平成25年12月7日開催された臨時会員総会及びセミナーの結果は次のとおりです。
臨時会員総会議事録
平成25年12月7日午後1時30分より、東京都千代田区一ツ橋一丁目2番1号住友商事竹橋ビル11階TKPガーデンシティ竹橋において一般社団法人民事法情報研究会の臨時会員総会を開催した。
議決権のある当法人会員総数146名
総会員の議決権の数146個
出席正会員数(委任状による者69名を含む) 139名
この議決権の総数139個
出席理事 野口 尚彦(議長兼議事録作成者)
同 樋口 忠美
同 小畑 和裕
同 小林 健二
同 佐々木 暁
同 小口 哲男
出席監事 坂巻 豊
同 藤原 勇喜
定刻に至り、司会進行役小林理事が以上のとおり総会員の議決権の過半数に相当する会員の出席があり、本会は適法に成立したので開会する旨を宣した。
野口会長より挨拶があり、次いで定款第15条により会長が議長となって審議に入った。
第1号議案 定款の一部変更の件
議長は、会員総会資料3のとおり、理事の定員上限を12名に変更をする旨などを説明し、改正後の案につきその承認を求めたところ、満場異議なく、これを承認可決した。
1 定款第20条第1号を次のとおり変更すること。
(役員)
第20条 当法人に、次の役員を置く。
(1) 理事 3名以上12名以内
第2号議案 平成25年度事業計画・収支予算書承認の件
議長は平成25年度事業計画・収支予算書について会員総会資料3のとおり概要を説明し、出席会員から特段質問は出なかった。
次いで、議長はその賛否を議場に諮ったところ、満場異議なく、これを承認した。
次いで、議長が、この際、ほかに質問、意見等がないか発言を求めたところ、小柳会員より総会の開催時期、方法についての発言があり、若干の質疑応答がなされた。
以上をもって本会員総会における全議案の審議を終了したので、議長は午後2時閉会を宣した。
会長挨拶
会員の皆様には、師走のお忙しい中、当一般社団法人民事法情報研究会の臨時会員総会及びセミナーにご参集いただき、ありがとうございました。
さて、平成22年5月に旧、社団法人民事法情報センターが突然解散した際には、全国的な法務省・法務局OBの連絡・交流の場の1つがなくなることを惜しむ声が少なからず聞かれたところであり、当時からセンター会員であった者のうち東京近在に住む有志が集まり、センターが果たしてきた機能を引き継ぐようなものを再度立ち上げてはどうかという検討が行われてまいりました。
しかしながら、センターの解散後日を浅くして同様の組織を立ち上げることはいかがなものかという躊躇があったこと、また、センターの組織・財産はすべて整理されておりましたので、すべて一から始めなければならないという問題もありましたので、すぐには結論が得られず、日を重ねてしまいました。
初めから完全なものを目指していては何事も始まりませんので、本年になって、当面の目的を従来センターが行っていた法務省・法務局OBの連絡・交流の場をつくることに限定して一般社団法人を設立し、将来の課題として法務省・法務局OBの有用な知識・経験を活用した事業を実施することを検討していくことといたしました。
このような経緯を経て、すでにご案内のとおり、当法人は、本年5月31日に成立し、その後、趣旨にご賛同いただいた会員の入会を進めた結果、本日現在、当法人の会員数は正会員146名、特別会員1名の計147名となり、旧・民事法情報センターの解散時の会員数とほぼ同数に達しております。
なお、当法人の会員資格は広く趣旨に賛同していただける法務省・法務局OB等といたしておりますが、今回具体的に入会案内をお送りしたのは、事務的な制約もあり、旧・民事法情報センター解散時の会員、その他口づてで入会希望が予想される方といたしましたので、今後の勧誘の仕方や事業の拡大によっては、なお会員の増加も見込めるものと考えております。
ところで、現在のところ、当法人の運営は、すべて8名の役員のボランティアで行っており、当面、法人の事務処理のための独立の事務所を借りたり、事務職員を採用する予定もありませんので、活動には自ずから制約がございますが、これまでの活動状況は、お手元にお配りした会員総会資料4に記載したとおりですので、ご参照ください。
本日は、会員総会に理事の上限枠を変更する定款変更をお諮りしておりますが、今後とも会員の皆様から広くご意見をいただいて、法人の運営や事業・組織に反映してまいりたいと考えておりますので、引き続き皆様のご支援・ご協力のほどをよろしくお願いいたします。
【会員総会資料3】
第1号議案 定款の一部変更の件
(法人提案)
定款第20条(役員)の第1号を「理事 3名以上12名以内」に変更する。
(理 由)
現行定款第20条第1号は「理事 3名以上10名以内」であり、これに基づき、現在、東京近在の会員の中から6名の理事が選任されているが、今後当法人の活動を充実させていくためには、地方在住の会員からも理事を選任し、その意見を反映させていくことが望ましい。このため、新規に理事として
北海道・東北在住の会員の中から1名
