平成26年6月28日開催された定時会員総会及びセミナーの結果は次のとおりです。
定時会員総会議事録
平成26年6月28日午後1時30分より、東京都千代田区一ツ橋一丁目2番1号住友商事竹橋ビル11階TKPガーデンシティ竹橋において一般社団法人民事法情報研究会の定時会員総会を開催した。
議決権のある当法人会員総数153名
総会員の議決権の数153個
出席正会員数(委任状による者86名を含む)150名
この議決権の総数150個
出席理事 野口 尚彦(議長兼議事録作成者)
同 樋口 忠美
同 小畑 和裕
同 小林 健二
同 佐々木 暁
同 小口 哲男
出席監事 坂巻 豊
同 藤原 勇喜
定刻に至り、司会進行役小林理事が以上のとおり総会員の議決権の過半数に相当する会員の出席があり、本会は適法に成立したので開会する旨を宣した。
会議に先立ち、6月13日に死去された香川保一元最高裁判所判事・元法務省民事局長のご冥福を祈って一同黙祷を捧げた。
野口会長より挨拶があり、次いで定款第15条により会長が議長となって審議に入った。
第1号議案 平成25年度事業報告、決算及び監査報告承認の件
議長は、当期(平成25年5月31日から平成26年3月31日まで)における事業状況を事業報告及び附属明細書により説明報告し、次の書類を提出して、その承認を求めたところ、満場異議なく、これを承認可決した。
1 貸借対照表
2 正味財産増減計算書
3 貸借対照表及び正味財産増減計算書の附属明細書
4 監査報告書
第2号議案 平成26年度事業計画・収支予算書承認の件
議長は、平成26年度事業計画・収支予算書について概要を説明し、出席会員から特段の質問は出なかった。 次いで、議長はその賛否を議場に諮ったところ、満場異議なく、これを承認した。
第3号議案 増員理事5名の選任の件
議長は、平成25年12月7日開催の臨時会員総会で新たに各地域担当の理事5名の増員方針が承認されたので、その選任の必要があること、及びその任期については、すでに選任されている役員の任期に合わせるため、平成26事業年度に関する定時会員総会の終結の時までとしたい旨を述べ、理事会の推薦する5名を次のとおり選任してはどうか諮ったところ、満場異議なくこれに賛成したので、可決確定した。なお、議長から、選任された各理事はあらかじめ就任を承諾している旨及びいずれも現職公証人のため法務大臣から兼職の許可を得ている旨報告された。
理事(北海道・東北地区担当) 本間 透
理事(東海北陸地区担当) 横山 緑
理事(近畿地区担当) 井内 省吾
理事(中国・四国地区担当) 由良 卓郎
理事(九州地区担当) 冨永 環
次いで、議長から、この際、ほかに質疑、意見等がないか発言を求めたところ、本間会員より、明年度以降の定時会員総会の開催日について、6月の第4土曜日は、同日実施される例となっている札幌のOB会と重なるため、第3土曜日にできないかとの意見があり、若干の質疑応答がなされ、第3土曜日に開催する方向で理事会において検討することとされた。 以上をもって本会員総会における全議案の審議を終了したので、議長は午後2時20分閉会を宣した。
会長挨拶
会員の皆様には、お忙しい中、当一般社団法人民事法情報研究会の定時会員総会及びセミナーにご参集いただき、ありがとうございました。 昨年5月31日成立した当法人も1年を経過し、この度第1回の定時会員総会を開催する運びとなりました。法人の運営を一から手掛けるのは役員一同初めてでしたので、これまでは何をするのも、インターネットに公開された他法人のものを参考に、法令・定款と照らし合わせながら進めましたが、ひととおりの手続を終えて、ようやくなすべきことがわかってきたような気がしております。
また、当法人の活動については、平成22年5月に解散した旧、社団法人民事法情報センターが果たしてきた全国的な法務省・法務局OBの連絡・交流の場をつくることに主眼をおいてまいりましたが、この度5名の増員理事が選任されることになり、この体制の強化を生かして、徐々に会員の皆様の有用な知識・経験を活用した事業を実施することを検討していきたいと考えております。引き続き皆様のご支援・ご協力のほどをよろしくお願いいたします。
なお、現在の会員総数は154名で、内正会員は153名となっております。新規の入会案内は、新たな局部長等の退職者で住所を把握できた方にお送りいたしておりますが、皆様の周りに当法人の活動にご賛同いただける法務局OBで未加入の方がおられましたら、ご紹介いただければ入会案内をお送りいたしますので、併せてよろしくお願いいたします。
平成26年6月28日民事法情報研究会セミナー・レジュメ
会社法は、こう変わる―― 改正会社法の概要――
講 師
一般社団法人商業登記倶楽部代表理事・主宰者
