(会長 野口尚彦)

本年2月の研究会だよりNo.16に井内理事が書いた『小倉馨著「わが航跡」を読んで』の記事で、大和特攻について触れられているが、平成21年に96歳の天寿を全うして亡くなった私の家内の父、酒匂雅三も、大和特攻の生き残りである。義父は、海兵出身(62期)で、太平洋戦争の末期には、駆逐艦初霜の艦長であった。 義父は、敗戦色が濃厚となった昭和19年8月、駆逐艦澤風艦長から駆逐艦初霜の艦長に配置換えとなり、主としてマニラ方面で、補給部隊の船団護衛任務に従事していたが、初霜が昭和20年4月、戦艦大和とともに第二水雷戦隊(旗艦、軽巡洋艦矢矧)所属の駆逐艦8隻のうちの一隻として沖縄水上特攻作戦(坊ノ岬沖海戦)に参加したことに伴い、大和特攻の一員となったものである(義父は、大正2年6月生まれであるから、その当時は31歳で、大和特攻に参加した駆逐艦長の中では最年少であった。)。 大和艦隊は、4月7日12時半頃米軍の航空機部隊に遭遇し、激しい戦闘が行われた結果、大和は2時間ほどで撃沈され、作戦中止が命令された16時頃までに矢矧のほか駆逐艦4隻を失い、3700名余の戦死者を出しているが、初霜は、大和の通信施設が敵の第一波の空襲で破壊されその通信代行を命じられたことから大和に隣接していたにもかかわらず、軽傷者3名以外に329名の全乗組員に被害はなく、沈没した駆逐艦浜風の生存者256名及び矢矧の生存者57名を救助して、翌8日に無傷で佐世保港に帰投している。初霜が唯一戦死者なく生還できたのは、敵の攻撃が7万トンの巨艦である大和に集中し、近接する1400トン足らずの初霜はあまり攻撃を受けなかったものと思われるが、義父の言によれば、それでも大和を狙ってくる雷撃機は護衛している駆逐艦の外側から何本も魚雷を落としてくるので、初霜は何本もの魚雷をスピードを上げて回避し、あるいは深く潜行して向かってくる魚雷は艦底を通過させたとのことであり、また、ぐるりを敵機群に取り囲まれ、投下してくる爆弾を瞬時の判断で舵を切りスピードでのたうち回って避け、あるいはスピードの速いロケット弾を発射しようと急降下の体勢にある敵機を防ぐため機銃弾の束を撃ちあげた等の話しを聞くと、初霜に1発の被弾もなかったことは希有な幸運であったのは紛れもない事実であろう。 大和特攻は、海戦の主役が戦艦から飛行機に移っている中で、1機の護衛戦闘機も無しに、戦艦大和とこれを護衛する巡洋艦、駆逐艦の全10隻からなる特攻艦隊を沖縄めざして出撃させ、全員玉砕して米軍の本土上陸を阻止しようとする成果の見込めない悲壮な作戦であり、その結果延べ386機の米艦上機の波状攻撃にさらされ、大和以下6隻の艦船を失い、多数の戦死者を出している。 義父は、終戦直後の昭和21年、横浜で起業し、そこそこの成功を収め、96歳で亡くなるまで矍鑠としていたが、生前折に触れ、初霜が大和特攻で唯一死亡者を出さずに乗り切った駆逐艦であったこと、無事戻った駆逐艦は「雪風」、「冬月」、「涼月」、「初霜」と寒い名前の艦ばかりで、これからの日本を象徴するようで不思議な感じがしたといったことを話していたことが思い出される。 ところで、大和特攻で海軍少尉として大和に乗り組み生還した吉田満氏の戦記小説『戦艦大和ノ最期』が昭和27年8月に創元社から出版され、その後昭和49年に北洋社から決定稿が出版されているが、戦記文学の名著と評価されるとともに、著者の実体験に基づいて大和の出撃から沈没までの様子を克明に記したものとして引用されることが多かった。 しかし、この中に、大和沈没後に駆逐艦初霜の救助艇に救われた砲術士の目撃談として、救助艇が満杯となり、なおも多くの漂流者が船べりをつかんだため、指揮官らが「用意ノ日本刀ノ鞘ヲ払ヒ、犇メク腕ヲ、手首ヨリバッサ、バッサト斬リ捨テ、マタハ足蹴ニカケテ突キ落トス」という記述があることから、初霜の通信士で艦長の命令で内火艇(内火艇は1隻しかなかった。)を下ろし艇を指揮して救助に当たった松井一彦氏(戦後東大を出て、弁護士を開業している。)は、当初静観していたが、昭和42年、『戦艦大和ノ最期』が再出版されると知って、このあまりにも残虐な描写に、「初霜は現場付近にいたが、巡洋艦矢矧の救助にあたり、大和の救助はしていない」とした上で、「別の救助艇の話であっても、軍刀で手首を斬るなど考えられない」と反論し、著者の吉田氏に削除を求める書簡を送り、その理由として(1)海軍士官が軍刀を常時携行することはなく、まして救助艇には持ち込まない(2)救助艇は狭くてバランスが悪い上、重油で滑りやすく、軍刀などは扱えない(3)救助時には敵機の再攻撃もなく、漂流者が先を争って助けを求める状況ではなかった-と指摘している(平成17年6月20日産経新聞朝刊の記事)。これに対し吉田氏からは「戦争は非情なものであることを書いたもので、次の出版の機会に削除するかどうか考えてみよう」との返書が届いたが、結局、昭和54年に吉田氏は病気で亡くなり、手首斬りの記述は変更されなかった。 これについて、初霜の艦長であった義父は、漂流者の救助作業は夕方の6時ころには終えており、洋上はまだ明るく、見渡す限り浮かんでいる人を救助艇で引き上げ、何度も運んで生存者の全員を救助したので、あり得ないことであると言っている。 『戦艦大和ノ最期』のこの記述については、江藤淳が『落ち葉の掃き寄せ(一九四六年憲法 その拘束)』の中で触れているように、昭和21年12月に雑誌「創元」の創刊号に掲載の予定だった『戦艦大和ノ最期』の初稿(初稿にはこの手首斬りの記述がない。)がGHQの検閲組織であるCCDの事前検閲を受け、軍国主義的であるという理由で発禁処分になったことから(江藤は、検閲官のこの叙事詩的著作に潜む「偉大な戦艦に対する哀惜の念」に対する嫉妬が、軍国主義的という烙印を押すことになったと見ているようである。)、再三にわたり改稿して出版の努力を繰り返す中で、戦前の日本を悪と見る戦後思想に影響を受けて、創作を加えることになったものと推測される。 昨今話題となっているいわゆる従軍慰安婦問題や南京事件など、戦前戦中の旧日本軍の行為をめぐっては、非人道的に誇張され、信憑性のない話が史実として独り歩きしている向きがあるが、この「手首斬り」もその例と言える。 『戦艦大和ノ最期』は、現在では著者自身の体験に伝聞あるいは創作を加えたフィクション小説と一般に理解されているようであるが、創作といえども一旦活字となって後世に伝えられると、謂われのない不名誉な指弾を受ける者が出て来ないとは限らない。 戦後日本は、悲惨な戦争体験を糧に不戦を誓い、平和を守り続けてきた。終戦直後の昭和20年10月生まれの私でさえも昨年古稀を迎え、早晩戦争を体験した者がいなくなる状況の中で、その体験を語り伝え、もう二度と戦争の惨禍を繰り返してはならないという不戦の誓いを堅持していかねばならないが、松井氏が言うように、「戦前戦中の出来事を否定するあまり、当時の人間性まで歪められて伝えられていることが多い」ということも、改めて考えてみる必要があるのではないだろうか。