東海北陸地区在住の会員の中から1名
近畿地区在住の会員の中から1名
中国・四国地区在住の会員の中から1名
九州地区在住の会員の中から1名
の計5名の増員を図りたい。
以上のとおり増員するためには、現行の定員上限を1名上回ることになるので、余裕を考慮して定員上限を12名に変更することを提案するものである。
第2号議案 平成25年度事業計画・収支予算書承認の件
(法人提案)
平成25年7月23日開催の臨時理事会で決議された後記「平成25年度事業計画・収支予算書」について総会の承認を求める。
(理 由)
定款第36条により、当法人の事業計画及び収支予算については、毎事業年度開始日の前日までに会長が作成し、理事会の決議を経て会員総会の承認を受けることとなっているが、平成25年度は当法人設立初年度であり、会員規模も予想困難であったため、未作成のままであったところ、会員募集後1か月余を経過し、おおよその会員規模が固まったので、別紙のとおり「平成25年度事業計画・収支予算書」を作成し、上記のとおり理事会の決議を経たので、会員総会の承認を求めるものである。
平成25年度 事業計画・収支予算書(平成25年5月31日から平成26年3月31日まで)
平成25年度事業計画書
本会の目的を達成するために、次のとおり実施する。
Ⅰ 会員相互間の連絡・交流に関する事業
1 ホームページの開設・情報提供
2 臨時総会・懇親会の実施
Ⅱ 民事法に関するセミナーの実施
Ⅲ その他必要事項
平成25年度収支予算書 (単位:円)
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科 目 |
予 算 額 |
備 考 |
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1 事業活動収入 |
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会費収入 |
2,800,000 |
140人×@20,000 |
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寄付金 |
100,000 |
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雑収入 |
300 |
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受取利息収入 |
300 |
0.0003×6/12 |
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事業活動収入計 |
2,900,300 |
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2 事業活動支出 |
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短期借入金返済 |
240,000 |
創立費 144,977 |
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会議費 |
950,000 |
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総会・セミナー会議費 |
700,000 |
100人×@7,000 |
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会場借料 |
200,000 |
5時間×@40,000 |
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理事会会議費 |
50,000 |
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通信運搬費 |
60,360 |
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郵送料 |
50,000 |
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ホームページ・ビルダーサービス料 |
10,360 |
7月×@1,480 |
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印刷製本費 |
100,000 |
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消耗品費 |
100,000 |
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講師謝金 |
50,000 |
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支払い手数料 |
5,000 |