公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート理事
桐蔭横浜大学法学部客員教授(会社法担当)
神﨑 満治郎
Ⅰ 平成26年会社法改正の経緯と今後のスケジュール
1 平成22年2月24日、法制審議会に対する法務大臣の以下の諮問 「会社法制について、会社が社会的、経済的に重要な役割を果たしていることに照らして会社を取り巻く幅広い利害関係者からの一層の信頼を確保する観点から、企業統治のあり方や親子会社に関する規律等を見直す必要があると思われるので、その要綱を示されたい。」
2 平成23年12月7日、法制審議会会社法制部会「会社法制の見直しに関する中間試案」取りまとめ、公表
3 平成24年8月1日、法制審議会会社法制部会「会社法制の見直しに関す要綱案」決定
4 平成24年9月7日、法制審議会総会「会社法制の見直しに関す要綱」採択、法務大臣へ答申
(要綱の内容)
第一部 企業統治のあり方
第一 取締役会の監督機能
第二 監査役の監査機能
第三 資金調達の場面における企業統治のあり方
第二部 親子会社に関する規律
第一 親会社株主の保護
第二 子会社少数株主の保護
第三 キャッシュ・アウト
第四 組織再編における株式買取請求等
第五 組織再編等の差止請求
第六 会社分割等における債権者の保護
第三部 その他
第一 金融商品取引法上の規制に違反した者による議決権行使の差止請求
第二 株主名簿等の閲覧等の請求の拒絶理由
第三 その他
5 平成25年11月29日、「会社法の一部を改正する法律案」及び「会社法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案」閣議決定、国会提出、通常国会での継続審議となり26年4月25日衆議院を通過、平成26年6月20日成立
6 施行期日 公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日(平成27年5月1日?)
Ⅱ 改正会社法の概要
1 企業統治のあり方に関する改正(要綱第一部関係)
(1) 取締役会の監督機能
① 社外取締役および社外監査役の要件
イ 社外取締役・社外監査役の要件における親会社等の関係者等の取扱い
2条15号ハ・ニ・ホ、16号ハ・ニ・ホ
ロ 社外取締役・社外監査役の要件に係る対象期間の限定
2条15号イ・ロ、16号イ・ロ
② 社外取締役を置いていない場合の理由の開示
監査役会設置会社(公開会社かつ大会社に限る)であって金融商品取引法24条1項の規定によりその発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならない会社が社外取締役を置いていない場合には、取締役は、定時株主総会において、社外取締役を置くことが相当でない理由を説明しなければならない(327の2)。
③ 監査等委員会設置会社制度の創設
イ 意義・・・監査等委員会を置く株式会社(2⑪の2)
ロ 要件・・・定款に定め(326Ⅱ)、取締役会及び会計監査人を置き、監査役を置いてはならない(327Ⅰ③・Ⅳ・Ⅴ、328Ⅰ)。監査等委員は、取締役でなければならず、監査等委員である取締役とそれ以外の取締役は区別して選任し(329Ⅱ・Ⅲ、399の2Ⅱ)、監査等委員である取締役の兼任は禁止(331Ⅲ、400Ⅳ)。
ハ 権限・・・委員会設置会社(名称を「指名委員会等設置会社」に変更。ただし、その旨の定款の変更、登記は不要(附則3))の監査委員会及び各監査委員と同様の権限を有する(399の2Ⅲ、399の3~399の7)ほか、監査等委員会が選定する監査等委員は、株主総会において、監査等委員である取締役以外の取締役の選解任等及び報酬等について、監査等委員会の意見を述べることができる(342の2Ⅳ、361Ⅵ、399の2Ⅲ③)。会計監査人の解任権がある(340Ⅴ)。なお、423Ⅲ・Ⅳ、399の13Ⅳ・Ⅴ・Ⅵ参照。
ニ 員数・・・監査等委員は3人以上、その過半数は、社外取締役でなければならない(331Ⅵ、400Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ)
ホ 任期・・・監査等委員である取締役は2年、監査等委員でない取締役は1年(332Ⅲ・Ⅳ)
ヘ 監査等委員会設置会社の登記 登記事項・・・911Ⅲ22号 添付書類・・・商登法46,47,54,107Ⅰ③
④ 取締役および監査役の責任の一部免除
イ 社外取締役叉は社外監査役でないものであっても、責任限定契約を締結することができることとされた(427Ⅰ)。
ロ 整備法施行の際現に旧会社法911条3項25号又は26号の規定による登記がある場合は、当該株式会社は、当該登記に係る取締役又は監査役の任期中に限り、当該登記の抹消をすることを要しない(附則22Ⅱ)。
ハ 定款の変更が必要
(2) 監査役の監査機能