今 日 こ の 頃

このページには、会員の近況を伝える投稿記事等を掲載します。 

「英語検定」に挑戦(樋口忠美)

1 平成23年に公証人を退官し、毎日を自由に使える日がようやくやって来た、これで旅行やゴルフも好きな時にできると喜んで、海外旅行などにも出かけましたが、その後、胃の3分の2を取るという手術をしましたので、日々の健康にはそれなりに気をつけています。とはいっても、日々の生活は図書館から借りてきた小説を読んだり、テレビを見たり、時々ゴルフをしたりなど、緊張感のない暮らしであり、そのせいか人の名前がなかなか出てこず、「あれ」、「それ」といった代名詞が頻繁に出てくるようになって「ボケ」が始まったのではと心配しており、いま我が家の会話で一番多く出てくる単語は「ボケ」ではないかと思っているほどです。 2 「ボケ」ないための予防策として効果があるかどうか分かりませんが、頭を使うことがいいのではないかと思い、そしてできれば少し楽しみながらやれるものはないかと探したところ、「英語検定」の3級(中学卒業程度)であれば何とかなるのではないかと考え、今年の3月頃から問題集などを買ってきて6月の一次試験に向けて勉強を始めました。ただ中学卒業程度の試験とはいっても、この試験の内容は、中学校で学ぶ英語の単語、熟語、文法とこれを使った文章についてテストするもので、学校を卒業して以来何十年も英語の勉強をやったことがない者にとっては結構難度の高い試験です。しかも二次試験では面接官と一対一で英語のみで質疑応答を行うヒアリングがあるのです。 3 一次試験はペーパーテストで、試験会場に行くと受験生のほとんどが中学生か高校生で、その中に数人の社会人がいる程度で、私のような年配の者は一人も見当たらず、会場に着いたときには係員から「受験生の保護者の方ですか」と聞かれたくらいです。 幸い一次試験に無事合格し、二次試験を受験することになったのですが、面接官と一対一のヒアリングに自信がなく前日の夜はよく眠れないほどでした。二次試験では面接官と10分間くらい英語での質疑応答があり、うまく聞き取れないところもありましたので、結果がどうなるか少し不安でしたが、運良く合格することができました。 東京オリンピックを控えて外国人が増加していますが、この程度の英語力で外国人と意思疎通ができるとはとても思えませんので、ボケないためにもさらに上の級の試験に挑戦していきたいと思っているところです。 

見て見ぬふりする〇〇〇,見て見ぬふりできぬ〇〇〇(由良卓郎)

1 ある街に住んでいたとき,自転車で買い物に出かけた。幅の広い国道の横断歩道の近くに4~5名の紺色の制服を着た〇〇〇がいた。これから何かの取締りするように見受けられた。そこに自転車の二人乗りグループがやってきて,平然と横断歩道を横切っていった。しかし,紺色の制服を着た〇〇〇は,二人乗りの自転車に全く気付いていないかのようであった。私は,近くにいた比較的若い〇〇〇に,なぜ二人乗りを注意しないのかと尋ねところ,次のような言葉が返ってきた。 ① 先輩の〇〇〇が注意しないのに,私が注意するわけにはいかない。 ② 注意しても,ほかにもやっているじゃないかと言われる。 2 私は,自転車置場で探しやすく,また盗難に遭いにくいと思い,オレンジ色の少々目立つママチャリを使っている。 ある日,その自転車に乗って帰宅していたら,向こうから白と黒のツートンカラーの自動車がやってきて通り過ぎた。しばらくして横断歩道の手前で信号待ちをしていると,後ろから,「もしもし」と,先ほどのツートンカラーの自動車の乗務員と思われる制服を着た二人組の男に声を掛けられた。「何ですか」と聞くと,「駅前の駐輪場は,自転車の盗難が多いから,二重ロックをするように」とのこと。わざわざ戻ってきて,二重ロックの心配をしてくれたのである。そんなに親切にしていただいたのは初めてであったが,もしかして,自転車泥棒と間違われたのかも知れない。自転車泥棒に遭わないために目立つ自転車に乗っていたのに!! 自転車の色と乗っている者のバランスがよほど悪かったのだろう。いろいろやりとりがあって,二重ロックの心配をする前に,車道の右側を走っている自転車を注意すべきではないかと言うと,ちゃんと注意していると言う。その矢先,車道の右側を自転車がすいすいと走り過ぎていった。私は,その二人組に,ほら,注意しないじゃないかと言ったが,彼らは,まるで気付いていないかのように自転車に乗った人に注意しようともせず,私の指摘にも何の反応も示さなかった。 3 ある日,某所で,広場のように幅の広い歩道を自転車に乗ってゆっくりと走っていたら,向こうから自転車に乗って向かってきた老人が何かを大声で叫んだ。お互い赤信号で止まったが,青信号になって走り出したら,先ほどの老人が,すれ違いざまに,やはり大声で何かを叫んだ。しかし,それは,私にではなく,私の前を自転車で2列走行していた母娘に対してであった。その時は,その老人が何を叫んだのかよく聞き取れなかったし,その母娘も「きちんと止まったのにね」などと話して首を傾げていた。が,後刻気付いた。その老人は,「自転車は2列で走るな」あるいは「自転車は一列で走れ」と叫んでいたのである。 4 ある日,街中で,自転車に乗った若者が向こうからやってきて,私の目の前で,路端の生垣の上に空になったペットボトルを捨てた。私は,思わず,彼を呼び止め,注意し,ペットボトルを回収させた。彼は素直に「すみません」と謝り,ペットボトルを捨てた場所まで戻り,拾ってきた。その後,彼がそのペットボトルをどうしたかは知らないが,私も,先ほどの大声で何かを言っていた老人に少しずつ近付いているような気もする。 後日,そのことを知人に話したら,相手によっては何をされるか分からないから,そういうことはあまり言わない方がよいと言われた。 5 皆が気付いたことを指摘でき,誰もが節度をもった行動ができるような街になってほしいと願っているが,その願いとは逆の方向に向かっているように感ずるこの頃である。