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雑支出 |
5,000 |
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事業活動支出合計 |
1,510,360 |
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事業活動収支差額 |
1,389,940 |
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3 法人住民税 |
70,000 |
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4 予備費 |
100,000 |
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当期収支差額 |
1,219,940 |
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次期繰越金 |
1,219,940 |
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弁護士小池信行講演「成年後見制度の現状と問題点」(レジメ)
1 制度の潜在的利用者
認知症高齢者は平成24年末で約462万人と推定されている(厚労省の調査結果)。知的障害者及び精神障害者は、平成24年版「障害者白書」によると、前者が約58万人、後者が約323万人とされている。
合計で約843万人。
2 制度の利用状況
(1) 法定後見
ア 申立件数
平成22年 3万件、平成23年 3万1500件、平成24年 3万4700件
イ 後見等開始の審判の総数
平成12年4月~平成24年12月末 36万件
ウ 現時点の利用者数
平成24年12月末現在で約16万4000人
(内訳 後見13万6000人、保佐2万人、補助7500人)
(2) 任意後見
ア 後見監督人選任申立件数
平成22年 602件、平成23年 645件、平成24年 685件
イ 現時点の利用者数
平成24年12月末現在で1868人
3 申立て
(1) 本人・家族による申立て
平成24年で全体の85%
(2) 市町村長申立(老人福祉法、知的障害者福祉法、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律による申立)
平成22年 3108件(10.3%)、平成23年 3680件(11.7%)、
平成24年 4543件(13.2%)
(3) 申立の動機(平成24年「成年後見事件の概況」(複数回答)による)
預貯金等の管理・解約 42%、 不動産の処分 10%、 相続手続 9.1%
保険金の受領 4.1%
介護保険契約 17.4%、 身上監護 12.4%
(4) 申立取下権の濫用の防止(家事事件手続法)
4 後見人の選任
(1)後見人に選任されている者
ア 親族後見人の割合
平成22年 58.6%、 平成23年 55.6%、 平成24年 48.5%
イ 専門職後見人(平成24年)
弁護士 14%、 司法書士 20%、 社会福祉士 10%
ウ 市民後見人(平成24年)
社会福祉協議会402件、その他法人877件、市民後見人131件
(2)家庭裁判所における選任の実態
ア 考慮要素
本人の心身の状態並びに生活及び財産の状況、成年後見人となる者の職業及び経歴並びに利害関係の有無(法人が候補者であるときは、その法人の事業の種類及び内容、並びにその代表者と本人との利害関係の有無)、本人の意見その他一切の事情を考慮しなければならない。
イ 利害関係の有無
・ 共同相続人
・ 本人に対して債権を有すると主張している者
・ 申立人代理人である弁護士等
ウ 親族後見人か第三者後見人か
エ 自然人後見か法人後見か
5 後見人の職務の実態(「東大PTの調査」(複数回答)による)
(1) 職務の種別・割合
ア 財産管理
預貯金の口座の管理・出入金 96%、定期的な料金の支払 94%、各種商品・サービス等の購入契約 43%、不動産の売買 21%、本人の土地・居宅の管理20%、保険金の受領 17%、金銭の貸借・返済 17%、不動産の賃貸借 17%、高額の金融取引 9%、証券・国債等の取引 8%
イ 身上監護
介護サービス契約・解約 59%、施設や関係者との協議・要望等 54%、医療契約 49%、入退院の契約・手続 36%、介護施設の入退所 40%、医療同意 18%、通院の付添い 11%、服薬管理 4%
(2) 身上監護が中心という認識の浸透
―財産管理中心から身上監護中心への認識転換の背景事情―
ア 人権思想の変化
イ 身上配慮義務の法定
ウ 介護保険制度と同時スタート
エ 実務感覚
6 後見人による不正事件
(1) 最高裁が公表したところによると、平成22年6月から平成24年12月末までの2年半の間に、全国の家庭裁判所が把握した後見人による不正事件の件数は1058件、被害総額約94億4000万円。