監査役による会計監査人の選解任等に関する議案の内容の決定(344)
(3) 資金調達の場面における企業統治のあり方
① 支配株主の異動を伴う募集株式の発行等
イ 公開会社における募集株式の割当て等の特則(206の2Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ、商登法56⑤)
ロ 公開会社における募集新株予約権の割当て等の特則(244の2、商登法56③)
② 仮装払込みによる募集株式の発行等(52の2、102の2、103、209、213の2、213の3、282Ⅱ・Ⅲ、286の2、286の3)
③ 新株予約権無償割当てに関する割当て通知(279Ⅱ・Ⅲ)
2 親子会社の規律に関する改正(要綱第二部関係)
(1) 親会社株主の保護
① 多重代表訴訟(847の3)
② 企業集団の業務の適正を確保するために必要な体制の整備(348Ⅲ④、362Ⅳ⑥、416Ⅰ①ホ)
会社法施行規則112条2項5号の条文をを会社法に規定する。
③ 株式会社が株式交換等をした場合における株主代表訴訟(847の2Ⅰ)
④ 親会社による子会社の株式等の譲渡(467Ⅰ②の2)
⑤ 利益相反取引に関する開示
会社法施行規則の改正
(2) キャッシュ・アウト
① 特別支配株主の株式等売渡請求
イ 株式等売渡請求の内容(179)
ロ 株式等売渡請求の方法(179の2~179の10、846~846の9)
② 全部取得条項付種類株式の取得(171の2、171の3、172、1732)
③ 株式の併合により端株となる株式の買取請求(182の2~182の6、464Ⅰ)
④ 株主総会等の決議の取消しの訴えの原告適格(831Ⅰ)
(3) 組織再編における株式買取請求等
① 株式買取請求に係る株式等の買取りの効力が生ずる時等(116Ⅵ・Ⅸ、117Ⅵ、470Ⅵ、786Ⅵ等)
② 株式買取請求に係る株式等に係る価格決定前の支払制度(117Ⅴ、172Ⅴ、179の8Ⅲ、182の5Ⅴ、470Ⅴ、786Ⅴ、119Ⅴ、179の 8Ⅲ、788Ⅴ)
③ 簡易組織再編、略式組織再編等における株式買取請求 存続株式会社等において簡易組織再編の要件を満たす場合及び譲受会社において簡易事業譲渡において簡易事業譲渡の要件を満たす場合には、反対株主は、株式買取請求を有しない(469Ⅰ②、797Ⅰただし書)。また、略式組織再編又は略式事業譲渡の要件を満たす場合には、特別支配会社は、株式買取請求を有しない(469Ⅱ②・Ⅲ、785Ⅱ②・Ⅲ、797Ⅱ②・Ⅲ)。
(4) 組織再編等の差止請求
171の3,182の3、784の2、785Ⅰ~Ⅲ、796の2、797Ⅰ~Ⅳ、805の2
(5) 会社分割等における債権者の保護
① 詐害的な会社分割等における債権者の保護(759Ⅳ~Ⅶ、764Ⅳ~Ⅶ、23の2)
② 分割会社に知れていない債権者の保護(759Ⅱ・Ⅲ、764Ⅱ・Ⅲ)
3 その他(要綱第三部関係)
(1) 株主名簿等の閲覧等の請求の拒絶理由
125Ⅲ③、252Ⅲ③の削除
(2) その他
① 募集株式が譲渡制限株式である場合等の総数引受契約
募集株式が譲渡制限株式であるときは、総数引受契約であっても、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)による承認が必要(205Ⅱ)。
募集新株予約権の目的である株式の全部叉は一部が譲渡制限株式であるとき、又は募集新株予約権が譲渡制限新株予約権であるときも同様である(244Ⅲ)。 以上、登記の添付書面に注意。
② 監査役の監査の範囲に関する登記
イ 監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めが登記事項とされた(911Ⅲ17号)。
ロ 整備法施行の際現に監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社は、この法律の施行後最初に監査役が就任し、又は退任するまでの間は、この登記を申請する必要がない(附則22Ⅰ)。
③ いわゆる人的分割における準備金の計上
イ 人的吸収分割において、445Ⅳの準備金を計上する必要はない(792)。
ロ 人的新設分割において、445Ⅳの準備金を計上する必要はない(812)。
④ 発行可能株式総数に関する規律 イ 公開会社でない会社が定款を変更して公開会社となる場合は、発行可能株式総数に関する4倍規制が及ぶ(113Ⅲ②)
ロ 公開会社が株式を併合する場合には、効力発生日の発行可能株式総数について、4倍規制が及ぶ(180Ⅲ)。
ハ 新設合併設立会社、新設分割設立会社、株式移転設立完全親会社についても4倍規制が及ぶ(814Ⅰ)。
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