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実 務 の 広 場

このページは、公証人等に参考になると思われる事例を紹介するものであり、意見にわたる個所は筆者の個人的見解です。 

No.41 株式会社(閉鎖会社)モデル定款と認証の際の留意事項(その3)

株式会社(閉鎖会社)の定款について、一般的な記載例と留意事項を掲げ、若干の解説を試みるとともに、実例の中には間違った事例も数多くみられるので、その事例も紹介し、今後の定款認証に参考になると思われる事項を記載したものである。 例文中( )書きは、そのような記載であっても差し支えないことを示している。 凡例 Q&A 日公連定款認証実務Q&A 会報  東京会報 研修  日公連専門科研修

49 取締役責任免除規定 会423、424、425、426

当会社は、会社法第425条の規定により、株主総会の決議をもって、同法第423条第1項に定める取締役、会計参与、監査役、又は会計監査人の責任を法令の限度に置いて免除できる。 2 取締役(取締役であった者を含む。)が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がない場合において、責任の原因となった事実の内容、当該取締役の職務の執行の状況その他の事情を勘案して特に必要と認めるときは、会社法第425条第1項の規定により免除することができる額を限度として取締役(当該責任を負う取締役を除く。)の過半数の同意(取締役会の決議)によって、当該取締役の会社法第423条第1項の損害賠償責任を免除することができる。 3 前項の規定に基づいて取締役の責任を免除する旨の決議を行ったときは、取締役は、遅滞なく会社法第425条第2項各号に掲げる事項及び責任を免除することに異議がある場合には一定の期間内に当該異議を述べるべき旨を株主に通知しなければならない。ただし、当該期間は1か月を下ることができない。 4 総株主(責任を負う取締役であるものを除く。)の議決権の100分の2以上の議決権を有する株主が前項の期間内に異議を述べたときは、第1項の規定による定款の定めに基づく免除をしてはならない。 5 当会社は、会計参与が職務を行うにつき、善意でかつ重大な過失がないとき等法令に定める用件に該当する場合には、当該会計参与との間に、会社法第423条第1項による賠償責任を限定する契約を締結することができる。ただし、当該契約に基づく賠償責任は、金○万円以上で予め定める額又は法令が定める額のいずれか高い額とする。

1 任務懈怠の責任は、総株主の同意がなければ免除できない(会424)。 2 監査役の監査の範囲を会計に限定する旨の定款の定めがある場合は、監査役設置会社ではない(会2⑨)。従って、会計に限定した監査役を設定している場合は本条の適用なし。 3 第2項の記載ができるのは、取締役2名以上であり、「取締役1名以上」は不可である(研修会番号26)。 

50 報酬規定 会361

取締役(及び監査役)の報酬、賞与その他の職務執行の対価として当会社から受ける財産上の利益は、株主総会の決議によって定める。

1 取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益について、定款に当該事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定める(会361Ⅰ)。 2 定款で「○万円を限度とする。」旨の規定をおくことは差し支えない。

51 剰余金の配当及び除斥期間 会105、445、446、453、454、458、459、461

剰余金の配当は、毎事業年度末日現在における最終の株主名簿に記載された株主又は登録株式質権者に対して行う。(前項に定める場合のほか、当会社は、基準日を定め、その最終の株主名簿に記載又は記録のある株主等に対して、剰余金の配当を行うことができる。) 2 剰余金の配当は、支払い開始の日から満○年を経過しても受領されない場合は、当会社はその支払い義務を免れるものとする。 3 未払いの剰余金の配当には、利息を付けないものとする。

1 株主は、その有する株式につき、剰余金の配当を受ける権利、残余財産を受ける権利、株主総会における議決権を有する(会105Ⅰ)。公開会社でない会社は、株主ごとに異なる扱いを行う旨を定款で定めることができる(会109Ⅱ)。 2 取締役会設置会社であれば、一事業年度の途中において、一回に限り、取締役会の決議で中間配当することができる(会454Ⅴ)。 3 株主総会の決議による場合は、定款の定めは不要であり、回数制限もない(会454Ⅰ)。 4 取締役の過半数の決議で利益配当をすることはできない。会社法第454条第1項により「株主総会の決議」によると定め、剰余金の配当に関する機関の特則としては、会社法第459条により「取締役会」と規定しているので、取締役が剰余金の配当を定めることはできない。 5 除斥期間は不当に短いものでなければ差し支えない。(Q&A310)「3年」と規定する例がほとんどである。 6 株主に対する配当の原資は、利益に限られないことから、会社法では「剰余金の配当」としている。定款も、利益配当ではなく、剰余金の配当とすることが適当である。(Q&A303p) 7 剰余金の配当は、株主総会の決議により、回数の制限を設けずに、年に何回でもすることができるとされた(会454)。但し、会社法の定める中間配当は、年1回である。(会454Ⅴ) 8 決定機関による整理 ⑴ 株主総会決議 定款の定めは必要なく、何回でも可能である。(会454Ⅰ) ⑵ 会計監査人設置会社で定款の定めある等一定の要件を満たす場合は取締役会決議によるものは、何回でも可能である。(会459Ⅰ④) ⑶ 取締役会設置会社で定款の定めがある場合において取締役会決議による中間配当は、年1回である。(会454Ⅴ) 9 剰余金配当の要件 ⑴ 会社の純資産額が300万円を下回らないこと(会458) ⑵ 分配可能額の範囲内であること(会461) ⑶ 配当により減少する剰余金の額の10分の1を資本準備金又は利益準備金として組み入れること(会445Ⅳ) 10 剰余金の配当を受ける権利又は残余財産の分配を受ける権利のいずれか一方が完全に与えられていない株式であっても、他方の権利が与えられるものであれば、差し支えない。(登記インターネット83 35p) 11 除斥期間について支払い開始日か否かについて(公証100 243p) 

52 事業年度 会2㉔、296、435、会社計算規則59Ⅱ

例1 当会社の事業年度は、毎年○月1日から翌年○月末日までとする。 例2 当会社の最初の事業年度は、会社成立の日から平成○年○月末日までとする。 (誤っている例) 当会社の事業年度は、毎年1月1日から翌年12月末日までとする。 注 1年を超えている。