(2) 親族後見人による不正に対する親族相盗例の適用
(3) 後見支援信託の採用 平成24年に98件、資産平均約4300万円
7 後見監督上問題とされる後見人の行為
ア 本人の親族又は第三者への贈与
イ 本人の親族に対する金銭の貸付け
ウ 本人の財産から家族の生活費・教育費への支出
エ 家族の立替金の支払
オ 施設への寄付・謝礼・冠婚葬祭
カ 家族と同居する建物の改築・増築
キ 投機取引
ク 本人を契約者・後見人を受取人とする生命保険契約の締結
ケ 墓地・墓石の購入
8 本人の財産及び収入の状況(東大PTの調査による)
(1) 財産の状況
ア 後見開始時において本人が保有している資産の平均額
・ 金融資産(預貯金、現金、株式、債券、保険金等) 約2100万円
・ 不動産 約900万円
イ 後見開始5年後における資産の状況
・ 金融資産 約2300万円
・ 不動産 約430万円
(2) 収入・支出の状況
ア 現況
ⅰ 収入 約306万円(年間)
(内訳)
年金(恩給、福祉給付金、医療・介護還付金などを含む) 約150万円
資産収入(賃料、利子、配当など) 約50万円
特別収入(不動産の売却、保険金、相続など) 約90万円
ⅱ 支出 約307万円
(内訳)
介護費(居宅介護費用、施設費) 約150万円
生活費 約40万円
諸雑費 約60万円
イ 開始時からの収入・支出の推移
後見開始時の本人の平均収入は年間約190万円、平均支出は約210万円で20万円の赤字。
後見開始後、家庭裁判所への第1回目報告から第2回目報告までの間に、上記の収入及び支出は大幅に増加する(収入約300%増、支出約200%増)。 その結果として、収支は赤字から黒字に大幅に改善される。これは、後見開 始後、本人の施設入所が多くなり、その費用を捻出するために不動産を売却するからである。第2回目報告以降は、収入・支出ともに急速に下落し(収入約70%減、支出約40%減)、結果として、収支がほぼトントンとなる。
9 医療同意の問題
ア 現場は困っている。
イ 本人以外は同意権がないというドグマを打ち破れないか。
10 後見人の報酬
(1) 実態(東大PTの調査による)
ア 後見報酬を受けている者が80%、受けていない者が10%(他は答えナシ)。
イ 第三者後見人の99%が受けている。親族後見人で受けている者は約30%。約70%が受けていないが、このうち約20%は後見人が報酬を受け得ることを知らなかった(うち、40%は知っていたとしても請求しなかったと回答)。
ウ 報酬の額は月2~5万円が全体の60%(平均3万4000円)。最低額は2000円で、最高額は35万円。報酬の額と本人の資産の額との間には明らかな相関関係がある。
(2) 市民後見人の報酬をどう考えるか。
ア 一部の自治体・社協などの方針
イ 一部の家庭裁判所の運用
ウ 一部の専門職の動き(自治体による後見人報酬の助成対策に関して)
11 死後の事務
本人の遺体の引取り、葬儀、供養、墓地・墓石の購入などを誰がするのか。
(1) 相続人がいる場合
基本的には相続人の義務。ただし、人は自己の死亡により親族に負担を掛けないよう慮るのが通常だから、後見人もすることができる。その法的根拠は事務管理と解するほかなく、したがって、掛かった費用は立替金となる(成年後見人の義務とはいえないから、委任終了時の緊急処分義務と解することは無理がある。)。相続人に請求するまでもなく、本人の遺産から支弁を受け得ると解すべき。
(2) 相続人がいない場合
後見人が遺体を引き取り、常識的な範囲内で、葬儀、永大供養の依頼をし、墓地・墓石を購入することは認められてよい。法的根拠は(1)と同じ。
なお、本人の生存中に以上のような事項の準備をし、又は契約をしておくことも可能(もっとも、本人の死後においても契約の効力が失われない旨特約しておく必要がある。)。
12 市民後見人の役割の増大
(1)身上監護を誰が担い得るか。
背景事情は、親族後見の後退
ア 頻度の高い「見守り」
イ 本人とのコミュニケーション
ウ 地域の後見資源の活用―「地域後見」の展開
(2)市町村による市民後見人の養成と支援
平成23年老人福祉法等の一部改正により、市町村が、市民後見人としての適任者を養成し、家庭裁判所に推薦し、選任を得た場合にはこれを支援するよう努める義務がある旨の法改正がされた(平成24年4月1日から施行)。
今後は、市町村が市民後見人の養成講座を開催し、後見実施機関がこれを支援していくことになろう。現在、全国でモデル事業を実施している。
13 今後の成年後見の担い手
ア 親族後見人
依然として重要な一角を担う。支援体制を整備する必要がある。家庭裁判所の監督には限界がある。
イ 専門職後見人
専門的な知識・経験を必要とする事案を担当。市民後見人・親族後見人の支援も。
ウ 市民後見人
これが主役になろう。市町村及び民間の支援体制を充実させて、市民後見人の職務の質の向上を図っていく必要がある。
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