1 営業年度が事業年度に整理された。 2 「会社成立の日から」が正確な記載であるが、設立でも誤りではない。 3 原則として1年を超えることはできないが、1年を2事業年度以上にすることは差し支えない。(Q&A300p) 4 事業年度を変更する場合は、1年6月まで延長が可能である。(Q&A300p) 5 最初の事業年度の記載を、「成立の日から翌年○月末日」と記載すると、1年を超える場合があるので、誤りとなる場合がある。但し、定款認証、登記の時期から1年を超えないことが明らかな場合は、差し支えない。 (各事業年度に係る計算書類) 6 会社計算規則第59条第2項に「各事業年度に係る計算書類及びその附属明細書の作成に係る期間は、当該事業年度の前事業年度の末日の翌日(当該事業年度の前事業年度がない場合にあっては、成立の日)から当該事業年度の末日までの期間とする。この場合において、当該期間は、一年(事業年度の末日を変更する場合における変更後の最初の事業年度については、一年六箇月)を超えることができない。」と規定されている。

53 設立に際して出資される財産の価額(又は最低額)   会27④、28、32 

例1 当会社の設立に際して、出資される財産の価額(又は最低額)は、金○○万円とする。 例2 当会社の設立に際して出資される財産の価額(又は最低額)、発行する株式の総数及びその発行価額は次のとおりである。 出資される財産の価額(又は最低額) 金○○万円 発行する株式の総数    ○○株 発行価額(1株につき) 金○万円

1 絶対的記載事項である(会27④)。 2 出資される財産の価額は、出資されなければならない価額のことであり、最低額はそれ以上の出資が予想される場合のことである。 3 出資される財産の価額を定めた場合は、出資の額はその価額に限られることになり、これを超える金銭の払い込みがあっても、設立時発行株式の割当はできず、定款を変更して出資される財産の価額を変更する必要がある。最低額であればそのような問題は生じない。 4 登記申請の際、募集設立については、払込金保管証明書が必要であるが、発起設立については、払込取扱銀行等が作成した保管金受入証明書、又は設立時代表取締役が作成した払込証明書に預金通帳の写し又は取引明細書を添付したもので足りる。 5 設立前でも、発起人において払込金を引き出して当該会社の設立費用として使用できる。 6 設立時における預金口座名義は、発起人代表者名義にならざるをえない。登記申請の際、設立時代表取締役名義で、払込みがあったことを証する書面を作成し(払込金額全額の払込みがあったことを証明する旨、払込みがあった金額の総額、払込みがあった株数、1株の払込金額を記載)、預金口座通帳の写しを合綴して、提出することを要する。 7 預金口座通帳に記載されている年月日は、定款認証後のものとなるはずであるが(定款認証を受けて、それから設立に際して出資される財産が預金口座に振り込まれることとなる。)、設立登記申請の際、少なくとも「定款作成日以降でなければならない。」との扱いであるから、注意を要する。

54 資本金 会32、445

当会社の設立時資本金は、金○○万円とする。 2 前条の払込みに係る価額のうち、金○○円は、資本準備金とする。 (適切ではない例)認証可 当会社設立時の資本金の額は、設立に際して株主となる者が当会社に対して払込み又は給付をした財産の額とする。 前項の払込みや給付に係る額の2分の1を超えない額は資本金として計上しないことができる。 注 資本金の額を記載すべきであるが、無効ではない。

1 資本金の額は、払い込み又は給付をした財産の額であるが、その額の2分の1を超えない額、つまり半額に満たない額は、資本金として計上しないことができるとされているので(会445Ⅰ、Ⅱ)、資本金として払込額の2分の1の額を記載している場合は、差し支えない。払込額の2分の1未満の額を記載している場合は、誤りである。 2 設立時資本金の額は、原則として出資された財産の額であり(445)、「出資される財産の価額」の場合は、これを超える出資はできないが、「最低額」の場合は、これを超える出資は可能であり、その額を超える額が資本金として記載される例もある。 3 成立後の株式会社の資本金が0円になることはありえるが、設立時においては、1円以上払い込むこととなるので、資本金0円はありえない。(Q&A318p) 4 預合は有効(日公連速報2007.1.23)

55 設立に際して発行する株式 会32,37

当会社の設立時発行株式の数は○○株とし、その発行する価額は1株につき金○万円とする。

1 商法では「設立に際して発行する株式」が絶対的記載事項であったが、会社法では任意的記載事項となった。 2 設立時発行株式の総数は、発行可能株式総数の4分の1を下ることができないとされているが、公開会社でない場合は、この限りでないとされているので(会37Ⅲ)、設立時発行株式の総数は、発行可能株式総数の範囲内であれば、問題ない。会社成立後の株式発行を予定しない会社にあっては、発行可能株式総数と同じ数を設立時発行株式の総数とする会社の例もある。 3 発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数、設立時発行株式と引換に払い込む金銭の額、成立後の株式会社の資本金及び資本準備金に関する事項は、定款に定めないと発起人全員の同意を得て定める必要があるので、定款に定めておくことが相当である(会32)。

56 設立時の役員 会38、39、40

当会社の設立時取締役は次のとおりとする。 住所 ○○○○ 設立時取締役 甲野太郎 住所 ○○○○ 設立時取締役 乙野次郎 設立時代表取締役 甲野太郎 注 取締役会(監査役会)設置会社は必ず3名以上が必要である。

1 発起設立の設立時役員の選任手続き ⑴ 設立時取締役は、会社成立後当然に取締役になるので、定員どおりの取締役が記載されている必要がある。発起人は出資の履行後、遅滞なく設立時取締役を選任しなければならない。取締役会設置会社は取締役が3人以上でなければならない(会38Ⅰ、39Ⅰ)。 ⑵ 監査役設置会社である場合は、設立時監査役を選任しなければならい。監査役会設置会社であるときは、設立時監査役は3人以上でなければならない(会39Ⅱ) ⑶ 選任は、原則として、発起人の議決権の過半数で決定するが(会40Ⅰ)、予め定款をもって設立時取締役、設立時監査役等を定めることができ、定款で定められた者は、出資が完了したときに、設立時役員に選任されたものとみなされる(会38Ⅲ)。 2 募集設立の設立時役員の選任手続き ⑴ 設立時役員は、創立総会で選任しなければならない(会88)。 ⑵ 定款に直接定めることの可否については、会社法第88条が直接定めを禁止したものと解することは相当でなく、そのような定款の定めも許される。(Q&A 329p、相沢・登記情報540 16p、松井・商業登記ハンドブック66pは疑問であると解説) 3 発起設立時役員の解任手続きは、発起人の議決権の過半数をもって解任できる。設立時監査役は、3分の2以上に当たる多数をもって決定する(会42、43Ⅰ)。募集設立の設立時役員の解任は、議決権を行使できる設立時株主の議決権の過半数であって、出席した当該設立時株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行う(会73Ⅰ)。 4 設立時取締役は設立しようとする会社が取締役会設置会社である場合には、設立時取締役の中から株式会社の設立に際して代表取締役となる者を選定しなければならない(会47)。設立時代表取締役を原始定款に定めることができる。(Q&A246p、民事月報61.7 20p) 5 設立時役員について ⑴ 発起設立 定款に設立時取締役、設立時代表取締役を記載することができる。 ① 設立時取締役 発起人が出資完了後設立時取締役を選任(会38Ⅰ、40Ⅰ) ② 設立時代表取締役 取締役会設置会社のみ規定(会47Ⅰ) (非取締役会設置会社について)(民事月報61・7 20p) ⅰ 定款に選定方法の定めがない場合は発起人によって設立時代表取締役を選定 ⅱ 定款に定めがある場合次のいずれでも可(定款に直接記載する方法、発起人によるという選定、発起人の互選によるという設定、設立時取締役の互選によるという選定) (取締役会設置会社の場合) 設立時取締役の中から設立時代表取締役を選定(会47Ⅰ)。この規定は、設立時取締役の中から選ぶことを決めただけで、設立時取締役の互選によらなければならないことまで決めたものではなく、定款で定めること可能。 ⑵ 募集設立 定款に設立時取締役、設立時代表取締役を記載することができる。 創立総会で設立時取締役を選任(会88)するとされているが、発起人が定款に設立時取締役を記載していることまで禁じる趣旨ではない。(研修 番号3 4) 6 取締役会設置の可否いずれであろうと会社設立登記前には取締役会は存しない。 7 最初の取締役の任期の短縮あるいは伸長は可能である。(Q&A328p)監査役は4年以内に終了する事業年度という縛りがあるので、留意すること。(Q&A329p) 8 最初の取締役は設立時取締役に訂正させるべきである。(Q&A330p)

57 発起人の氏名及び住所 会27⑤

例1 発起人の氏名及び住所は、次のとおりである。 住所 ○○○○ 甲野太郎 例2 当会社の発起人の氏名又は名称及び住所、発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数及び設立時発行株式と引換に払い込む金銭の額(現物出資)は次のとおりである。 住所 ○○○○ 甲野太郎 割当てを受ける株式の数 ○○株 払い込む金銭の額    ○○万円 住所 ○○○○ 乙野次郎 割当てを受ける株式の数 ○○株 払い込む金銭の額    ○○万円 注 中国の漢字(含む、簡体文字)で日本の漢字にないものは、日本の漢字に直して記載する。日本の漢字にないものは、カタカナ書きにする。

1 発起人は、最低でも1株を引き受けなければならない。設立時発行の株式数に相当する出資が行われても、1株も引き受けない発起人は設立に参加することはできない。逆に、1株引き受ければ、発起人としての責任を果たしたこととなる。出資される財産又はその最低額は、1円以上であれば差し支えないので、出資金の全額払込に支障がある場合に備えて最低額を記載し、発起人の引受株式数を記載しない方法がある。(Q&A317p) 2 印鑑登録証明書には、日本の漢字に直さないで中国の漢字のまま記載されているものがあるので、そのようなときは、日本の漢字に引き直して記載させる必要がある。日本の漢字に引き直せない文字は、カタカナ書きすることとなる。 3 未成年者が発起人となる場合については、次のとおり 発起人は、未成年者Aと父母BCの例 ⑴ 父母の同意で処理する場合 未成年者15歳以上の場合、判断もでき印鑑証明書の交付可能なので、原則として父母の同意で処理。その場合の取扱いは、下記のとおり。但し、父母の代理による処理も可、その際は、⑵父母の代理で処理する場合を参照のこと。 ① 紙定款の場合(本人申請) 《定款末尾の記載》 発起人A 押印 発起人B兼Aの法定代理人父B 押印 発起人C兼Aの法定代理人母C 押印 注 父母の署名押印で同意と判断 《提出書類》 Aの印鑑証明書 Aの戸籍謄本(BC記載) B・Cの同意書(定款記載の場合は不要) B・Cの印鑑証明書 ② 電子定款(司法書士X作成代理) 《定款末尾の記載》 発起人A、発起人B、発起人C ABCの定款作成代理人X Xの電子署名 《委任状》 A(法定代理人父B・法定代理人母Cが同意)・B・C→X 《提出書類》 Aの印鑑証明書 A戸籍謄本(BC記載) B・Cの印鑑証明書 B・Cの同意書(委任状記載の場合は不要) ⑵ 父母の代理で処理する場合 未成年者15歳未満の場合は、判断未熟、印鑑証明書の交付不可なので、原則として父母の代理で処理。その場合の取扱いは、下記のとおり。但し、⑴父母の同意による処理も可、その際は父母の同意による処理を参照のこと。 ① 紙定款の場合(本人申請) 《定款末尾の記載》 発起人A (押印不要) 発起人B兼Aの法定代理人父B 押印 発起人C兼Aの法定代理人母C 押印 注 父母の署名押印で代理権ありと判断 《提出書類》 (Aの印鑑証明書不要) Aの戸籍謄本(BC記載)と住民票(同居でない場合) B・Cの印鑑証明書 ② 電子定款(司法書士X作成代理) 《定款末尾の記載》 発起人A、発起人B、発起人C ABCの定款作成代理人X Xの電子署名 《委任状》 発起人Aの法定代理人父B及び発起人B 押印 発起人Aの法定代理人母C及び発起人C 押印 →X 《提出書類》 (Aの印鑑証明書不要) A戸籍謄本(BC記載)と住民票(同居でない場合) B・Cの印鑑証明書 4 外国人が発起人になる場合の取扱い(会報27.5 47p) 外国人が発起人となって会社を設立する場合の定款認証については、当該外国人が外国に在住している場合と、国内に在住している場合に区別して考え、更に、本人申請か、代理申請か、代理申請であれば、作成代理によるか、認証代理によるか、そして申請方法は、電子定款で申請するか、紙定款で申請するのかによっても異なる。 それぞれの場合に区分して留意すべき事項を考えておく必要があるが、公証役場に対して申請する行為それ自体は、発起人が日本人であるか否かで異なる点はなく、問題なのは申請行為に至るまでに準備しなければならない資料等に関してのことであるから、この点を中心に、⑴発起人が外国に在住し、国内に在住している司法書士等(以下、単に「司法書士」という。)に定款作成を委任する例として、作成代理(電子申請と紙で申請)をとりあげ、また、⑵発起人が国内に在住し、司法書士に定款認証を依頼する例として、作成代理(電子申請と紙で申請)及び認証代理をとりあげ、それぞれ手順について説明することとする。なお、嘱託人が外国法人の場合については、必要な範囲内で述べることとする。 因みに、外国人の署名押印については、外国文字による署名で足り、押印は不要である。(外国人の署名押印及び資力証明に関する法律1条)(日公連定款認証実務Q&A 6p参照)また、行為能力は日本法で判断することとされている(日公連定款認証実務Q&A 29p参照)。 <発起人が外国に在住している場合  作成代理> A 発起人が外国に在住している場合であって、日本に居住している司法書士に、定款認証手続きの一切を委任し、司法書士が代理人となってその手続きを行うとき。 ⑴ 電子申請による場合 ① 司法書士が委任者の意向を受けて、定款の原案を作成し、それを公証役場に送付し、事前に公証人の点検を受ける。いきなり定款認証の手続きにはいると、訂正があった場合、却下となり、再度やりなさなければならず、時間を要するからである。その際、司法書士は、管轄法務局にも、登記申請の際の必要書類等につき疑問があれば確認する。 注 定款に発起人としての外国人の氏名を記載するとき、定款は、日本の文書であるので、日本文字である漢字、カタカナ、ひらがなにより記載するのが原則である。定款に日本文字以外の文字の使用が認められるのは、実務で認められている商号、目的、住所に限られており、それ以外の箇所では、日本の文字により表記することになる。従って、外国人の氏名は、カタカナ表記となるが、後で訂正することのないよう外国人氏名の名前を正確に聴取し、記載することとなる。なお、韓国、中国、台湾のよう漢字圏にあっては、日本の漢字により記載しても差し支えない。(登記インターネット102 48p) ② 司法書士において、「発起人から司法書士に対する委任状」(電子申請用の委任状)を作成(日付、発起人の住所・氏名は空欄) ③ 定款(①で作成したもの)と委任状(②で作成したもの)を編綴して袋とじ(1部) ④ 袋とじしたもの(1部)を発起人に送付 その際、次の事項を指示する。 指示1 委任状に日付を記載し、委任者欄に外国人発起人が住所を記載して氏名をサインすること(法人の場合は、法人の本店所在地、法人の商号を記載し、代表者がサイン)  併せて適宜の箇所に捨てサイン(捨印にかわるもの)。但し、外国においては、捨てサインの習慣がなく、訂正さえなければ不要なので、無くても差し支えない。 指示2 委任状及び定款を袋綴じした貼合せ部分に発起人が割サイン(割印の代わり) (法人の場合は、法人の代表者がサイン) 割サインは、割印にかわるものであるが、外国においては、割サインの習慣がないので、それに代わるものとして、通し番号(○/○)を記載し、全てのページが連続していることがわかるようにしておくことでも差し支えない。 指示3 委任状のサインについて、「当職の面前でサインした」旨の当該国の領事等公的機関若しくは当該国の公証人の認証を受ける。又は、当該国の領事、公証人作成にかかるサイン証明書を提出する。 注1 サイン証明の有効期間については、印鑑登録証明書の有効期間3月と同様に考えるべきであるが、法務局によって若干取扱いが異なるようである。 当該国に印鑑登録制度があれば、署名しそこに印鑑を押印することで差し支えない。その場合は、前述したサインの箇所には、個人、法人の代表者が署名(又は記名)するとともに印鑑を押印させ、印鑑証明書を提出させることとする。印鑑証明書については、当該国の権限ある者の証明であることの公的機関の証明書が添付される必要がある。日本の登記事項証明書が外国で通用するためには、登記官印を法務局長が証明し、その法務局長印を更に外務省で証明しなければならず、それと同様に当該国の公印証明が付されている必要がある。しかしながら、実務の慣行として、外国で発行された印鑑証明書について、必ずしも「当該国の権限ある者の証明であることの公的機関の証明書」が添付されなければならないとの取扱いはされていない。なぜ、このような取扱いとなっているのかは定かでないが、定款の認証については、そこまで要求しなくても差し支えないとして、今日に至っているものと推測される(民事法情報研究会だより№24・平成28年12月号「実務の広場」№45参照)。中国は、地域によって、印鑑登録制度があり、その地域の者が発起人となる場合は、氏名、印影、住所、生年月日が記載された書類を公証人が証明する方式が一般的である。韓国は、印鑑登録制度があるが、印鑑証明書には生年月日が記載されていないので、パスポートの写し(本人の相違ない旨の記載と押印)等で補う必要がある。 注2 法人の場合は、公証人等の証明した「(代表者の)サイン証明書」のほかに、法人の資格証明書(又は認証謄本)が必要である。これは、代表者のサインだけでは、その者が代表権限を有していることが確認できないので、代表権限を有していることを証明する資料として、提出させるものである。この資格証明書については、本店所在国における官公署発行の証明書(登記事項証明書等とそれが権限ある機関から発行されたものであることを証する当該国の権限ある機関の公的証明)、又は本店所在国における公証人等の証明書を提出させる。もっとも、資格証明書に代えて、本店所在国の公証人が当該法人の内容を証明したもの(商号、所在地、代表者の氏名、その者が代表権限を有することの記載が必要)でも差し支えない。サイン証明に代えて、「当該個人が代表者に相違ない」旨の当該国の公証人の面前でなされた宣誓供述書を提出させることでも差し支えない。これには本人のサインが必要である。 この件に関し、外国会社であっても、当該会社の目的が新設会社の目的の一部と重複している必要があり、そのことを判断するためにも外国会社の登記事項証明書を提出させる必要があるのではとの疑問もあるかもしれないが、登記実務ではそこまで要求していない。外国会社は、必ずしも日本と制度が同じとは限らず、仮に目的が記載されていたとしても国が異なれば事業も異なり、目的に関して厳格に考えるまでは必要ないとされているものと思われる。 ⑤ 書類がそろったら司法書士が電子申請する。電子定款に、司法書士が電子署名する。 ⑥ 電子申請による定款認証が受理されたら、司法書士(又は、補助者)が認証定款等を受領するために、必要書類(発起人のサイン証明、委任状、司法書士の印鑑登録証明書等)を持参し公証役場に出頭し、手続きをする。 ⑵ 電子申請によらず、紙定款による場合 紙定款による作成代理の場合であっても、定款作成までの手続き(前述した⑴①~④)については、電子申請で記載した場合と同様である。異なるのは、委任状の記載内容(電子定款では無く、単に作成代理用の委任状)と委任状に添付される定款の末尾の記載(電子申請用の記載ではなく、単に作成代理である旨の記載)になっている点のみである。その後の公証役場への認証手続きについては、前述した⑴⑤⑥の箇所が、電子申請ではないので通常の作成代理の際の手続きとなる。 <発起人が日本に在住している場合  作成代理> B 日本に居住している発起人が司法書士に、定款認証手続きの一切を委任し、司法書士が代理人となってその手続きを行うとき 注 発起人が日本人である場合と同様であり、氏名表記を除き異なるところはない。 ⑴ 電子申請による場合 ① 司法書士が委任者の意向を受けて、定款の原案を作成し、それを公証役場に送付し、事前に公証人の点検を受ける。前述したように、電子申請の場合、いきなり定款認証の手続きにはいると、訂正があった場合、却下となり、最初からやり直しとなる。 注 在日外国人の氏名の記載の仕方については、前述1⑴①注に記載のとおりであるが、在日外国人については、通常、印鑑登録証明書が提出され、そこにカタカナ書きされているので、その記載のとおりに記載することとなる。このカタカナ標記は、外国人住民登録の記載に基づき、プリントアウトされているが、文字数の制限から、通常使用する名前がカットされている例もあり、外国語表記の名前が必ずしも正確に表記されていない場合もあるので、留意する必要がある。但し、印鑑登録証明書に記載のローマ字表記とカタカナ書きが極端に異なっている場合であっても、法務局ではそこに記載されているカタカナ書きどおりであれば問題としない扱いである。もっとも、市役所では、本人からの申出で容易にカタカナ書き部分の訂正を認めている。なお、印鑑登録証明書には、ローマ字のみでカタカナ書きにしていないものも散見されるが、その時は、本人に供述させ、読み名を確認する。場合によっては、戸籍謄本、外国人登録証明書、運転免許証等で日本語読みを確認することが望ましい。韓国、中国、台湾のよう漢字圏にあっては、日本の漢字により記載しても差し支えない。(登記インターネット102 48p) ② 司法書士において、「発起人から司法書士に対する委任状」(電子申請用の委任状)を作成(日付、発起人の住所・氏名は空欄) ③ 定款(①で作成したもの)と委任状(②で作成したもの)を編綴して袋とじ(1部) ④ 袋とじしたもの(1部)を発起人に手交 その際、次の事項を指示する。 指示1 日付を記載し、委任者欄に外国人発起人が住所を記載して署名の上、登録印鑑を押印する。日付、住所、氏名は記名でも差し支えない。 指示2 委任状及び定款を袋綴じした貼合せ部分に発起人が割印する。 指示3 発起人の印鑑登録証明書(有効期間3月、1通)を提出させる。有効期間3月との取扱いは、従来6月間とされたものを平成17年4月1日から短縮することとしたものである。これは印鑑登録証明書の有効期間が6月では長すぎ、既に失効しているにもかかわらず利用されるおそれがあるところからこのような措置がとられることとなったものである。 指示4 外国人が印鑑登録していない場合は、印鑑登録するよう指示し、印鑑登録証明書が提出されてから、前記のような扱いをすることとなる。ただ、印鑑登録証明書が提出できない場合に、委任状にサインし、そのサインの真正を担保させるため、本国の権限ある者(本国の公証人等)のサイン証明を提出させる扱いができるかどうかについては、公証人法第60条(公証人法28Ⅱを準用)により可能である。 ところで、当該発起人が代表取締役に就任し、会社の登記申請をすることになると、随所に「印鑑につき市区町村長の作成した証明書を添付しなければならない。」との定めており(商業登記規則61等)、現実には印鑑登録をしておかなければ、会社設立登記すらできないこととなるので、定款認証手続きについても、印鑑登録証明書を添付させる扱いとすることが無難である。 ⑤ 書類がそろったら司法書士が電子申請する。電子定款に、司法書士が電子署名する。 ⑥ 電子申請による定款認証が受理されたら、司法書士(又は、補助者)が認証定款等を受領するために、必要書類を持参し公証役場に出頭し、手続きをする。 ⑵ 電子申請によらず、紙定款による場合 電子申請によらず、紙定款による場合は、定款作成までの手続き(前述した⑴①~④)については、電子申請で記載した場合と同様である。異なるのは、委任状の記載と委任状に添付する定款末尾の記載が電子申請の際の様式ではなく、単なる作成代理による申請の様式になっていることである。その後の公証役場への認証手続きについては、前述した⑴⑤⑥の箇所が電子申請ではないので通常の作成代理の際の手続きとなる。 <発起人が日本に在住している場合  認証代理> C 発起人自ら定款を作成し、日本に居住している司法書士に、定款の認証手続きのみを委任し、司法書士が代理人となってその手続きを行うとき 注 発起人が日本人である場合と同様であり、氏名表記を除き異なるところはない。 ① 発起人が定款を作成し、司法書士に定款を手交する。 注 定款は事実上受任者が作成する例も多いと思われるが、定款に発起人として署名(又は記名)及び押印しているときは、司法書士の代理行為は、認証代理である。 ② 発起人が委任状(認証手続きを委任する旨記載)を司法書士に手交する。 注1 委任状の委任者欄に発起人が住所を記載し、署名の上、登録印鑑を押印する。日付、住所、氏名は記名でも差し支えない。あわせて適宜の箇所に捨印しておく。 注2 印鑑登録証明書の有効期間については、前記2⑴④指示3に記載のとおりである。 注3 外国人が印鑑登録していない場合は、前記2⑴④指示4に記載のとおりである。 ③ 書類がそろったら司法書士が発起人の印鑑登録証明書、定款及び委任状のほかに、司法書士個人の印鑑登録証明書(又は運転免許証等)を提出して認証の手続きをする。 5 その他の例(Q&A28p) ① 成年被後見人の行為は常に取消(民9) 後見人が代理、登記事項証明書、後見人の印鑑証明書 ② 被保佐人は保佐人の同意(民13) 保佐人の同意書、登記事項証明書、保佐人の印鑑証明書 ③ 被補助人 審判で補助人の同意必要の場合 補助人の同意書、登記事項証明書、補助人の印鑑証明書 ④ 任意後見契約の委任者 後見人に代理権を授権している場合は、後見人が代理 ①と同じ ⑤ 法人 法人の目的の範囲内(関連していれば足りる)であることを要する。(公証144 328p) ⑥ 権利能力なき社団(法人格なし)、民法上の組合(法人格なし)、投資事業有限責任組合(法人格なし)、有限責任事業組合(法人格なし)で発起人にはなれない。代表者個人が発起人になる。 注 権利能力なき社団自体が一般社団法人成りする場合については、会報22.4 56p参照。投資事業有限責任組合の組合が発起人になる場合について、Q&A28p参照。 ⑦ 公益法人は、定款又は寄付行為に定められた目的の範囲内であれば、発起人可。 ⑧ 地方公共団体は、公共の目的の範囲内であれば、発起人可。 先例 パン粉協同組合がパン粉株式会社の発起人になれる(36.8.15民事局長回答、全訂詳解商業登記452p)。 6 委任状 住宅金融公庫、又は中小企業金融公庫の委任状には印鑑証明書等によりその成立の真正を証明させる必要なし。 7 発起設立と募集設立の違い 募集設立については、創立総会で設立時取締役の選任、株主の募集をしなければならない等手続き的には複雑であるが、募集設立においても原始定款で設立時取締役を定めることもできるので(Q&A46p、244p)、原始定款における発起設立と募集設立の違いは、会社の設立に際して、発行する株式を全部発起人が引き受けるのか、その一部について引き受けるのかの違いだけである。そこで、資本金全額に相当する額の払込がされていない場合、募集設立であれば、発起人は最低1株を引き受け、他は募集することが想定されるので、資本金全額に相当する額の払込がされていなくても問題ないが、発起設立であれば、発起人が全額を引き受けなければならないので、資本金全額に相当する額の払込がされていなければ誤りである。資本金全額に相当する額の払込がされていない場合は、募集設立なのか、発起設立なのかを聞き、募集設立であれば問題なし、発起設立であれば訂正させることとなる。なお、登記申請の際、募集設立では保管金証明書、発起設立では預金通帳の写しで足りるとされているので、注意を要する。(Q&A46p)預金通帳に記載されている払込日は定款認証の日以降であることを要するとされているが、定款作成日でも差し支えないとの扱いである。(Q&A82p) 8 設立前でも発起人において払込金を引き出して当該会社の設立費用として使用できる。(Q&A81p) 9 発起人の払込金額は、1株の金額×引受株式数を超えても差し支えない。(日公連速報2006.12.15、日公連速報2006.9.14、日公連速報2006.10.25) 10 発起人は必ず印鑑登録証明書を提出しなければならないかについては、事実上の取扱である。(Q&A22p)11 発起人の氏名につき、印鑑登録証明書(川北チャールズ)のとおり訂正すべきと思うが、法務局でイミ-ゴチャールズチエドウでもよいというならそれでも差し支えないとされた例あり。(会報26.7 51) 12 旧姓を使用する旨記載した定款でも差し支えない。(会報27.7 33p) 13 実例 ① 出資金の払込口座通帳の年月日は、定款作成日以降であれば差し支えない。 ② 番地の1の「の」がなくても差し支えない。 ③ 「室」を「号」に記載は、誤り。 ④ 発起人の「氏名」を「名称」に記載は、誤り。 ⑤ 市中銀行が観光開発会社の発起人となることはできない。(研修 番号16) ⑥ 定款の難しい漢字は、カタカナ書きを併記することが無難である。作字しても、法務局のコンピュータに登録されていないと、登記できない。 ⑦ 発起人の株式引受数「0」株は、あり得ない。発起人は出資しなければならない。(Q&A45p、研修 番号32)。 ⑧ 印鑑証明書「髙」のところ、氏名を「高」と記載しても差し支えない。 ⑨ 印鑑証明書「隆(一あり)」のところ、氏名を「隆(一なし)」と記載しても差し支えない。

58 現物出資  28、33、34

当会社の設立に際して、現物出資をする者の氏名、出資の目的である財産、その価額並びにこれに対して割り当てる株式の種類及び株式数は、次の通りである。 (1)出資者 発起人○○ (2)出資財産及びその価額 (3)割り当てる株式の種類及び株式数 注 出資財産の価額が500万円を超えると検査役の検査対象となる。

1 建物賃借権、土地賃借権については、譲渡につき貸主の承諾が必要であり、一般的に譲渡先は誰でもよいという承諾はないので、現物出資の対象にはならない。(会報22.4 22p) 2 「オフィス備品一式」という記載方法では、物件が特定できず、不十分である。 3 「のれん」は事業その他が移転した場合、実物財産の評価額とこれに対して交付した対価の価額の差異をいうとされているので、「のれん」と記載することは適切でない。(Q&A320p)但し、会計規則第106条には貸借対照表に記載してもよい例として「のれん」が記載されている。 4 不動産、自動車、機械その他の動産、有価証券、債権、特許権その他の無体財産権、事業の全部又は一部(のれんはここに入る)は、対象となる。(Q&A319p) 5 期限未到来の債権は、対象となる。(Q&A321p) 6 現物出資は、発起人に限られる。(Q&A321p、登記インターネット83 27p) 7 財産引受とは、発起人が会社のために会社の成立を停止条件として特定の財産を有償で譲り受けることを約する契約をいい、会社成立後直ちに会社が事業を開始できるように設立中に不動産や設備を会社のために準備する行為をいう。(Q&A322p) 8 設立費用とは、設立事務所の賃貸料、設立事務員に対する給与、印刷費、広告費、創立総会の費用、弁護士等による証明費用があり、定款に記載した範囲内で、発起人が成立後の会社に請求することができる。(Q&A322p) 9 定款に変態設立事項の定めをし、その定款について公証人の認証を受け、記載内容につき発起人の申立に基づき検査役の調査(現物出資や財産引受の各対象財産につき定款に記載された価額の総額が500万円を超えない場合は設立時取締役の調査)を受け、不当と認めたときはこれを変更し、変更された事項につき定款を変更することができる。(Q&A323p、会報19.2 39p) 10 現物出資の価額が現実には500万円を超えているときであっても、定款に500万円未満の額で記載すると、検査の対象にはならない。 11 現物出資は、不動産であれば登記簿の記載(建物は家屋番号まで記載)、債権であれば当事者、発生日、債権の種類、債権額、機械であれば種類、型式、製造者、製造年、製造番号が必要であろう。(Q&A325p) 12 敷金返還請求権は、現実に発生している敷金返還請求権であれば現物出資の目的とできるが、現に賃貸借契約が継続中でありいまだ敷金返還請求権が発生していないものであるときは、対象とならない。(商事法務1439 実務相談室 会報22.4 22p 会報22.5 20p) 13 営業権については、「営業のノウハウ、顧客情報」と記載することで足りる。(千葉・松戸支局登記官)

(小林健二)

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